創部100年目という節目の年で、21世紀枠として初出場を果たした三島南。関係者の間では二度奇跡が起きたと呼ばれている。

 静岡を破って県4位。さらに野球普及活動の一環としてグラウンドを開放して、小学生、保育園児を対象とした野球体験会を開催し、地域貢献を実現した様々な取り組みが評価され、21世紀枠推薦校に選出された。しかし稲木監督曰く「ほかの東海地区の学校さんが素晴らしいと思いましたので、東海地区の推薦は厳しいと思っていました」と選出の可能性は低いととらえていた。

 それでも東海地区推薦に選出された。しかし、地区大会に出場していない三島南は依然として厳しい立場だった。

 しかし風向きが変わったのは1月に明治神宮大会が中止になったことで神宮枠「1」の代替えは21世紀枠が1枠増えることとなったことだ。このニュースに三島南の関係者の中で、「1番目~3番目はないけれど最後のイスに入るかもしれない」という期待の声が出た。そして選考では4番目で富山中部・水橋との連合チームとの決選投票を制し、見事に夢舞台をかなえたのであった。

 そんな奇跡が起こったのは、県大会準々決勝の静岡戦の試合が大きいだろう。相手は長身右腕・高須などタレント揃いの優勝候補。秋の大会では無観客で、報道関係者は一、三塁側。スカウトはネット裏という形で配置されていたが、その試合は静岡の選手目当てに多くのスカウトが駆けつけていたという。

 この試合で先発したのは130キロ後半の速球を投げ込み、打撃も素晴らしく今年の選抜でも注目選手に上がる 前田 銀治ではなく、最速127キロと軟投派の植松 麟之介だった。三島南は外野陣を深く守らせ、次々とシフト通りに飛球を打たせ、アウト16個がフライ。7回に勝ち越した2点のリードを守りきり1失点完投勝利を収めた。

 最終的には4位に終わったが、全国レベルの静岡に勝利した自信と戦略がこのチームの売りだ。

 注目選手は投打の柱である前田。好調時は140キロ前後の速球を投げ込むが、昨秋の県大会では加藤学園、常葉大菊川戦で計7.1回を投げて9失点と強豪校相手に抑える投球術の習得が課題となった。打者としても4試合で打率.333をマークし、頼みの強打者である。また、静岡戦で好投を見せた植松も投球術のうまさを発揮できるか。

 前田以外では打率.286を残したセンターの斎藤 崇晃は静岡戦で勝ち越し打を記録した期待の好打者だ。しかしチーム打率.238、チーム防御率4.64と全体的に数字は悪い。全国で戦うにはより投打のレベルアップが必要だろう。

 初めて戦う全国の舞台は、大会後に行われる春季県大会、夏の静岡大会に良い教材となるはずだろう。この選抜であっと言わせる戦いを見せ、「3度目の奇跡」を起こせるか注目だ。

(文=河嶋 宗一

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