目次

[1]高校野球における「石川モデル」のはじまり
[2]9回2アウトからの大逆転へ

高校野球における「石川モデル」のはじまり



金沢桜丘の選手たち

 「この状況、9回2アウトだと、思ってやってます」
 5月20日、夏の甲子園大会・地方大会の中止の発表をうけて、各都道府県高野連に判断を託された地方大会に代わる独自大会の開催可否。

 今、この独自大会の「開催」に向けて思案し、動いているのは、各都道府県の高野連だけではない。3年間、球児たちとグラウンドで汗水流してきた各高校の監督自身だ。今、現場の監督たちのアイディアによって、各地の連盟が開催に向けて動き始めている地区も少なくはない。

 先の言葉は、石川県の監督会代表を務める、金沢桜丘高校野球部監督・井村茂雄さんのものだ。井村さんも、独自の地方大会開催に向けて戦っている監督の一人だ。

 石川県といえば、甲子園中止発表をうけた翌日。
 独自の地方大会開催に向けた感染防止対策の一つとして、加盟校全ての関係者たちが着用するためのスポーツマスク2000枚の購入を石川県高野連が明らかにした。

 このアイディアを高野連に提案したのが、井村さんだった。発案のヒントは、長野県・小諸商業高校野球部の竹峰慎二監督が、5月半ばに甲子園の開催を願って自作した動画をみたことからだった。もともと、若手指導者を養成する日本高野連主催の「甲子園塾」1期生の同志だった二人。


小諸商業野球部・竹峰監督が制作した動画より

 竹峰監督が制作した動画の中では、実際に野球部顧問たちが、ネックウォーマー型の通気性の良いスポーツマスクを着用し、自主練習をしている。スポーツマスクの着用によって、大会開催が実現できるのではという願いが込められた動画から、井村さんはヒントをもらった。すぐに、知り合いのスポーツ店に電話をかけた。そこで、マスク2000枚の制作確保を確認。そのまま、石川県高野連に提案を持ち掛け、賛同を得た。

 そのスピード感ある動きの背景には、佐々木渉さんが理事長を務める石川県高野連と、4年前に発足したばかりの石川県の監督会との風通しの良い組織体制もあるが、それが今回の非常事態において、県内の球児たちを救っていることは間違いない。

 ただ、それだけではなく、他の地区も真似できるようなロールモデルの提唱が、今回着目すべきポイントだ。

 井村さんは、2000枚マスク購入の提案だけではなく、大阪府が新型コロナの感染拡大防止に向け、吉村洋文知事が全国に先駆けて掲げた「大阪モデル」にならって、高校野球における「石川モデル」を作成し、県の高野連に提案した。