報徳学園に恋焦がれた幼少期を回顧 金村義明氏【前編】
10月18日(金)からスタートした新番組「プロ野球 そこそこ昔ばなし」(Amazon Prime Video)。MCのナイツと進行役の吉田明世アナが、1980年代から1990年代のプロ野球界の裏側にスポットを当て、元プロ野球選手のゲストと共に現役時代の裏話を紹介する人気上昇中のトークバラエティだ。
現在配信されている第5話 「ピッチャーも色々あるよね!のお話」 では、元阪神の速球派投手だった藪恵壹さんとスローカーブを駆使して活躍した星野伸之さんをゲストに招き、それぞれの視点からの裏話が面白おかしく繰り広げられている。
また、近鉄バファローズや中日ドラゴンズなどでも活躍した金村義明氏もレギュラーゲストとして毎回出演し、今では考えられないような現役時代の秘話を披露する。
そして今回は、そんな金村氏に独占インタビューをさせていただき、幼少期から全国優勝を果たした高校時代を振り返っていただいた。
裕福でない中でも行かせてもらった報徳学園
近鉄バファローズなどで活躍した金村義明氏
僕は中学から報徳学園に通わせてもらいましたが、プロ野球よりも報徳への憧れが強かったんです。小学校4年のときに報徳学園が選抜甲子園で優勝したのを見て、それで中学から報徳に行きたいと思うようになりました。
それで母親から、宝塚から武庫川を下りていったら西宮に報徳学園があると教えてもらって、毎日のように自転車で練習を見に行くようになりました。
また当時西宮には、阪急ブレーブスというプロ野球チームがありました。自転車で報徳の練習を見に行って、その後阪急ブレーブスの試合を見て、選手にもサインをもらったりしてどんどん野球を好きになっていきましたね。
そういう幼少時代を送っていたら、自然と中学から報徳学園に入りたいと思うようになりました。中学部は高校のグランドの横で練習してましたしね。
中学から報徳に入れてくれと両親に言いましたが、報徳は私学でね。ウチはそんな裕福でもなかったので、最初は親父も野球は辞めて公立の中学に行って就職しろと言っていました。
ですが、最終的には母親が内職しながら清掃のパートにも出て、報徳学園に行かせていただけることになりました。そこから報徳に6年間通うことになります。
憧れの学校に入れるのはやっぱり嬉しかったですね。
ただいざ入学すると、これまで真剣に少年野球は強いところでやったことなかったし、近所の子どもを集めて作ったようなチームだったので、始めは大変でしたね。
中学の時は、高校野球の先輩を見よう見まねで何とかやっていき、またアルバイトにもいきながら頑張りましたね。
母親の涙を見てエースになることを決意
金村義明氏
そして高校に入学すると、さらに大変な生活が待っていました。
高校にはエスカレーターで入ることが出来たのですが、報徳学園の野球部にはリトルシニアやボーイズからもたくさん選手が入ってきて、最初は160人ぐらい1年生がいるんですよ。部員を全部合せるともう200人ぐらいいますよね。もちろん中学校からエースで四番だった奴らはいっぱいいて、ピッチャーだけでも20人以上もいました。
ただそれが半年くらい経つと人数が半分くらいに減り、そして1年くらい経つともうほとんどの奴はいなくなります。練習がキツイのもありましたが、やっぱり周りも上手いのでみんな諦めていくんです。
ですが、僕は両親に無理を言って野球をやらせてもらったんで、辞める訳にはいきません。元々、背番号くらいはもらえるだろうと甘く考えていたタイプだったので、必死に練習についていきました。
その甲斐もあってか、2年生からは試合にも出るようになって、背番号も18番をもらえました。背番号10番や11番をもらった選手よりも、自分のほうが良いだろうとさえ思っていたくらいです。
ただ、その時に自分が野球に対する思いがより強くなる出来事が起きました。
僕が背番号をもらって初めて母親が試合を見に来たのですが、その時に父兄会の人たちから嫌味を言われて泣かされて家に帰ってきました。
そこから変わっていきましたね。
俺の母親をこんな泣かしやがって。俺が押しも押されぬエースになるまで、もう来なくていいよと。次に来るときはそいつらが座布団を敷いて、「エースのお母さんここに座ってください」となるまで見に来なくていいと母親に言いました。
そこから野球に対する気持ちは他の何倍も強くなっていたかな。
そこから色んな練習して球も速くなりましたし、2年生から主力にもなれました。2年生の時は甲子園には出れませんでしたが、3年生になってからは押しも押されぬエースになりました。チームの中でもかけ離れた存在になるまで力をつけることができたので、オカンいつでも来いよと。
こうして報徳学園のエースになって、選抜甲子園にも出場できました。
前編はここまで。後編では3年時の全国優勝までの道のりに迫ります。後編もお楽しみ。
(取材=栗崎 祐太朗)