【目次】
[1]2つの「物差し」を操る
[2]飛び抜けた選手がいなくても勝てる強さ
秋に札幌支部予選を制し、昨夏準優勝の札幌国際情報を破り、全道大会でベスト4まで駆け上がった高校がある。その高校こそ寺西直貴監督率いる、札幌龍谷である。
札幌龍谷の今チームの魅力と、札幌龍谷の今までの歩みを紐解いていきたい。
前編はこちらから!
札幌龍谷(北海道) 寺西監督就任時は貸しグラウンドを転々と【前編】
2つの「物差し」を操る

寺西直貴監督(札幌龍谷)
寺西監督の指導の魅力の1つに「物差し」を巧みに操れることがある。あるときは「物差し」を固定し、あるときは大胆にスケールを変えるのである。
その一例を紹介したい。
寺西監督の指導者への第1歩は、北海でのコーチ時代に遡る必要がある。全国レベルのチームの指導を体験したことは、寺西監督にどのような財産をもたらしたのか?
「部員も120人程いてトップ選手もうじゃうじゃいるんです。このぐらいの技量の連中が集まれば甲子園を行く!これなら負けない、負けるとしたら運が悪い時だけ。力では絶対負けない。という物差しですよね。尺度ですよね。それが1年目ではっきり焼き付けました。そして、その裏付けを僕はノートに書いたんです。」
そう、全国レベルの「物差し」を寺西監督はこの時期に手に入れたのである。
一方、その「物差し」に対して、もう一つの寺西監督のフレキシブルに変化するもう一つの「物差し」である。個々の選手に対してはそれぞれ別の「物差し」をもち個別に選手と向き合っている。それこそが、苦労を重ねた時代から今までの指導経験の賜である。
「僕就任した年が30歳になる年でした30より35、そして 37、40と年を追うごとに、こんな僕ですけど蓄積が多少ありますよね。それが一番大きい部分かなと。生徒との接し方とか、問いかけ方、伝え方、叱り方の変化を感じていました。20代はハチャメチャでしたから。引き出しが増えてたその数と選択ですよね。どれをチョイスするか」
この深みこそが、状況によってスケールを変えることができる「物差し」につながるのである。固定した「物差し」とスケールを伸縮自在に変える「物差し」2つの物差しを絶妙に操れることが、寺西監督の凄さである。そしてこの変化自在の「物差し」は、選手に対してだけでなく、戦略にも現れる。
それを裏付けする面白いエピソードを1つ紹介したい。
寺西監督が就任してから20年近く札幌龍谷は大会でスクイズをしたことは1回しかない。そんななか昨秋の支部予選で札幌龍谷はスクイズを5回決行した。
「戦い方のチェンジですね。打てないからやらないといけない。勇気」
これは寺西監督の言葉だが、この本質は今までの戦い方にとらわれない、変化自在の「物差し」を持つという点につきる。