Column

05年駒大苫小牧の主将・林裕也さん 甲子園優勝の秘話とコロナ禍を戦った球児への思い

2021.08.31

05年駒大苫小牧の主将・林裕也さん 甲子園優勝の秘話とコロナ禍を戦った球児への思い | 高校野球ドットコム
駒澤大・林裕也コーチ

 第103回全国高等学校選手権大会は、智辯和歌山の優勝で幕を閉じた。
 毎年、甲子園では多くの名場面が生まれるが、2003年~2006年の4年間で度々名勝負を繰り広げた高校と言えば北海道・駒大苫小牧の名前が挙がる。

 2005年に主将としてチームを夏の甲子園連覇に導いた林 裕也さんは、2004年の第86回選手権大会にも「7番・二塁」として出場し優勝に貢献。準々決勝の横浜戦では、好投手・涌井 秀章投手(現東北楽天)からサイクル安打を放つなど活躍見せ、甲子園に大きなインパクトを残した。
 高校卒業後は、駒澤大で4年間、社会人野球・東芝で9年間現役を続け、2019年からは駒澤大硬式野球部のコーチを務める林さん。甲子園大会を振り返っていただき、またコロナ禍を戦った球児達への思いも伺った。

不調でも良いイメージを持っていた横浜戦

 駒大苫小牧への進学は、練習見学に行き即決だったと振り返る林さん。
 当時は駒大岩見沢の方が力を持っている印象だったが、香田誉士史監督(現西部ガス監督)の下、妥協を許さず徹底的に話し合うチームの姿勢に惹かれて入学を決めた。

「色んな高校を見学しましたが、駒大苫小牧は練習の雰囲気が全然違っていました。両親と一緒に見学に行ったのですが、すぐにここに行きたいって言ったのを覚えてます。自分の中では一目惚れでした。いざ入学した後は、こんなところまで意識しないといけないのかという感じで、今のコーチとしての土台にもなっています」

 日々の練習に必死に食らいついていき、1年秋にレギュラーを掴んだ林さん。選抜甲子園出場こそ逃したが、夏の選手権南北海道大会を制して、第86回選手権大会出場を掴んだ。
 だが南北海道大会では当初は3番打者に座っていたが、徐々に調子を落とし甲子園を懸けた決勝戦では7番打者に降格。甲子園でもそのまま7番に座り続け、準々決勝の横浜戦までは本来の打撃を発揮することが出来なかった。

「2004年は、チームとして甲子園での歴代最高打率(.448)も残しましたが、僕を含めて予選では本当に打線が機能しなくて、4番の原田 勝也さんに助けてもらって甲子園に出場できた感じでした。甲子園に入った辺りからみんな調子が上がっていきましたが、僕自身は不調のまま。大会期間中の練習でも、フリーバッティングをやっている後ろで、ずっと監督に素振りをさせられていた記憶があります」

 それでも林さんは、準々決勝の横浜戦には良いイメージを持って試合に臨めたと振り返る。
 それまでの2試合は、変則投手を相手に本来の打撃をさせてもらえなかったが、横浜のエース・涌井 秀章投手は右の本格派。実際に打席に立つと球威、変化球、制球、すべてにおいてトップクラスの投手だったが、変則投手のような苦手意識はなかったと明かす。

 結果、林さんはサイクル安打を達成して、大ブレイクを果たすのであった。

「今でもたまに動画を見ますが、打ち方も良かったなと思います。あとはやっぱり甲子園の独特の雰囲気。活躍すればするほど周りが乗ってくる感じで、球場全体を味方につけてすごい力を発揮出来たなと思っています。自分の中でどんどん動きも良くなっていき、5打席すべて次も打てるだろうなと感じていました」

[page_break:甲子園関係なく、高校野球は忘れられない大きな財産]

甲子園関係なく、高校野球は忘れられない大きな財産

 横浜を撃破して勢いづいた駒大苫小牧は、その後も準決勝、決勝と破竹の勢いで勝ち抜いていき、見事北海道勢初の全国制覇を達成。そして翌年の2005年にも、林さんは主将として第87回選手権大会に出場し夏連覇を果たす。

 2度の全国制覇を経験し、林さんは日本一を掴むためには「運」と「実力」の両方を兼ね備えたチームになる必要があると振り返る。

「今思い出してもすごく勢いがあったので、運や雰囲気を味方につけることはすごく大事なことだと思います。でも、もちろんそれだけでは絶対優勝できないので、チーム一人ひとりの力や技術は必要です。2004年は計算できる投手が二人いて、打線も足の速い選手が揃っていました。僕の時の2005年も田中 将大(現楽天)という軸がいて、もちろんチームとしてもしっかりとした練習量がありました。色んな要素が上手く噛み合っての優勝でしたが、決してたまたまでは無いと思っています」

 現在、林さんは母校・駒澤大学のコーチとして指導にあたっており、大学野球の頂点を目指して奮闘中だ。毎年、高校野球をやり切った1年生を迎え入れることもあり、コロナ禍を生きた今年の大学1年生、そして高校3年生には特別な思いを持っている。

「甲子園で優勝した僕が言っても説得力が無いかもしれませんが、甲子園のチャンスが無い、練習が全くできない高校野球でも、ずっと一緒にやってきた仲間や時間は一生残るものです。やっぱり高校野球の3年間は、甲子園関係なく忘れられない大きな財産なので、一生持ち続けて欲しいなと思いますし、もし悔しさが残っている選手は大学野球にぶつけて欲しいと思います。今年の1年生にも、悔しさを持って入学した選手がたくさんいます。僕自身も鬱憤を晴らしたい選手のお手伝いをできればと思っているので、是非チャレンジして欲しいですね」

 そんな林さんも、現在は9月13日から開幕する東都大学野球秋季リーグ戦に向けてチームの調整を続けており、目下挑戦中の身だ。林さんのこれからの活躍にも注目していきたい。

(取材=栗崎 祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.25

筑波大新入生に花巻東、國學院栃木、北陸の甲子園組! 進学校からも多数入部!

2024.04.24

【佐賀】敬徳と有田工がNHK杯出場を決める<春季地区大会>

2024.04.24

【福島】田村、日大東北、只見、福島が初戦を突破<春季県大会支部予選>

2024.04.24

【春季四国大会逸材紹介・香川編】高松商に「シン・浅野翔吾」が!尽誠学園は技巧派2年生右腕がチームの命運握る

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.21

【神奈川春季大会】慶応義塾が快勝でベスト8入り! 敗れた川崎総合科学も創部初シード権獲得で実りのある春に

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!