目次

【目次】
[1]第101回全国高校野球選手権鹿児島大会準々決勝 【神村学園4対3大島】
[2]第145回九州地区高校野球鹿児島県予選準々決勝 【枕崎8対7樟南(延長14回)】

第101回全国高校野球選手権鹿児島大会準々決勝 【神村学園4対3大島】



神村学園

 今年の夏の趨勢を決めた試合といっても過言ではない。この夏の優勝候補の大本命と目され、4回戦まで危なげなく勝ち進んだ神村学園が初めてにして最大の試練を迎えた一戦だった。

 この大会、ノーシードから接戦を勝ち抜いた大島が5回まで押し気味に試合を進め、5回表、一死満塁のチャンスで4番・今里武之介(3年)が初球を弾き返し、走者一掃のライトオーバー三塁打で3点を先取した。

 エース赤崎太優主将(3年)は8回まで神村学園打線を散発3安打、三塁を踏ませない好投。8回裏二死一塁で神村学園のリードオフマン・森口 修矢(3年)がボール球を空振り三振した時は、シード神村学園といえども焦りがあり、追い詰められているのを感じた。
 気は早いが大島初の夏の甲子園があるかもしれないと思った。

 残す回は9回裏1イニングのみ。点差は3点。ワンチャンスで逆転できる点差だが、この日の赤崎の出来からすれば、挽回は難しいと思われた。だが赤崎は「応援に応えるためにも勝たなければと意識して、腕が思い切り振れなくなった」と言う。

 赤崎が「勝ち」を意識した投球になったことを神村学園打線は見逃さなかった。



大島

 先頭の2番・田本 涼(3年)がレフト前ヒット、3番・古川 朋樹(2年)がライト前ヒットで出塁し、4番・桑原 秀侍(2年)が死球で満塁とする。この試合で初めて連打が生まれ、2人以上の走者を出した。

 「表の攻撃でピッチャーが最後の打者で、追加点が取れず、凡打で走った後だったので、投げやすい状況ではないだろうと思った」と田本は冷静に相手投手の状況を読み、口火を切った。

 徳之島出身の5番・田中 大陸(2年)が追い込まれながらも粘ってレフト前に弾き返して2点を返し、瞬く間に1点差に詰め寄る。6番・松尾 駿助(3年)が送りバントを決め二三塁とし、5回に失点につながるエラーをした7番・田中 天馬(3年)が見事センター前に弾き返し、鮮やかな逆転サヨナラ勝ちで試練を乗り越えた。

 トーナメント戦を勝ち抜いて頂点を極めようと思えば6、7試合を勝ち抜かなければならない。どんなに力のあるチームでも、全試合を自分たちで主導権を握るのは難しく、どこかで相手に主導権を握られる試合がある。その試合をものにできるかどうかが、頂点を極めるチームの分かれ目になる。

 この夏の神村学園にとって、「分かれ目」になったのは間違いなくこの試合だった。