明豊、大分商に一泡吹かせる注目校・楊志館。投手王国復権を予感させる注目の4投手
新型コロナウイルスの影響で史上初の中止となった選抜に、北海道や群馬。さらには大阪府らとともに2校同時に選抜出場校を輩出した大分県。選ばれたのは明豊と大分商だったが、昨秋の九州大会決勝戦で対戦しており実力は九州トップであることは間違いない。
今年の大分を牽引する二大勢力を破ろうと目論んでいるのが楊志館。福岡ソフトバンクホークスの甲斐拓也の母校で、昨秋の県大会16強に進出。2007年の夏の甲子園にも出場したことのあり、過去には「投手と言えば楊志館」と言われる時代があった。今回は県大会中止もあり、3月2日から4月8日まで活動自粛。その中でも、快く電話取材に応じていただき、注目投手を紹介していただいた。夏だけではなく、将来的に上のステージに立つ可能性を持った選手だけに覚えていきたい。
楊志館投手は全員タイプが違う個性派ぞろい!
工藤慶祐投手
まず昨年のチームからベンチに入っている藤野優弥。右の技巧派右腕で、身長は172センチ。体重も70キロ前後と決して大きな体ではないが、藤野本人も意識しているダイナミックな投球フォーム。さらに瞬発力を活かして切れ味の鋭いカーブ、スライダーを駆使する。
その切れ味は、キャッチャーもなかなか取れず、監督を務める萩原田久生氏も「エグイです」と高い評価。大学野球を継続し、グラウンドに足を運ぶ先輩たちも藤野とキャッチボールをすると、「良いですね!」と太鼓判を押すボールを投げ込んでいる。オリックスのエース・山岡泰輔をイメージさせる藤野の性格に関しても「投手向きですね」と萩原監督は評価する右腕。旧チームからの経験者としてチームを牽引する活躍を見せる。
そして藤野とともに旧チームを経験するのがサウスポーの工藤慶祐。左のスリークォーターで、ストレートは135キロ前後をマークする。チェンジアップを織り交ぜる緩急自在の左腕だが、最大の武器はフォームにある。
工藤は球界で活躍された森福允彦や嘉弥真新也を彷彿とさせる変則フォームを持っている。インステップ気味に右足を踏み出し、横の角度を十分に生かしつつ、緩急をつけるピッチングで相手打者に的を絞らせていない。「高いポテンシャルを持っている」と萩原監督も一目置いており、旧チームを知る左腕として注目が集まる。
藤野、工藤は旧チームを知るが、一気に成長してきた注目株が2人の出来も明豊、大分商を倒す鍵になっている。それが上野将成と繁永翁甫の2人である。
繁永翁甫投手
上野は藤野や工藤にはないパワー系の投手。身長は184センチと高身長で、高さを活かした角度を付けた投球がストロングポイント。一冬かけて走り込みなどのトレーニングを通じて身体が出来上がり、持ち味の力強いボールに磨きがかかってきた。高さを活かして落差のあるフォークボールを混ぜた投球は、「1、2巡では捉えるのは難しいと思います」と萩原監督が期待を寄せる。
そして楊志館の急成長株として切り札となりつつあるのが繁永。140キロ前後の速球を投げ込んでいたが、コントロールが不安定なところが課題だった。しかし、冬場のトレーニングを通じて体つくりから見直し始めたことで成長速度が上がる。
投手コーチの実績もあった萩原監督の目に留まり、「これはチャンスだぞ。目にモノ見せてやれ」と発破をかけた。繁永はこの言葉で、チームの主戦力の投手まで成長。140キロ前後の速球を駆使する強気のパワーピッチングを主体に、動くボールを得意とするスタイルを武器に相手打者を圧倒する。
藤野、工藤、上野、そして繁永の4人。他にもタイプが違う投手がいることを語る萩原監督。普段からポジションリーダーを中心に、選手たちの自主性を重んじて投手陣を育てている。球界を代表する名捕手・甲斐を育てた楊志館が、好投手集団として復活をすれば明豊と大分商の二強に食い込んでいくのではないだろうか。
(文=田中 裕毅)
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