世代屈指のドクターK・木村大成(北海)につきつけられた夏への課題
木村 大成(北海)
昨秋は公式戦52回3分の2を投げて防御率0.34、奪三振72。さらに公式戦は39回3分の2連続無失点と圧巻ともいえる成績を残して甲子園に乗り込んできた北海のエース・木村 大成。選抜注目左腕として初戦・神戸国際大附との一戦に挑んだが、結果は2対3でサヨナラ負けという内容に終わった。
セットポジションから少しひねりを加えながら始動していき、若干上体が高いところからスリークォーター気味の腕の高さで振り抜いていく。最速145キロを計測した勢いのある真っすぐに、曲がりの大きい切れ味抜群のスライダーを軸に初回から3つの三振をマークするなど、上々の立ち上がりだった。
マウンドに上がっていた木村は「入った瞬間は甲子園の雰囲気に圧倒されましたが、投げている時は楽しみながら気持ちを高めて投げることが出来た」と独特な雰囲気を味方につけながら左腕を振り続けていた。
序盤は自分のピッチングが出来ていたと木村も振り返るが、後半に入るにつれて徐々に変わってきた。
「前半までは思った通りにスライダーを投げられていましたが、次第にいつも通り投げられませんでした。原因はわからなかったですが、それで配球はストレートが中心になってしまいましたが、ストレートでも変化球も当てられてしまったので、全国ではまだ実力不足だったと思います」
疲れ自体もなく、練習試合を通じても120球ほど投げ込んでくるなど準備はできていたという木村。ただ、「夏や秋はあまり観客がいませんでしたが、今回は観客が少し入って大舞台でプレーすることになって平常心を保てませんでした」と周りの空気に少しずついつも通りを発揮できなかったことが、木村の歯車を狂わせてきた。
また神戸国際大附の西川 侑志主将に試合後に話を聞いても、木村にプレッシャーをかけ続けてきたことが大きかったことが見えてきた。
「木村投手は1人で投げきっていたので、イニングが進むにつれてタイミングを合わせられたのが大きかったと思います。あとは青木監督からも『点差が詰まっているから思い切って振るように』と話をされていて、打席の中で思い切れたことが木村投手の疲れに乗れたかなと思います」
毎年強打のチームを作るのが神戸国際大附だが、以前の取材でバッティングについて話を聞くと青木監督は「どんな事情、どんなボールでもしっかりとタイミングをとって、きちんとスイングをすることです。自分のスイングで常に仕掛けていくことが大事なんです」とコメントしていた。
自分たちのスイングを貫き、打てない原因を考えてフルスイングの確立を高めることが、神戸国際大附の強打の神髄だが、それを実行するために新チームから思い切ることの大切さを常に伝えてきた。それを甲子園でも貫かれたことが、木村はリズムを崩す結果に繋がってしまった。
リズムを崩された木村だったが、「真っすぐで押せる場面もあったので、スライダーを磨けば全国でも自分のピッチングは通じると感じました」と手ごたえを感じることも出来た。また指揮官の平川監督も「失投らしい失投はなくて、力を発揮できていた」とエースのピッチングを評価した。
「先頭バッターへの入り方。ピンチの場面でのピッチングは課題になったので、今後の練習試合やブルペンできっちりと想定して投げ込んで、夏もう1度戻ってこられるようにしたい」と意気込みを残した木村。再び甲子園に戻ってきたときは、1試合通じて安定したピッチングをする成長した姿を見せてくれることを楽しみにしたい。
(文=田中 裕毅)