第7回 プロ注目左腕・上田洸太朗擁する享栄は3年生だけで代替大会に臨む!2020年05月26日

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プロ入り志望を表明している享栄のエース・上田洸太朗

 20日に夏の大会の中止が発表された。享栄は翌21日に部員を集めて、3年生たちを前に大藤敏行監督が話をした。享栄の場合は水曜日、木曜日、金曜日と学年別の出校日としていたのだが、21日は3年生部員たちも特別に集合した。中京大中京を率いて全国制覇を果たしたという実績を引っ提げて大藤監督はライバルの享栄へ異動して3年目。今年のチームで2000年春以来の甲子園復活を目指したいと作り上げたチームだった。それだけに、今回の中止発表は正直残念だったであろう。

 ただ、愛知県の場合は県高野連の対応が早く、すぐに代替大会を開催する予定だということが発表され、そこへ向かって準備していこうという姿勢は作れたようだ。

 大藤監督は、言葉を選びながらも落ち込む選手たちに声をかけた。

「現在は、こんな状況なので、今まで我々が当たり前にやれていたことがやれなくなってしまったのは残念だと思う。だけど、今の状況に最前線で立ち向かっている人もいる。そんな現場の人たちは、一部では世間の誹謗中傷の声も浴びながらも頑張ってきている。ただ、オマエたちも、本当に一生懸命に野球をやってきたと思う。だから、今は落ち込むだけ落ち込んでもいい。当たり前だろう、それだけの思いを込めてやってきたんだから。そういう思いがなかったら、むしろオレは残念だ。だけど、いつまでも、落ち込んどってはいかん。そこから、這い上がっていけ。自分がやってきたことをいろんな人が支えてくれていたと思うので、その人たちのことも思いながら、立ち直っていってくれ」
 そんな話をしていったという。

「理不尽かと思うかもしれんけれども、世の中というのは理不尽なこともいくつもある。ただ、今回は全国の高校球児の3年生4万8000人くらいが、みんな同じ理不尽を味わっているんだ。ただ、オマエたちの口惜しさ、辛さは一緒にやってきたオレが一番わかっている。だけど、ここから立ち直れなかったとしたらそれは自分たちが今までやってきたことを裏切ることになるんだ。だから、落ち込んだ後は立ち直っていこう」
 こうして、選手を励ましていきながら指導者としての今の思いも伝えたという。

 そして、スタッフたちもいち早く代替大会へ向けての目標設定を切り替えた。折しも、25日から学校は授業を再開し、3年生も26日から新たに活動していくことになる。

 対外試合も6月13日から徐々に入れ始めて行っているようだ。6月だけでも、ナイターも含めて可能なところと16試合予定しているという。

 チームとしては、代替大会へ向けては3年生だけを中心として活動し、1、2年生は秋以降の大会を目指して活動していくということになった。享栄の場合は指導スタッフも多くいるので、そのあたりの体制は整っている。また、瀬戸市にある専用グラウンドも比較的広く、昨年完成した室内練習場もあるので、ある程度は分散しての練習も十分にできる環境である。

 そして、大藤監督は3年生たちには、練習を再開するにあたって、一つだけ条件を出したという。それは、「(甲子園を目指して練習してきた)今までと同じ気持ちでやる」ということだった。つまり、単なる思い出作りや、大会がなくなった可哀想な3年生のための慰めの試合ということではなく、「真剣勝負していくぞ」という気持ち、そこだけは失ってくれるなということだった。

 享栄の3年生部員たちは、大学などでも野球を続けていくことを志望している生徒も多くいる。また、エースの上田 洸太朗君のように、「プロ入り志望」を表明している選手もいる。それだけに、今、これからの練習も次のステージへ向けての準備という意味からも大事になっていくであろう。

「野球人というのはね、グラウンド出て、バチーンという音を聞いていくと、気持ちが引き締まっていくもんですよ」
 大藤監督も、練習再開の日を心待ちにしていた。

(文・手束 仁


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プロフィール

手束仁
手束 仁
  • 生年月日:1956年
  • 出身地:愛知県
  • ■ 経歴
     愛知県知多市出身。半田高→國學院大81年卒。大映映像事業部など映像会社で、映画・ビデオなどの販売促進、営業等を経て、編集プロダクションに10年勤務後独立。
     99年に『熱中!甲子園』(双葉社)を仕掛け、を刊行。同年に『都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社・刊)で本格的にスポーツ作家としてデビュー。99年12月に、『アンチ巨人!快楽読本』(双葉社)を企画編集・執筆。その後、『ふたりの勇気~東京六大学野球女子投手誕生物語』、『高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)などを相次いで刊行。さらに話題作となった『甲子園出場を目指すならコノ高校)』(駿台曜曜社)、『野球県民性』(祥伝社新書)、『プロ野球にとって正義とは何か』、『プロ野球「黄金世代」読本』、『プロ野球「悪党」読本』(いずれもイースト・プレス)などを刊行。
     さらには『高校野球のマネー事情』、『スポーツ(芸能文化)名言』シリーズ(日刊スポーツ出版社)、『球国愛知のプライド~高校野球ストーリー』などがある。
     2015年には高校野球史を追いかけながら、大会歌の誕生の背景を負った『ああ栄冠は君に輝く~大会歌誕生秘話・加賀大介物語』(双葉社)を刊行し18年には映画化された。

     スポーツをフィルターとして、指導者の思いや学校のあり方など奥底にあるものを追求するという姿勢を原点としている。そんな思いに基づいて、「高校生スポーツ新聞」特派記者としても契約。講演なども國學院大學で「現代スポーツ論」、立正大で「スポーツ法」、専修大学で「スポーツジャーナリズム論」などの特別講師。モノカキとしてのスポーツ論などを展開。
     その他には、社会現象にも敏感に、『人生の達人になる!徒然草』(メディア・ポート)、『かつて、日本に旧制高等学校があった』(蜜書房)なども刊行。文学と社会風俗、学校と教育現場などへの問題提起や、時代と文化現象などを独自の視点で見つめていく。 そうした中で、2012年に電子メディア展開も含めた、メディアミックスの会社として株式会社ジャスト・プランニングを設立。新たなメディアコンテンツを生み出していくものとして新たな境地を目指している。
  • ■ 著書
    都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社) 
    甲子園への助走~少年野球の世界は、今』(オーシャンライフ社)
    高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)

    話題作となった
    甲子園出場を目指すならコノ高校(増補改訂)』(駿台曜曜社)
    スポーツ進学するならコノ高校
    東京六大学野球女子投手誕生物語~ふたりの勇気』(三修社)
    三度のメシより高校野球』(駿台曜曜社)
    スポーツライターを目指す人たちへ~江夏の21球の盲点』(メディア・ポート)
    高校野球に学ぶ「流れ力」』(サンマーク出版)
    野球県民性』(祥伝社新書)
    野球スコアつけ方と分析』(西東社)
    流れの正体~もっと野球が好きになる』(日刊スポーツ出版社)NEW!
  • ■ 野球に限らずスポーツのあり方に対する思いは熱い。年間の野球試合観戦数は300試合に及ぶ。高校ラグビーやバレーボール、サッカーなども試合会場には積極的に顔を出すなど、スポーツに関しては、徹底した現場主義をモットーとしている。
  • ■ 手束仁 Official HP:熱中!甲子園
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