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札幌国際情報(北海道)有倉 雅史監督からの3つのキーワードに選手は「考えて」応える!

2020.02.15

 札幌国際情報は、近年着実に力を付けてきて注目されている公立校である。昨夏は、東海大札幌北海に競り勝ち南北海道大会を勝ち上がり、決勝で北照に1点差と苦敗した。そんな札幌国際情報を指導しているのは元プロ野球選手である有倉雅史監督だ。有倉監督の下チームはどのような取り組みを行ってきているのか。札幌国際情報の取り組みを迫りたい。

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札幌国際情報(北海道)「真摯に野球に向き合う」ことで更なる進化を遂げる!

「考える」を徹底して自力を付けてきた

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有倉雅史監督

 札幌国際情報の野球部を一言で表すなら「考える」だろう。

 ただし、札幌国際情報の「考える」は、何かをぼっと「考える」ではない。状況を自分で判断し、自身で考えてアウトプットするまでを「考える」と言っている。

 有倉監督は
 「私の言っている一言から、10のことを考えるぐらいのことを考えなさいと言っています」と話してくれた。

 ではなぜ「考える」にこだわるのか? それは有倉監督の今までの野球人生と関係している。

 「自分自身そんなにプレイヤーとして抜群の選手じゃなかったので、その中で、やっぱりどうやって自分の力で抑えるかとか、いろんなことを自分なりに考えて、なんとか(NPBで)やれたので、そういう所が生かされていると思いますね。球が早いわけではなく、そしたらどうやって自分の力で抑えられるのかというのを考えながらプレーしてきたので」

 自身がNPBで8年間プレーして、「考える」ことの大事さを分かっているからこそ伝えられる、重みを感じる言葉である。

 もちろん、この「考える」力は一朝一夕で身につくものではない。有倉監督が「やっぱり時間はすごくかかると思います」と話すように、少しずつ身に付いていくものである。有倉監督が選手と野球を通して一緒に関われる2年半で、選手に「考える」力を少しでも身に付けてほしいと願っているのである。

 その思いは着実に選手にも伝わっている。監督が信頼を寄せる主将の原田航介は、
 「日頃からプレーの中で気づいて考えてプレーするというのがずっと有倉先生からも言われているので普段から自分から考えるというのは意識して全員やっていると思います」

 「一人一人が自主的に考えて自分たちで取り組めるようになってくるようなチームになってくると強くなってくると思います。先生からはミーティングで何度も何度も、『自分たちで考えてやれ』とか、『頭を使ってやる』とか、『グランドの中で何かを感じて野球をしよう』 というのは言われていて。そこが自分たちの課題でもあるので、常に練習の合間でミーティングをし、集まって自分たちで意見を出し合っています」と話す。

 大型三塁手・秋田真もまた、
 「ひとつの練習に対して皆で意見を出し合ったり、一つ一つの練習の合間に出た課題とかもすぐに選手同士で声を掛け合って修正したりしています」と話すように「考える」が浸透しているのが分かる。

 ただし再度伝えたい。札幌国際情報の「考える」は、状況を自分で判断して、アウトプットするまでを言う。原田や秋田の言葉からも、アウトプットまで考えているのが十分伝わる。これこそが札幌国際情報の強さの秘密なのだろう。

[page_break:思いはどのように伝わるのか?/チームに浸透する伝統/みんなに応援されるチームへ!]

思いはどのように伝わるのか?

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練習中の様子

 指導者と選手が「考える」というキーワードで繋がり、同じ方向性を向いている。簡単そうに見えて、実は非常に難しいことだ。伝える相手は高校生である。すぐに理解できる選手からなかなか理解できない選手など同じ言葉を同じように伝えても、伝わり具合は千差万別である。

 そんな中、チームに共通の考えと方向性を伝えるにはどのような事が大事になってくるのか?有倉監督の言葉を紐解いていくと、大きく分けて3つの重要なキーワードがあると感じた。

 1つ目は、「真剣に向き合う」だ。
 「本当に単純なことでこっちが真剣に一生懸命誠意をもって相手に接すれば、ちゃんと帰ってくるのが子供だと思うので、そこだけはきちんと向かい合っている。真剣に怒るし、こっちが手を抜いてしまってはだめだと思いますね。指導するのが難しい時代ですけども、こっちの気持ちを相手に伝えるのは大事だと思います」有倉監督の言葉である。

 遊撃手の高橋瑠斗は、有倉監督について「自分の信念と言うか絶対に強い軸を持っていて、ちゃんとやるところは徹底して僕たちにも何回できなくても徹底して言って下さいます」と話すように、有倉監督の思いを受け止めている。 この「真剣に向き合う」こそが1つ目の大事なキーワードとなる。

 次のキーワードは、やはりNPB時代も含めて「豊富な野球経験と知識」だろう。

 秋田は「練習中は厳しいですけど、野球のことは何でも知っていますし、自分が気づいていない視点からもいろんなアドバイスや指摘をしてくださるので、すごい方だなと思います」と話す。

 また高橋も、「こっちが考えられないようなこととか言ってくださるので、すごく有倉先生と話す時は勉強になります。」と語ってくれたように、やはり尊敬されるだけの十分な野球経験と知識があるからこそ、指導者の言葉が選手にすんなり入ってくるのだろう。

 そして最後のキーワードが、「適切なタイミングでの声がけ」である。

 有倉監督は、
 「伝えるタイミングが大事だと思います。今も昔も子供は変わらないような感じがします。伝えるタイミングは大事だと思います。素直に聞けると聞けない時ってありますよね。いくら良いことを言っても入ってこない時って絶対にあるもので。その見極めは感覚です」と淡々と話してくれた。

 「一学年10人の時代もあったし、全く勝てない時期もあったので、そういう経験があるからだと思います。これがやっていれば勝てるというのがないので色々とこちらも考えますよね」
 と話すように、高校野球の指導者として多くの経験をしたことで、引き出しが増え適切なタイミングで適切な言葉を選び伝えられていることだ。

 このように、3つが揃っているからこそ、有倉監督の伝えたい「考える」の重要性を選手も理解し同じ方向を向いているのだろう。

 「先生からは自分たちで考えてやれというのは言われているので、後はみんな一生懸命練習をしているのでそんな中でみんな一球一球考えを持って高い意識を持って行っているのが、課題が明確にわかることに繋がっているのかなと思います」

 原田主将の言葉から、有倉監督の意志は確実にチームに伝わっているのが分かる。

[page_break:チームに浸透する伝統]

チームに浸透する伝統

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高橋瑠斗(札幌国際情報)
 

 「考える」を伝え続けてきた有倉監督、それはチームの伝統としても受け継がれている。その1つが朝の学校内の掃除である。

 「何年か前から自分たちでやるようになりました。気づく力がないとか、損得ばかり考えて行動するとか、プレイの中で野球の中でそういうことを伝えていく中で、自分たちで朝掃除しようということで選手たちが始めたことです。 それが次の代、次の代へと繋がっていっているのですごくいいことだなと思います」

 もちろん、今の選手達も目的を理解して掃除をしている。

 「理由が目の届かないところまでしっかりと掃除して、アンテナと言うか、目配り・気配りができる選手にならないといけないというのを有倉先生が言っていて、朝掃除をして視野を広げてやっていこうというのはみんなで言ってやっています」と原田主将が話してくれた。

 このように、「考える」ちからは伝統となって受け継がれている。野球の自力がついてきたことと、朝の掃除に見えないつながりを感じる。札幌国際情報の強さの秘密の一端が垣間見られる。

みんなに応援されるチームへ!

 もう1つ有倉監督が大事にしている事を伝えたい。

 「やっぱりみんなから応援されるような人間じゃないといけないと思うし、何か成功するのには絶対にいろんな人の支えがあるので、そう言う力が大きければ大きいほど、きっと自分の力が発揮できると思います。仕事にしても何にしても。なので、そういう魅力的な人間じゃないといけないのじゃないかなと思います」

 一見すると、「考える」とまったく繋がりがないように感じるが、実は皆に応援される為には、細かい気付き・気遣いが必要になる。そう考えると、野球での「考える」は、「皆に応援される」に繋がっているのがよく分かる。 野球だけでなく、日常生活に通じる「考える」力を付けることを、有倉監督は求めているのである。

 原田主将も、
 「有倉先生も日常生活を変えないといくら野球が上手でも人としてダメな選手は絶対に高校が終わって野球から離れたとしても何も残らないし、野球を取って何もの残らない人間になるだと有倉先生が入っているので、高校の部活は、目標は甲子園で勝つことが目標なのですけど、目的は野球を通して人間的に成長することが目的で、野球部のスローガンは人間力野球にしているので、そういうことは意識しています」とその意図をよく理解している。

 最後に再度有倉監督の言葉を紹介したい。

 「終わりが決まっている高校野球。今の時間をどうむだにしないようにするか考えて過ごして欲しい」
 「日常のこと、勝つこと、プレーのこと、そして野球のこと全てが繋がっていると思います」

 この言葉から、有倉監督が思い描く「考える」の形が見えてくる気がする。

(記事=田中 実

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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