Column

東京の代替大会はどう開催されるのか?方向性や課題を 東京都高校野球連盟・武井克時理事長に聞く

2020.05.27

3月2日から続く休校。開催のカギとなる、部活動再開の時期

東京の代替大会はどう開催されるのか?方向性や課題を 東京都高校野球連盟・武井克時理事長に聞く | 高校野球ドットコム
武井克時理事長

 新型コロナウイルスの影響で、センバツや春季大会に続き、夏の甲子園大会も中止になった。甲子園大会に代わるものなど、存在しないだろう。それでも、3年生のために何かできないか、という思いは、多くの人が持っているはずだ。そうした中、東京都高校野球連盟の武井克時理事長(専務理事)は、夏の甲子園大会の中止が決まる前から、甲子園大会が開催されても、されなくても、東西東京大会は開催する方針を明らかにしてきた。

 甲子園大会の中止が正式に決まった今、東西東京大会は、どのような形で開催されるのか。大会への思いと課題、方向性などを武井理事長に聞いた。

「今年の3年生は、センバツも春季大会も中止になり、関東大会もありません。そして夏の甲子園も途絶えました。今年に入り、公式戦を一度も経験することなく引退することは、あまりにも忍びない。夏の東西東京大会を準備していたので、それを生かして、できる限りの方向をみつけて、大会にこぎつけたいという思いです」

 武井理事長はまず、全国大会は中止になっても東西東京大会開催の準備をする理由と、その思いを語った。とはいえ、人口が多く、人口密度も高い東京は、新型コロナウイルスの感染者が最も多い。都立高校は3月2日から5月末まで休校の状態になっている。そういう状況下で都内の野球部の活動はどうなっているのだろうか?

「学校または球場では、ほぼ練習ができていない状況だと思います。特に都立高校は休校ということで、部活動は禁止になっています。それに合わせて私学もほとんどの学校が、やっていないのが現状だと思います。
 それに、学校が始まってもすぐに部活動解禁という形にはならないと思います。期末考査を含めて、夏休みがいつになったら始まるのか、この辺のところも未定ですので、学校が通常通り再開されるまでは、日程的なことに関しては、柔軟に調整しないといけないかと考えています」

 現在公表されている予定では、7月11日に開幕となっている。
「現在のところ、集合練習こそできませんが、ほとんどの学校の選手たちは、基礎的な運動はしていると思います。ですから、まったく運動しないまま始めるのとは違うと思います。大阪のスポーツ医学会の先生たちの話では、3週間、ないし2週間くらいで、感覚的なもの、筋肉、関節の機能などは復活できるそうです。また熱中症に対しても、2週間ほどあれば、体は適応していくという意見を頂きましたので、大会の3週間くらい前に練習が再開できれば、可能かと思っています」

 となれば、6月20日ごろに部活動は再開できれば、予定通りの開催が可能になる。しかし、夏休みは大幅に短縮される見込みで、大会開催となると、学校などとの調整も必要になる。

「おそらく8月になっても、半月くらいしか夏休みがないかもしれません。長くても3週間取れるかどうかです。大会参加の承諾は、学校長が最高責任者になっています。この時期しか大会ができないのだという説明を含めたお願いの文章を学校長に出して、ご配慮頂くということになると思います」

 東京では、球場を確保するのが容易ではない。そのため、開催できる時期は、どうしても限られてくる。

[page_break:無観客試合の中でも、スカウトの入場は認める方向]

無観客試合の中でも、スカウトの入場は認める方向

 大会開催に向けて、もう一つ課題になるのが、1年生の存在だ。本来なら、学校生活にも慣れる時期であるが、学校は始まられないことには、1年生の実態もつかめない。

「1年生が大会に参加するのは、非常に難しいと思います。各学校の指導者の方々は1年生に対しても、相当配慮が必要だと思います」
 単独チームでの参加か、連合チームになるかは、1年生の入部状況次第という学校も少なくない。1年生部員が把握できないと、大会の規模もつかめないということになる。

「大会の参加、不参加の届け出を、どの時点で締め切ればいいのか。一応6月15日に締め切りとして発表していますが、もう少し延ばす必要があるかもしれません」

 緊急事態宣言は解除になったが、まだ感染のリスクは続いている。大会を開催するにあたっても、感染予防は非常に重要である。
「プロ野球やJリーグなどの無観客試合の対応のマニュアルなども出ていますので、そうしたものを参考にしながら、消毒液をそろえるなどの準備に入っています。これから暑くなるので、大変です」

 夏なので、熱中症の対策もしなければならない。この2つを両立させるのは、かなり大変である。
「私たちも、そうしたことには素人ですから、いろいろな方のご意見を聞いて、参考にしながら進めていっています。大会を運営にするには、各学校の責任教師をはじめ、部活動の顧問の先生のご協力を頂きながら、生徒の健康管理をしっかりしていく必要があります。体温などを記入した健康調査票といったものも利用して、毎試合ごとに提出してもらうことも考えています」

 大会の相次ぐ中止は、プロ野球などもスカウトにも、頭の痛い問題になっている。この夏の大会は、無観客で行われることになっているが、スカウトの活動はどうなのか?
「子供の進路を考えると、当然見て頂きたいという方向でいます。無観客の定義が、日本高校野球連盟の方から一律としたものが出ていないのですよ。答申が出て、子供たちへの影響が大きい方々については、見て頂く体制はとっていきたいと思っています」

 3年生の選手の家族も、高校野球最後の舞台を見たいはずである。
「学校関係者、家族の方々にどのような形で対応していけばいいのか、詰めていく必要があります」

[page_break:上位校には秋のシード!それに東西東京の頂上対決も検討中]

上位校には秋のシード!それに東西東京の頂上対決も検討中

東京の代替大会はどう開催されるのか?方向性や課題を 東京都高校野球連盟・武井克時理事長に聞く | 高校野球ドットコム
昨秋優勝した国士舘

 武井理事長はかつて、夏の東西東京大会の上位校を秋季大会のシード校にするという計画を明らかにしていた。この代替大会も、秋季大会に連動しているのだろうか?
「もちろん、それは連動しております。それははっきり申し上げたいと思います」

 春季都大会は中止になったので、この代では、秋季都大会しか行われていない。せっかく東西東京大会を開催するのであれば、東西の優勝チームの頂上対決は組めないのだろうか?
「それも視野に入れてあります。まだ決定していませんけど、それも面白いと思います」

 これはあくまで、筆者の個人的な考えであるが、第60回大会から東京と北海道が2校で1府県1校の49代表制が、一部の記念大会を除いて定着しているが、それ以前は、30校とか、23校が全国大会に参加という時代もあった。2か月後にコロナの感染がどのような状況になっているか、誰も分からないが、代替大会の開催が可能な都道府県で、近隣の都道府県との優勝チーム対決を行い、状況が許せばその輪を広げていく。今は、そこまで話を広げるのは無理だとしても、東京なら首都圏の優勝チームとの対戦といったことは、できないだろうか?

「そういうのも、できたらいいですね。でも準備の段階で早急にそれをやるというのは、難しいです。結局移動、宿泊のことも関係してきます。大会が始まって、他県と調整して、ということもあるかもしれません。それができたら、選手たちも喜びますよね」

 まずは現下の厳しい状況の中で、東西東京大会を無事に開催することが、最も重要であることは、言うまでもない。改めて、大会開催の重要課題を聞くと、
「やはり学校の授業との併用と、部活動の再開、それに球場の確保ですね。そうした中でも何とか3年生のためにやってあげたいというのが、役員のスタンスです。感染のリスクもあると思うのですが、できる限りの準備をしてやってあげたいと思います」

 開催の難しさは、例年とは比較にならない。もちろん、こうした時期の大会開催には、賛否両論あるだろう。それでも、3年生のために舞台を用意したいという東京都高校野球連盟の方針を支持したい。

 夏の大会が終われば、すぐに秋季大会になる。
「9月に入るとすぐに秋の大会ですから。秋の大会は授業の関係では、休日を利用していますので、日程的な余裕はあります。それでも、コロナ対策はきちっとやらないといけません」

 本来なら今年の夏は、東京オリンピックが開催される予定であった。メインスタジアムである国立競技場に隣接した神宮球場は、ほとんど使用できないとあって、準決勝、決勝戦の使用球場として、東京ドームを押さえていた。しかし、東京オリンピックは来年に延期。神宮球場が使えるようになり、東京ドームはキャンセルした。来年のオリンピック開催も楽観できないという見方があるが、開催されることを前提に、準備をする必要がある。
「東京ドーム、読売新聞と打ち合わせをさせて頂いて、来年も今年に準じた形で、既にお願いはしてあります」

高校球児、高校野球ファンへのメッセージ

 最後に、高校球児と高校野球ファンにメッセージをもらった。
「高校球児の方々は、おそらく中止が決定されるまで、そして中止が決定しても頑張って野球に打ち込んでいると思います。そういう選手たちが、3年間培ってきたものを発表できる場を作って行きたいと思っていますので、それに合わせられるように、手を抜かず、みんなで最後の大会に臨んでもらいたいと思います。

 また高校野球ファンの方々には、致し方無い状況の中で、球場にお越し頂けなく、残念な大会になってしまうかもしれませんが、是非周りから温かい目で、見守って応援して頂きたいです。またテレビの放映もなるべくやって頂けるように話をしておりますので、それでご勘弁いただきたいということになります」

 この夏の東西東京大会は、甲子園にはつながっていない。それでも3年間野球に取り組んできた球児たちの思いと、その思いを形にしたいという関係者の尽力によって開催される今度の大会は、今までのどの大会よりも、意味のあるものになるに違いない。休校が続き、学校の環境も変わり、感染リスクが続く中での開催は、乗り越えていくべき困難も多いかもしれない。だからこそ、大会の成功を切に願っている。

(取材=大島 裕史

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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