野球を通じて資質が磨かれ、進むべくして進んだ経営という道。チームで結果を出す喜びをコンサルティングの世界で追求したい ENERGIZE-GROUP・生嶋健太社長（姫路東OB）
学生野球の聖地・[stadium]神宮球場[/stadium]の近くに会社を構えるENERGIZE-GROUP。スタイリッシュな建物で、おしゃれな青山の風景に溶け込んでいる。その建物の前で待っていたのが今回紹介する生嶋健太社長だ。
細身ではあるが、綺麗に焼けた肌に眩しい笑顔。さわやかな印象が強い生嶋さんは、高校時代は甲子園のお膝元・兵庫県にある姫路東で3年間高校野球に打ち込んだ元高校球児。そんな生嶋さんが、社長業の道に進んだストーリーを紹介したい。
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【一覧】人生で大切なことは高校野球から教わった
友人に誘われ初めて自分から選んだのが野球だった
生嶋さんが野球を始めたのは、小学校の低学年から。両親も2人の姉もバレーボールをしていたが、仲の良い友人に誘われて少年野球チームに入団した。
「礼儀や規律がしっかりしているチームでした。監督やコーチが話し始めたらピシっと姿勢を正して聞きましたし、遊んでいて監督やコーチが来れば立ち止まって『こんにちは』と言わないと怒られましたね」
練習は月曜日を除いて毎日専用グラウンドで行うなど、野球漬けの環境の中で上達していくことに楽しさを感じていた生嶋さん。
「少年野球のレベルで考えれば厳しい環境だったかもしれませんが、やらされている感覚はありませんでした。周りには上手な選手が多かったので、その子たちに負けたくなかったんです」
生嶋さんにとって初めて自分からやりたいと思ったものが野球だったことと、バレーボール一家のため「しっかりやらないとバレーに転向させられてしまう」という危機感に襲われたことも負けず嫌いの精神に火を付けた。
中学にあがってもそのまま野球部に入部。「3年生とは体格が全然違いましたし、変化球が曲がるので驚きました」と中学野球界のレベルの高さを肌で痛感。同時に上下関係の厳しさも感じた。
「先輩がティーバッティングをしている間ずっと立って声を出すなどきつかったです。熱中症になったなんてこともありましたが、小学校の時に礼儀や規律を学んでいたおかげで先輩たちからは、かわいがられていましたね」
だが、プレーにおいては怪我に悩まされる時期が続いた。
[page_break:ケガに苦しんだ中学時代、チーム運営に携わった高校時代]ケガに苦しんだ中学時代、チーム運営に携わった高校時代
インタビューに応じる生嶋健太さん
生嶋さんは俊足巧打のセンターで、ガッツあふれるプレーを信条としたチームの中心選手だったが、中学2年生の時に負傷した肩をはじめ、指や肘、さらには肋骨などケガが続いた。
指を怪我した際には医者から「バットが握れないから野球をあきらめた方がいいかもしれない」と言われたこともある。しかし生嶋さんは諦めずに懸命なリハビリを通じてプレーが出来るところまで回復。無事に中学野球3年間を駆け抜けた。
中学のチームメイトは東洋大姫路や市川をはじめとした県内の実力校からスカウトされるほど、逸材の集まったチームで野球を経験していた生嶋さんだったが、自身の進学先は、学力など様々な条件を考慮し、姫路東に決めた。
「高校野球のレベルはすごいものだと考えていたのですが、当時のチームがあまり強くなかったので、中学とのレベルの差は感じませんでした」
実際に1年生秋からはレギュラーの座を掴むと、2年秋には、副キャプテンに就任。ここが大きな転機となった。
「キャプテンはピッチャーなので、全体練習を見るのは自分だったんです。そこで求められたのは、自分個人の成長よりもチームをどうやって作るか。それまでは好き勝手やっていましたから、チームのことを考えだしたらプレッシャーもあってか、野球の成績は下がりましたね」
自分のこと以上にチーム全体へ目を向けるようになった生嶋さん。その中で大事にしてきたことは誰よりも努力をすることだった。
「自分たちの実力はわかっていたので、『姫路東にとっての最高成績を残そう』と目標を決めました。そしてそのために誰よりも努力しようと考え、朝練を頑張っていましたね」
そして迎えた最後の夏、姫路東は兵庫大会を勝ち上がっていくも結果はベスト32、甲子園には届かなかった。その後は、自宅から通える神戸商科大へ進学。そこでは硬式野球ではなく、準硬式野球部に所属して第一線で活躍する。
[page_break:チームで勝つことに魅了された大学時代]チームで勝つことに魅了された大学時代
インタビュー中の生嶋健太さん
準硬式野球部の近畿六大学連盟に所属していた神戸商科大は近畿大などとリーグ戦で対戦。生嶋さんは「硬式野球部に行かなかった実力者が135キロとか140キロ投げ込んでくるんで勘弁してほしかったです(笑)」と懐かしそうに振り返りながらも、1年生から試合に出場。
打撃トップ10入りをはじめ、盗塁部門ではリーグ2位に入る活躍をみせ、早くから存在感を発揮。のちに選抜チームにも選出されるなど、リーグ内の注目選手として成長した。また、4年時にはキャプテンに就任。高校時代同様、チームの運営に携わることとなった。
「部長先生があまり活動に関わらないので、指導者のサポートがないんです。そのため、自分たちで練習をやる日やその日のメニュー、練習試合の相手探し、合宿をどこで何日間やるかなど全てを考えなければなりませんでした。お金が絡むことでしたので、責任感はより一層増していったと思います」
試合でもスタメンのオーダーを決め、生嶋さん自らサインをベンチ、打席、塁上どこからでも出した。それも生嶋さんにとっては、新たな経験。高校時代とはまた違ったチーム運営に携わることができた。
その後、生嶋さんは大学卒業と同時に野球生活を終え、東証一部に上場していたコンサルティング会社へ就職。なぜ、コンサルティング業界へ進んだのか。その理由は高校、大学時代のチーム運営が関係していた。
「主将としてメニューを組んで試合に勝ったときの方が個人で結果を残すより楽しかったんです。チームで勝つことに価値を感じていたので、多くのチーム（組織）に関われる仕事をしたいと思いコンサルティング業界に進みました」
大学の先輩方から銀行への誘いもあったというが、お金という形あるツールよりも、知識といった自分の努力次第で成果が出せるような伸びしろあるツールを使って仕事がしたいという思いもあった。
1年目から仕事に夢中になった生嶋さんは、自宅に帰らず会社で一夜を過ごすことも度々あったが、「努力は苦になりませんでした」と振り返る。ここまでポジティブな気持ちで仕事に向き合えた要因は2つある。
[page_break:経営者としての今を支える2つの考え方]経営者としての今を支える2つの考え方
仕事中の生嶋健太さん
まず1つ目は、中学時代の怪我がきっかけで努力することを苦に思わなくなったことだ。
「上半身ばかり怪我していたので、プレーはできないけど走ることはできたんです。だから1人で黙々と走りこんでいたのですが、そうしたところからあまり努力を努力とは思わなくなって、ほとんど苦にならなくなりました。そういった面が確実に活きていると思います」
そして2つ目は依頼されたことは断らず、全て引き受けるということだ。
「先輩から何かを言われたときに『どうしてだろう』と思わずに『まずはやろう』と決めていました。野球も最初は礼儀や規律を学んでから自主性を知りました。その順序を学ぶきっかけがビジネスに変わっただけで、野球とビジネスは同じなんだと思っていましたから。先輩の指示は基本的に聞くようにしました」
先輩方からの仕事をすべて引き受けたこともあり、先述したような夜遅くまで働くことが多くなっていた。そして、入社8年目の時、会社の業績不振をきっかけに周りから後押しを受け起業することを決意した。その後、新商品などの開発をメインとしたコンサルティング会社「ENERGIZE-GROUP」を創設し、現在12年目となるが、会社の業績は良好だ。
生嶋さんが経営する上で大事にしているのは、生産性と、社会への貢献度。そして社員の働き甲斐の3つの軸だ。
「常にフォア・ザ・チームであることを大切に考えています。自分たちの会社もですが、お客様のことも仲間として考え行動する。『クライアントの責任者よりも、（自分自身がその会社の）責任者になれ』と社員にはよく言いますが、相手のことをよく知ることが大事だと思うんです」
チームで結果を残すことに喜びを感じてコンサルティング業界へ進んだ生嶋さんにとって、フォア・ザ・チームのフレーズはまさにぴったりの言葉。実はこの言葉は高校時代の恩師から教わったという。
「チームのために何が出来るか。当時、姫路東の監督から言われたことを今も社員には伝えていますが、コンサルティングは、1人がすごく仕事が出来れば、その1人で完結しても良い風潮があるんです。ですが、それでは会社として何でやっているのかわからない」
コンサルティングの世界だと、ホームランを狙うような4番打者のような社員が多い。しかしそれではチーム（会社）として勝てないと生嶋さんは考え、1人1人が違う役割をもって、チーム（会社）全体で結果を出す。それを目指して会社を経営している。
[page_break:野球で学んだことは1つも無駄にならない]野球で学んだことは1つも無駄にならない
生嶋健太さん
高校・大学を通じて、経営者としての基盤を固めてきた生嶋さん。今年で創業12年目の年となるが、「まだ道半ばですね」と語る。
「自分が壁にぶつかったときに、過去を振り返って、今この瞬間が一番勉強しているのか？楽しんでいるのか？ということを一番大事にしています。
やはり勉強をして高いレベルに行けばいくほど、求められることも高くなり、仕事は難しくなります。仕事内容もクライアントによって変わりますので、難しいですし奥が深いです」
努力することを苦に思わないという生嶋さんの学生時代の頃からの人生観が垣間見えた。そんな生嶋さんが高校時代の自分に送りたいメッセージとは？
「努力はしないといけないですが、練習に対して『やらないといけない』という義務感がありました。それも良いとは思いますが、その練習を通じて何が出来るようになるのか。1つ1つ意味付けをして楽しんでやりなよと言いたいですね」
最後に頑張る球児たちに向けてメッセージをいただいた。
「野球で学んだことは1つも無駄にならないということですかね。野球で学んだことが沢山ある、と簡単な言葉では説明しきれないほど全てを学びました。今はコロナで目標を見失うこともあると思いますが、チームや自分、野球と向き合ったことは無駄にはならないので、その経験を活かしてビジネスでも活躍してほしいです」
まもなく12年目を迎えようとしているENERGIZE-GROUPの代表として、今後もフォア・ザ・チームの精神で仲間とともに飛躍する姿を期待せずにはいられない。
（取材／田中 裕毅）
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