強豪私学の台頭、公立校の健闘が光った2019年は、鹿児島県の勢力図が大きく変化した。また、大会運営にも変革の兆しが見え始めた。そんな鹿児島県の今年の漢字は、これが一番ふさわしい。
「変」

鹿児島城西
2019年の鹿児島は今までになかった取り組みもあり、「変」の文字が一番象徴していたように思う。
夏の甲子園代表は神村学園、秋に九州大会で4強入りし来春、初のセンバツ出場に大きく近づいた鹿児島城西。
鹿児島の高校野球界は鹿児島実、樟南の「2強」が長くけん引していた時代が続いた。
2強の力は今なお健在だが、この10年あまりで一気に全国区の強豪に急成長した神村学園、鹿児島城西、大隅半島の鹿屋中央、尚志館、太田 龍(巨人)を輩出したれいめい、二木 康太(千葉ロッテ)を輩出した鹿児島情報、強豪私学の台頭が著しい。
大島、枕崎、川内、国分中央などの地方公立校の健闘も光った。勢力図の大きな変化が感じられた。
三大ニュースでも触れたが、夏の大会決勝前の休養日の設定、シード校のポイント制導入など大会運営でも大きな変革があった。
明るい話題ばかりではない。少子化などに伴う部員、出場チーム減の傾向が著しい。夏の出場は78校70チーム。最盛期の2005年の93校91チームと比較すれば一目瞭然である。小規模チームの合同チームの出場が増えている。
その分、甲子園を目指す強豪、普通に野球ができるチームと、9人ギリギリで試合に出るのが精一杯のチームとの実力差も顕著になっている。

鹿児島の21世紀枠推薦校となった枕崎
今年の夏2回戦、鹿児島商が鹿児島修学館に55対0の5回コールド勝ちした試合は、その象徴だろう。大会初戦で大差のコールド試合が増えている。
少子化、野球離れの傾向は鹿児島に限らず、全国的な問題である。夏の甲子園でこれまで無料だった外野席を有料にしてその収益を野球の普及活動に当てるなど、日本高野連も将来に備えた野球の普及活動に取り組み始めたが、効果がどこまであるか未知数だ。
何より野球界は、少年、中学、高校・大学、社会人、プロと組織が横並びであり、縦のつながりがない。
サッカー界が日本サッカー界の下に上はJリーグから幼児まで一つの組織で運営され、その上の世界=FIFAまでつながっているのと対照的だ。メディアの利権も絡み、複雑怪奇な様相を呈している。
プロ野球は今なお国民的な人気スポーツで隆盛を誇っているように見えるが、その土台を支える野球人口がどんどん少なくなっていることを自覚し、大きな変革を目指さなければ、野球界に未来はない。
来春、導入見込みの「1週間500球以下」の投球制限は野球の在り方を根本から変える可能性を秘める。強豪私学とそれ以外の学校との格差がより広がることを危惧する声もある。
来年以降も様々でドラスティックな変化があることが予想される中、それにどう対応していくのか、今後も注意して見極める必要がある。
(文=政 純一郎)
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