Column

自信と課題を見つけた秋 沖縄尚学はすべてでベストを尽くし、さらなる高みを目指す冬へ!

2019.12.23

何をやるにも、最後まで気を抜かずやり抜く!

自信と課題を見つけた秋 沖縄尚学はすべてでベストを尽くし、さらなる高みを目指す冬へ! | 高校野球ドットコム
沖縄尚学ナイン

 「お前ら、メンバーを引っ張れてないじゃん!」

 比嘉公也監督が叱咤したのは、主将與谷をはじめとした甲子園出場メンバー。秋の県大会の決勝、そして九州地区高校野球大会準々決勝と、最終イニングで不甲斐ない姿が続いた沖縄尚学。相手を活気付かせた一つの原因が、甲子園メンバーのエラーだった。

 「殆ど、グローブは綺麗にしてくるのですが、スパイクを疎かにする子がいるので。」

 並べられたスパイク。その上にグローブが置かれる。その一つ一つを、つぶさにチェックしていた伊志嶺大吾副部長。例えピッチャーのPカバーであっても、汚れ(土)が目立つと「ダメですね」とダメ出しする。
 「凄い高いでしょう。親に買ってもらって。それで野球やってるのに、毎日磨くことが出来ないのでは。」ホンの小さな事。足下を見つめる事。出来ることは徹底しようと各自で励ましあう。

 「例えば授業時間。あ、あと5分で終わりだなと。これまではそう思っていました。でもそれが八重山農の9回、明豊の9回に出てしまった。本当に普段の態度から見直そうと頑張っています。」

 主将の與谷友希がみんなを代弁する。みんなでテスト勉強をしていても、あと少しで終わるな。と思ってしまっていた。何気ない気持ち。しかしそれが出てしまうのが野球なのだ。どんなことにもやり抜くまで気を抜かない。この冬のテーマだ。

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投内ノックの様子

 取材に訪れた朝のメニュー。打撃陣と投手陣は別メニュー。先に顔が歪んでくるようなキツイ練習を始めたのは投手陣だった。専用グラウンドの尚学ボールパークは、ホームベース付近からレフト、ライトを経て帰ってくると300mある。「全員50秒台で帰って来いよ〜。」「ハイっ!」長身右腕の嘉陽が引っ張り50秒前半でゴール。

 エース永山は55秒ほど。「な〜が〜や〜ま!」本塁ベースから届く声で外野を走る永山への叱咤が響く。60秒近くかかる一年生にとってはまだ体力が無く、厳しいを通り越してしまうが、比嘉監督は容赦しない。「お前、論外だよ!」名門の扉を叩いた以上、上級生だろうが下級生だろうがついていってもらう。その積み重ねの先無くして、甲子園出場、全国制覇はあり得ない。

 「僕はストップウォッチで計るとか、身体を大きくするとか、こういうバランスの練習があるよとか。そういう引き出しを持っているだけ。その引き出しから、彼ら一人一人が何を選択していくかだと思います。」

 結局は、自分が思うように投げられるかどうか。一つを押し付けるのではなく、選手が自主的に選択出来るように監督自身が引き出しを多く持つ。

 300mを駆け抜けた投手陣に与えられるのは30秒。ここで息を整えなければならない。
「5,4,3,2,1,GO!」この日の300m走は7本だったが、5,6本目になると「ここ!ここ!お前らが弱いところ!やり抜け!」と声がかかる。
 秋の王者の姿を想像していると、良い意味で裏切られる。沖縄尚学は、全員がチャレンジャーだ。

[page_break:自分のパワーポジションを見つける/選手個々が抱くこの冬の課題]

自分のパワーポジションを見つける

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ノックを打つ比嘉公也監督

 「選手全てが自分のパワーポジションを見つけること。」

 さしずめ投手陣ならリリースに入るまでの間、打撃陣ならボールをミートするまでの間か。各自自分なりの姿勢、パワーポジションをこの冬で見つけて欲しいと、比嘉監督は語る。

 「何も考えずにそれらが出来る子っているじゃないですか。その人はそれでいい。出来ているのだから。それじゃ出来ていない子はどうするか。意識してやらないと。これは凄く大事なこと。」

 去った秋、エース永山以上の好成績を残した大湾朝日。彼の場合、下半身の使い方の新しい引き出しに挑戦中とのこと。「それが結果に繋がるかどうかは誰にも分からない。でも、そうやって殻を破ろうとしていることは、絶対に後悔には繋がらないですよ。」逆に言えば、やらないと絶対に結果は出ない。

選手個々が抱くこの冬の課題

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グラウンドにあいさつをする沖縄尚学ナイン

 ある程度の自信と、それ以上に行くための課題を見つけた秋。主力選手らはどのような思いでこの冬、自分と見つめあっているのか。

 永山「調子が良くても悪くても、同じようなボールが投げられるようにすること。その土台をこの冬で作り上げていく。それと並行して、どの球種でもストライクが取れるように。制球力アップを身につけたいです。」

 大湾「絶対的エースに永山君がいる。投手陣一人一人はタイプが違うけど、彼に負けないようについていく。それぞれが背番号1を背負っているという気持ちで、走り込みだったりキツイウェートトレーニングだったりをやり遂げる。一歩ずつ前進していきたいです。」

 與谷「たとえ投手が打たれても、僕らが打てば勝てる。僕らが打てなくても投手が抑えれば勝てる。強いチームは守れるし、バッティングもいい。この冬は、僕らの課題である守りを徹底して鍛えて且つ、振り込んでいく。沖縄のチームは打てないという見方を、僕らが変えていきます。」

 比嘉監督「このチームは守りで負けている。年内においては徹底して守備向上メニュー。基本的な追い方、打球に対する判断力など。もちろん体作りもします。理想は強い身体にスピードがあること。でも、一番の課題は選手間のコミュニケーションです。」

 永山、大湾をはじめ投手陣が内野の各ポジションについた。比嘉監督がノックする中、ぎこちなさがこちらにも伝わってくるほど、沖縄尚学らしくない空気感が流れる。「集まれ〜」と比嘉監督。

 「何故やっているのか分かるか?俺が本気でお前をショートにするためにノックしていると思うか?」投げ掛けられた選手は「いいえ!」と答える。「じゃなんだ?永山」と次に永山を名指し。「打球に対し足を使って動くこと。ベース付近へ、例えどのような体制でも投げられるようにするためです。」さすがエース。完璧な答えだ。

 しかし。「それを皆に言ってくれよ!伝えてないじゃんかよ!」これが、監督のいうコミュニケーション不足。しかしこの冬、これら課題を一つ一つクリアしていくのが名門たる所以。来る春、そして夏へ向けてより一層の高みへ登るため。冬が沖縄尚学を強くする!

(文・写真=當山 雅通

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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