Column

史上6校目となった春夏連覇を成し遂げた島袋洋奨さん(興南出身)が語った偉業達成の裏側

2020.07.06

 今から10年前の2010年、史上6校目となる甲子園春夏連覇を成し遂げた興南高校。その押しも押されぬ大エースが島袋洋奨氏だ。2010年の選抜高等学校野球大会、九州地区高校野球大会、全国高等学校野球選手権沖縄大会、全国高等学校野球選手権大会、国民体育大会高等学校野球大会硬式の部(雨により2回戦第3、第4試合以降の試合が中止)の5つの大会で無敗のまま終えた興南高校と島袋洋奨氏。その本人から、甲子園での話を伺った。

春のセンバツについて

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インタビューに答える島袋 洋奨さん

 島袋 洋奨氏「一回戦の関西戦に勝つことに対しては、非常に力が漲っていましたね。」

 前年2009年にも春夏と連続して甲子園出場していた島袋洋奨氏。9回まで富山商をゼロ封に抑え19奪三振をマークしても、7回までに3点を奪い、明豊今宮健太(ソフトバンク)をマウンドから引きずり下ろしても、勝利はついてこなかった。

 島袋 洋奨氏「勝っていくに連れてチームの調子も上がってきて。特段苦しくは無かったのですが、敢えて言えばやはり春の決勝戦ですかね」

 興南高校初優勝が懸かった決勝。対日大三高戦は、6回を終えて5対5の同点。緊迫した展開だが、7回以降の島袋洋奨氏は別人のように日大三高打線を抑えていく。後半6イニングで強打の日大三高に許したヒットは僅か1本。延長12回に2点を奪い、見事センバツ初優勝を成し遂げた。

 島袋洋奨氏「一年前の春と夏の2試合で、僕は終盤に失点を重ねていた。帝京高校戦、大垣日大戦と違い緊迫する展開になったからこそ、それまでやってきたことが出るぞと」

 終盤での不甲斐なさを自分で感じていたら島袋洋奨氏。それじゃ何が自分に出来るだろうと思えば思うほど、投げ込みと走り込みしかないじゃないかと行き着いた。

 島袋洋奨氏「そこを重点的にやってかきた成果が、決勝の後半のピッチングに出たのかなとは思います」

[page_break:夏の沖縄大会決勝vs宮國椋丞]

夏の沖縄大会決勝vs宮國椋丞

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高校時代の宮國椋丞(現・巨人)と島袋洋奨さん

 1回戦から順当に勝ち上がった興南高校。決勝の相手は因縁の糸満高校だった。

 島袋洋奨氏「一年生大会の決勝で負けて以来の対戦でしたね」

 1点をリードした興南高校だったが、糸満島袋陽平に一発を見舞われる。

 島袋洋奨氏「沖縄尚学とは違う雰囲気を持つチーム。糸満とか浦添商とかは、乗ってくると怖いなと思っていました」

 本塁打を放った相手の島袋(陽平)は、宮國椋丞(巨人)の女房役。ランナーが一塁にいた場面でも刺されるなど、流れが糸満へ傾きつつある中、センバツ、九州と頂点を極め険しい道を制してきた興南ナインは落ち着いていた。

 その高校生らしくない落ち着き払った様子が逆に、糸満ナインに縛りとなってのしかかっていたのだろうか。相手エラーをきっかけに欲しかった追加点を奪った興南打線が点火。7回裏に我如古盛次の満塁弾が飛び出すなど大量8得点。全国ナンバーワンのチームはやはり強かった。

 島袋洋奨氏「日頃から張り詰めた練習をしてきたからこそ、決勝という大事な舞台でも緊張しないでやれた。」

 夏の甲子園。順当に来た興南高校だったが、準決勝の報徳学園戦では思いきりビハインドをもらってしまう。ここでは我喜屋優監督に登場してもらおう。

 我喜屋優監督「報徳学園戦のビハインドは確かに重いなど感じました。ですがベンチを見ると僕が何かを言う前に、我如古を中心に彼らでミーティングしていた。失点で洋奨が変に気負い過ぎないような言葉掛けを見ていて、あ、これは行けるなと感じた」

 もうここまで来たら、俺ら十分にやったじゃん。みたいなことは興南ベンチに一切無かった。洋奨、点は俺らが返してやるから任せとけ。そのような言葉が、島袋洋奨氏の後半のナイスピッチングに繋がる。打線も約束通り逆転に成功。決勝は13対1の大勝。見事春夏連覇を果たしたのだった。

今回はここまで。次回はプロ入り後のエピソード、そして現在の球児たちに向けてのメッセージをもらった。次回もお楽しみに!

(取材=當山 雅通

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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