Column

東金(千葉) 「不安を抱えて始まった21世紀枠推薦校!目指すは8強以上!」

2020.03.02

21世紀枠推薦校に選ばれた実力校の強さの秘密


バッティング練習をする東金の選手たち

■110年を超える歴史ある学校

 千葉県東金市に学校を構える東金高校。学校の近くには八鶴湖公園や桜が咲いており、春には美しい景色が広がる創立110年を超える歴史と伝統がある学校だ。

 野球部は大会2週間前に台風15号の影響でグラウンドが壊れ、大会1週間前に練習を再開。しかしながら16強に進む大躍進を見せて、千葉県の21世紀枠推薦校に選出された。OBに有吉優樹がいる県立高随一の実力持つ注目校の冬場に迫った。

■15人でも勝ち進めた要因

 部員数は2学年で15名という東金。主将の若山遥樹は「1つ上の学年は15人いまして、全体30名でした。ですので、新チームでは元気や声の大きさも小さくなりましたが、1人1人がテーマをもって考えて野球をやってきました」と少ない人数ながら日々の練習を効率的に取り組むようにしてきた。

 その中で主将の若山もバラバラだったチームを1つにまとめようと「1試合に大事に戦っていこう」と考えながら練習合間もテキパキ動くなど、常に周囲に気を配りながら主将としてチームを牽引。秋の大会に向けて「3点を奪い、2点以内に抑える」野球を体現すべく、調整を続けてきた。

 夏場は15人ではあるが、1班5人で10人守備、5人攻撃の実戦練習を基礎練習と並行しながら練習をすることで実戦経験を養い、秋の大会に臨んだ東金。さらに、夏の練習試合で2回までで2桁失点する大崩れの試合を経験し、「どこが相手でも気を引き締めてやろう」と技術だけではなく心も鍛えて迎えた秋季大会。東金は地区予選を勝ち抜き、見事県大会への出場を決めることが出来た。

■冬場の練習メニュー

 県大会でもエース・川戸康貴の好投で3回戦まで進出。ベスト8をかけて専大松戸と3回戦を戦うが、1対10の8回コールド負け。若山主将は「川戸は今までは打たれ始めると崩れやすかったですが、夏が終わってからは成長して安心していました。しかし、その川戸でも『専大松戸打線には打たれてしまうのか』と思い知らされましたし、自分たちの攻守のレベルもまだまだでした」と振り返った。

 そんな敗戦を糧に冬場はバッティングを中心に強化。ロングティーはもちろんだが、暖かければマシンを使ってフリーバッティングを金属バットで行い、オフシーズンでも実践に近い形の練習を重ねてきた。

 またトレーニングでは週に1回程度市内の施設に行き、ウエイトトレーニングをしつつ、グラウンドでは野球の動作に繋がるメニューに取り組んだ東金。特に切り返しを目的に、4メートルを低い態勢で往復しがら転がってくるボールを触ったり、10メートルの間を往復して小フライをとるトレーニングは東金の名物練習となっている。

■ここまでの戦いを支えたキーマンたち

 そんな東金を支えてきたのはエース・川戸はもちろんだが、「責任感が強い選手で、主将の自分も助けてもらっています」と大塚善の名前もあげる若山主将。さらに1年生ながらショート守り、高いセンスを持つ石橋澪にも期待を寄せているが、若山主将が春先注目したのは木村陸太風戸健志郎、そして廣岡京也の3人だった。

 「誰よりも練習をしているのが木村です。特に守備は入学時に比べると見違えるように上手くなっているので、木村が出てくればもっとチームは良くなってくると思います。
 風戸は秋まではあまり意見を出せていなかったのですが、今はかなり出せるようになりました。そして廣岡は技術なら石橋に負けていないですが、気持ちをもっと前面に出してくれればと期待をしています」

 昨年は千葉の21世紀枠の推薦校に選ばれた県内屈指の公立校・東金。若山主将は「秋までは風戸を中心に守って勝つ野球でしたが、春以降は守るだけではなくて打って勝てるチームになって、過去最高のCシードを超えてBシード以上が取れる、8強以上を目指します」と力強く宣言した。

 ケガの影響でチームのサポートに回っていた若山主将。「自分が練習できなくても、みんなが考えて行動できている。今の状況は夏では考えらず、成長を感じています」と着実に力をつけてきた東金。春以降、戦国千葉で躍進するか、注目だ。

[page_break:中心選手たちの考える課題、強化ポイント]

中心選手たちの考える課題、強化ポイント


エースの川戸康貴

 ここからは東金を牽引するエース・川戸康貴投手と、大塚善選手、そして風戸健志郎選手の3人に話を聞きました。

Q.秋季大会など、ここまで試合を通じて見つかった課題を教えてください

川戸:一定のリズムで投げられなかったので、春以降はそれをできるようにして力みのないフォームになればと思います。
大塚:守備が課題でした。フライは良かったのですが、ゴロに対しては一歩目が切れていない時にチャージが甘くなってしまいました。バッティングでも詰まってしまうことが多くフォームを変えてみましたが、納得のスイングができませんでした。
風戸:キャッチャーとして、投手を乗せられなかったことです。秋は逆に投手の乗せてもらった感じでした。また低めの変化球に対応できず、1番打者として役割を果たせなかったのがバッティングでの課題です。

Q.このオフシーズンの目標、個人的に強化したところを教えてください。

川戸:あまり難しく考えないことです。なるべく単純、シンプルに考えて力を入れなくてもボールを投げられるようにしようと練習をしてきました。
大塚:バッティングをテーマにやってきました。全体帝に見直しましたが、特に手首の返しは弱かったこと、左腕が流れやすいこと。そして突っ立った状態で下の力が抜けていたので、左脇は締めつつしっかり地面を捉えられるようにしました。
風戸:まずは重心を落としてバッティングで粘れるようにしてきました。そのためにトレーニングでも下半身系を多く取り入れるようにしました。

Q.応援する方々へ自分に自分のここを見て欲しいと言うのを教えてください。

川戸:春以降はコントロールが秋に比べて向上しているはずなので、制球力を見て欲しいです!
大塚:冬場はバッティングをメインにしてきたので、バッティングを見て欲しいです!
風戸:1番打者としてしつこく相手に食らいつくバッティング。そしてキャッチャーとして投手だけではなくチーム全体を引っ張る姿を見て欲しいです!

Q.このチームの好きなところ、または他のチームに負けていないところはどこですか。

川戸:全員がしっかり頭を使っているので、周りを見て気を遣いつつ、頭を使ったプレーができるところが他には負けていないと思います。
大塚:15人ですが、流れに乗れれば一気に試合を進めていけるのは負けていない部分だと思います。
風戸:15人ですが、1人1人が向上心をもってできるところは負けていないと思います。

Q.これからの意気込みを最後にお願いします

川戸:専大松戸には毎回負けているので、専大松戸の選手たちを驚かせるような投球で「変わった」と思わせます!
大塚:ランナーで出塁すれば足を使ってかき回したいと思います。また守備は今後もっと練習して上手くなります!
風戸:若山、川戸、そして自分の3人でチームを引っ張るつもりで戦い、勝ちにこだわっていきたいと思います。

 川戸選手、大塚選手、風戸選手ありがとうございました!

[page_break:自信につながる2勝だった]

自信につながる2勝だった


トレーニングに打ち込む東金の選手たち

 ここからは土屋監督に話を伺いました

Q.今年のチームは、新チームが始まってから、どんなテーマを持ってチームを作り上げてきましたでしょうか。

 不安しかなかったですね。「どうする、どうなる」という感じでしたので、まずはミーティングから始めて「選手たちがどれくらい考えられるのか。主将もどうするのか」と様子を見ていました。頭は悪くないのですが、最初はなかなか話を進めることが出来なかったです。

 その中で目標を決めさせました。ちょうど1か月後に地区予選、2か月後に県大会。そして3か月後には地域の大会でしたので、3か月でどうするのかを話すことで考えさせて習慣にできるのか。

 また練習メニューを組むのも人数が半分になってわからなかったので、全員に内野を守らせて適性を図る。さらに5人1組の班を3つ作って5人で攻撃、10人で守備をする実戦形式を多くやりました。秋の大会まで臨みました。

Q.秋の大会を振り返っていかがでしょうか

 地区予選は1試合だけでしたので、1つ勝って県大会に進めました。そこから1か月あったのですが、大会2週間前に台風が直撃。マウンドはなくなり、倉庫は壊れる。雨漏れなどもありましたが、1週間前から活動を再開したので、逆にあまり考えることなく大会に入れました。

 大会では川戸が初めて2試合連続完投をしてくれて。特に2回戦では8回二死までノーヒットノーランの好投で1点差で勝利できました。この2勝が「やれる、やれそうだ」と選手たちに自信が少しずつ芽生えてきました。

 さらに11月に21世紀枠推薦校に選ばれたことで注目されるようになり、少しずつステップアップしていきました。

Q.冬の練習のテーマは何でしょうか

 バッティングですね。ほぼ毎日やりまして、基本は前から来るボールを打つことを大事にしてきました。ティーバッティングをすることはありますが、実戦に近い形でほぼ毎日フリーバッティングをするようにしていました。

Q.最後に、今後の意気込みをお願いします。

 夏は川戸だけでは勝てないです。チーム力が上がらなければ、夏は難しいです。ですので、打てるようにしなければならないですし、2番手がいないと勝てないです。そのためにも2番手以降の投手ができるかどうか。そして自分たちの意思をもって野球ができるかですね。

 土屋監督、そして東金高校の皆さん、ありがとうございました!

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今年も大好評!
【冬が僕らを強くする 特設ページ】
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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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