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ライト20m?狭い環境でも次々と逸材を生み出す東葉の強さの源

2021.02.25

ライト20m?狭い環境でも次々と逸材を生み出す東葉の強さの源 | 高校野球ドットコム
ライト20m?狭い環境でも次々と逸材を生み出す東葉の強さの源 | 高校野球ドットコム

東葉のスタメン・ベンチ入り情報

 千葉県船橋市飯山満町に校舎を構え、1925年に女子高としてスタートした東葉は、正門の東葉門が登録有形文化財として国から認定されており、校舎内には作法室があるなど施設からも歴史と伝統を感じることが出来る。

 野球部は甲子園への出場実績はないものの、2019年の秋の県大会ではベスト16まで勝ち上がっている。また近年では最速148キロ右腕・清水大翔といった好投手も輩出しているが、戦国千葉のなかでも市立船橋習志野らがいる第2地区に入っており、毎年強豪校としのぎを削りながら上位進出を伺っている実力校だ。

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中川魁

 そんな勢力を拡大しつつある東葉は現在マネージャー含めて33名で活動しているが、そのチームをまとめる主将・中川魁は注目選手の1人だ。4番・捕手と大黒柱を担っているが、自信を持っているのはバッティング。ホームランはまだ1本もないが、自信のあるミート力を活かした繋ぎのバッティングでチームに貢献。現在は長打力を身につけるために、「ボールの下から半分をこするイメージで振っています」と中川は工夫を凝らしている。

 また柳田悠岐選手のスイングの形や、丸佳浩選手のバットの出し方などを参考にしているそうで、春からの地区予選でどういったバッティングを見せてくれるか注目だ。

 そして守備では二塁送球最速1.91秒を計測する強肩を活かして、走者を刺していく。「まだ下半身が弱いので、送球が安定しないです」と今後の課題も感じているようだ。

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福原佑規

 もう1人が185センチの大型ショートを守る福原佑規185センチの大型ショート源田壮亮を参考にしたグラブの出し方。さらに柔らかい手首を活かしたスナップを利かせたスローイングなど安定感抜群の守備が持ち味の福原。

 ただ「筋力が足りない」とパワーが少し物足りないことを実感した福原は、冬場に加圧トレーニングで徹底的に全身強化。おかげで冬場だけでも8、9キロの増量に成功して73キロまで増やした。バッティングでは強く踏み込めるようになったことで、スイングスピードも7キロ上がり、打球の質も向上してきたことを実感している。

 さらに1年生ながら50メートル6.05秒を計測する鈴木太進が光る。「内野安打もかなり取ってくるんで、1年生ですけど中心選手ですね」と山田監督は太鼓判を押す選手もいるなど、力のある選手が今年の東葉は揃っている。



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鈴木太進

■時間と場所が限られているからこそ自分で考える

 ただ東葉は様々な制限がある。週2日の休みで平日は18時に完全下校。土日は半日だけとなっており、時間には制限がある。指導する山田監督は「これから先を考えて個性を伸ばすように心がけています」と選手への接し方をそのように語る。実際に中川主将は「自分はキャッチングが下手なので」ということで、取材時はミットの出し方や低めの捕球を意識した練習に打ち込んでいた。

 ほかにも班分けで練習をしたり、個々人で課題を考えて練習に取り組むことで、それぞれのスキルを伸ばす。それを掛け合わせることで東葉はチーム力を伸ばしている。

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東葉の練習模様

 しかし時間だけではなく、場所にも東葉は制限がある。内野は通常の球場と同じだけの広さを擁するが、レフトから右中間はほとんどなく、ライトは20メートル程度と長方形となっているのが特徴的だ。

 その結果、バッティング練習ができず、やるときは鳥かごと呼ばれるゲージの中で打ち込む。ただそうすると、どうしても打球の飛距離などは正確には掴めない。しかし、鳥かごで囲まれていることでのプラスもある。

 「高さに制限があるからこそ、フライだとすぐにネットにあたるので、自然とライナーをセンター返しするように意識することが出来ます。あとは狭いので、みんなの成長が見えますし、コミュニケーションも取りやすいです」(福原)
 「鳥かごで打球がわからないからこそ、自分でイメージを膨らませることが大事になります。そういった想像力は養われていると思います」(中川)

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副顧問・壺内先生(左)と部長・小洞先生

 また動画内のキャッチボールやボール回しを見ると、限られた環境でも実戦に即して、練習メニューは様々なバリエーションを持つ。これらのメニューは副部長の壺内先生と部長の小洞先生が中心となって考えているそうで、「監督の目指す野球と選手たちのやりたいことのバランスを見ながら組んでいます」と壺内先生はメニュー作成の苦労を語る。

 その中でも大事にしているのが、偏りを無くすことと可能性を狭めないことにあると壺内先生は語る。
 「ポジションによって投球フォームは決まってきますが、色んなことをしておくことで、可能性を広げてあげたいですし、新しい気づきがあると思っています。それが結果として技術向上にもなると考えています」

 東葉では出来るだけ大学でも野球を続けられるように、選手それぞれで考えて個性を伸ばすことを大事にしている。壺内先生、小洞先生もその方針に従って、先を見据えて選手の可能性を広げられるようなメニューを組むようにしている。その結果が、動画内にもあるような豊富な練習メニューの種類に繋がっており、限られた環境でも結果を残せる東葉の強さの源の1つともいえるのだ。

ライト20m?狭い環境でも次々と逸材を生み出す東葉の強さの源 | 高校野球ドットコム
東葉の練習模様

■強さの秘訣は役割を果たすから

 それに加えて役割を自覚していることも、東葉の強さを支えていることを中川主将は感じている。
 「先生からも言われましたが、自分たちの世代は上手い選手ばかりが集まったばかりではないので、束になって戦う必要があります。だから試合の中での役割をきちんと果たすことが大事です」

 東葉は係制度があり、各選手それぞれ役割が普段から持っている。そうしたところからも試合の中で役割を果たす習慣が意識づけられているのだ。

 秋は県大会で我孫子二階堂に敗れ、「自分たちの力のなさを痛感した」と中川主将は振り返る。そして先日の抽選会では初戦で船橋二和と戦うことが決定。そして代表決定戦では習志野と対戦する可能性もある。中川主将は「対戦相手も決まって、より良い雰囲気になってきた」とチームの状態は上がってきていることを語る。

 それと同時に習志野と同じ山に入り、「対戦するかもしれないと思うと、緊張と同時に楽しみもあります」と話す。春の地区予選に向けて、「選手それぞれがしっかりやるべきことをやって、相手投手を攻略したい」と最後に意気込み語った中川。まずは県大会へ、地区予選で東葉がどのような野球を見せるのか注目したい。

(文=田中 裕毅

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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