Column

東京大学野球部主将・笠原健吾さん(湘南高校出身)が考える「勉強を行う意味」と「文武両道の秘訣」

2020.08.17

 8月から行われた東京六大学野球春季リーグで、3割超えの打撃成績を残すなど活躍を続ける東大のキャプテン・笠原健吾さん。高校時代は、偏差値74といわれる神奈川の湘南高校野球部でプレーし、最後の神奈川大会は5回戦まで勝ち進んだ。高校時代は100盗塁を記録するなど、走攻守においてチームに貢献。

 最後は桐光学園に3対10で敗れたが、湘南の1番打者として、その存在を知らしめた。
 高校時代は、まさに「文武両道」。野球も勉強もどちらも本気で取り組んできた笠原さんに、今回は湘南高時代の勉強法をお伺いしました。

中長期的な計画に固執するより柔軟に対応することが重要

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笠原健吾(湘南高校出身-東京大学野球部4年生)

Q.笠原さんは、勉強するということが、野球の上達にも結びついたと感じることは、これまでにありましたか?

笠原健吾さん(以下、笠原) 練習をしたからといってすぐに結果が出るわけではない野球と違って、努力が結果に直結する勉強に取り組んだことにより、結果につながる努力の仕方を体得できたと思います。

 私は勉強を通して、基礎の愚直な反復が結果につながるということを学びました。このことから、野球の練習でも一見地味な基礎練習の反復に注力するようになりました。基礎練習というのは大抵の選手にとっては地味でつまらないものであると思います。

 私自身もかつては基礎練習を嫌い、自主練習の時間には漠然とノックを受けたり、フリーバッティングをしたりしていました。ただ、勉強を通して基礎の反復なしに結果を出すことはできないということを実感し、基礎練習に時間を割くようになりました。その結果、中学や高校時代よりも実力をつけることができ、大学野球部で試合に出るようになりました。

Q「計画を立てる」という点でも勉強と野球でプラスになったことはありますか?

笠原 私はいつまでに何を終わらせる、何ができるようになるというような計画は立てませんでした。野球と勉強を両立させるために時間が限られている中で計画を立てる時間がなかったというのもありますが、日々課題が変化していく中で中長期的な計画を立てるのが困難だったからというのが主な理由です。

 勉強にしても、野球にしても、やってみないと見えてこない課題が多いです。それにも関わらず、取り組む前から計画を立ててもおそらく軌道修正が求められることになるでしょう。

 そのときに見えていたものだけで立てた中長期的な計画に固執するよりも、日々変化する課題に対して柔軟に対応することが重要だと思います。中長期的な計画を立てない代わりに、1日の中でやることは明確にするようにしていました。

 「この教科を何時間勉強する」「この練習とこの練習を合計何時間やる」というような計画を朝に立てていました。毎日計画を立てることで、課題に柔軟に対応することが可能になり、漠然と1日を過ごすことがなくなりました。

Q 野球でも「振り返る」力は大事だと思いますが、勉強でも大事だと思いますか?

笠原 勉強にしても野球にしても共通していたのは、なぜうまくいかなかったのかを分析し、同じ過ちを繰り返さないようにするということでした。勉強に関しては、問題を解きっぱなしにするのではなく、間違えた問題を自力で解けるようになるまで解き直したり、間違えた問題に関する知識をノートにまとめたりしていました。

 野球に関しては、試合後に打席のビデオを見返すことで、どういう意識で打席に入るべきだったのか、どの球を打つべきだったのか、どの球種に絞るべきだったのかというようなことを振り返り、同じような場面で結果を出せるように準備しています。勉強と野球を両立するということは、勉強と野球のそれぞれにかけられる時間が少なくなるということを意味します。限られた時間の中で成長するためには、失敗からより多くのことを学び、同じ過ちを繰り返さないということが重要だと思います。

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[page_break:理性的に野球をしているのが、勉強ができて野球が上手い選手]

理性的に野球をしているのが、勉強ができて野球が上手い選手

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笠原健吾さん(湘南高校出身-東京大学野球部4年生)

Q 勉強をしている仲間同士だからこそ、野球の練習や試合の場面でも、ここが生きたなと思うチームプレーやサインプレーはあると感じますか?

笠原 論理的に考えて練習計画を立てるのは勉強している仲間だからこそできることだと思います。勉強をすることで論理的な思考力を養い、それを活かして練習計画を立てています。

 具体的には、リーグ戦で勝つためにはこのくらいの数字を出す必要がある、そのためにはこのレベルのプレイができるようになる必要がある、そのためにはこのような技術を身につける必要がある、そのためにはこのような練習をする必要がある、というように、目標から逆算して論理的にステップを設定することができるというのは、勉強している仲間同士だからこそ可能なことだと思います。

 また、分析にも勉強は活きていると思います。映像を見て、相手のクセなどの仮説を立て、その検証を行い、試行錯誤を繰り返す中でクセを見破るというのは、まさに仮説の設定と検証を繰り返す学問的な姿勢と同じものであり、分析と勉強には似たところがあると思っています。

Q.勉強ができなくても、野球がうまい選手。勉強ができて、野球がうまい選手。両者の差はなんだと思いますか?

笠原 本能的に野球をしているのが、勉強ができなくても野球が上手い選手。理性的に野球をしているのが、勉強ができて野球が上手い選手だと思います。

 前者については、様々なケースにおける動きを、時間をかけてひたすら反復することで体に染み込ませています。複雑な状況判断を求められる場面でも、考えるより先に今まで反復してきた動きを体がしているのだと思います。いわゆる「野球脳がいい」「野球偏差値が高い」というのはこういうことだと考えています。

 実際、考える時間なしに動くことができる方が状況判断は早くなりますし、考える必要がないということは目の前のプレーに集中できるということを意味します。野球一筋で取り組んできたチームが強いのは、このようなところだと思います。

 後者については、複雑な状況判断を求められる場面において、あらゆる可能性を想定し、状況判断を行います。理性的であることにより、反復の回数が少なくとも、適切な動きができるようになります。文武両道を掲げているチームほど、理性的に野球をしていると言うことができると思います。

Q.とてもタメになるお話をありがとうございました。笠原選手の憧れの選手はどんな選手ですか?

笠原 西武や巨人で活躍された、片岡治大さんです。野球を始めたばかりの頃、打順もポジションも同じだった片岡選手の積極的な走塁に憧れを抱き、以来ずっと目標にしてきました。

 笠原さん、ありがとうございました。現在は、東大のキャプテンも務め、チームをけん引するリードオフマンとして活躍中です!
 そんな笠原さんなど、東京六大学の部員たちが、講師を務める小学生・中学生・高校生の球児たちに向けたオンライン学習スクール「Baseball Study」も注目です!

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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