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神宮第二と別れを告げた2019年 東京都の高校野球界で話題となった3つの出来事

2019.12.27

1.聖地・神宮第二球場とのお別れ

神宮第二と別れを告げた2019年 東京都の高校野球界で話題となった3つの出来事 | 高校野球ドットコム
帝京と日大三が神宮第二のラストゲームに登場

 一塁側にはゴルフ練習場があり、高いネットに囲まれた不思議な空間。外野フライが本塁打になるような狭さ。人工芝は滑りやすく、しかも劣化してかなりはげている。
 それでも1961年に完成して以来、東京の高校野球の主要舞台として、多くの高校野球ファンに愛されてきた[stadium]神宮第二球場[/stadium]が、秋季都大会の準々決勝を最後に、野球場としての役割を終えることになった。

 最後の試合の日となった11月3日には、早朝から多くのファンが押し寄せ、札止めとなる入場制限がなされた。
 最後の試合となったのは、前田三夫監督率いる帝京と、小倉全由監督率いる日大三の一戦。この球場で幾多の戦いを繰り広げてきた名将同士の一戦は、白熱の好ゲームになった。

 試合後、両ベテラン監督は、感慨深げに握手。この球場に対する熱い思いが伝わってきた。

 この球場の魅力の一つは、観客とグラウンドの近さからくる一体感だ。それに[stadium]神宮球場[/stadium]の隣にあるというロケーションも大きい。[stadium]神宮球場[/stadium]と[stadium]神宮第二球場[/stadium]を掛け持ちする野球ファンやスカウト、記者も少なからずいた。

 この球場は、近年は東京の高校野球しか使っていなかったが、かつて東都大学野球の二部や、明治神宮野球大会でも高校の部を中心に使われ、東京の高校球児だけでなく、星稜高校時代の松井秀喜横浜高校時代の松坂大輔もこの球場でプレーしたことがある。

 彼らの名前が掲げられたこともある手書きのスコアボードも、今となっては骨董品だ。

 この球場が誕生したのは、1964年の東京五輪に向けて、神宮外苑に変化が訪れた時期であった。
 そして来年の東京五輪の後に撤去され、秩父宮ラグビー場が移転することになっている。

 [stadium]神宮第二球場[/stadium]が使えなくなる一方で、収容1300人ほどの規模であった[stadium]都営駒沢球場[/stadium]は、大規模なリニューアル工事を行い、3000人規模の球場になった。さっそくこの秋の大会から使用されたが、来年はフルに活用される見込みだ。

[page_break: 2.平成生まれの監督、初の甲子園出場]

2.平成生まれの監督、初の甲子園出場

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尾崎直輝監督率いる国学院久我山

 元号が平成から令和に変わった今年、東京の高校野球では初めて、平成生まれの監督が甲子園に行った。

 主人公はこの夏、西東京代表として甲子園大会に出場した國學院久我山の尾崎直輝監督だ。
 尾崎監督は1990年生まれの29歳。この夏の甲子園で平成生まれの監督は、飯山の吉池拓弥監督(1990年生まれ)、佐賀北の久保貴大監督(1989年生まれ)、藤蔭の竹下大雅監督(1992年生まれ)の4人しかいない。

 尾崎監督は、國學院大學に在学中からコーチを務め、卒業後の2013年に監督に就任した。最初は帽子をかぶっていると、誰が監督か分からないような感じであったが、次第に監督らしさも備わってきた。

 モットーは「好きこそ物の上手なれ」で、選手の長所を伸ばすことに力を注いだ。
 その一方で、昨年の秋は守備の乱れで自滅したが、その点はしっかり修正し、得意とする打力を最大限に生かし、母校を夏は28年ぶりに甲子園に導いた。

 東京の高校野球界は帝京の前田三夫監督、日大三の小倉全由監督、国士舘の永田昌弘監督ら、60代以上のベテラン監督が競い合っている一方で、若手の監督の存在感が今一つなのも事実だ。

 ベテランとか若手がしのぎを削り合ってこそ、東京の高校野球も活性化する。今回の快挙が、他の若い指導者にも、いい刺激になってほしい。

3.関東一、国体初優勝

神宮第二と別れを告げた2019年 東京都の高校野球界で話題となった3つの出来事 | 高校野球ドットコム
国体初優勝を決めた関東一の選手たち

 関東一がこの秋、茨城県で開催された国民体育大会の高校野球(硬式)で初優勝を果たした。
 東京勢の優勝は、地元・東京開催の2013年に修徳が、大阪桐蔭と決勝戦で引き分け、両校優勝になって以来。単独優勝は、2011年の日大三以来となる。

 この大会、初戦で土屋大和が春夏の甲子園で4強の明石商(兵庫)に完封して勢いに乗り、仙台育英(宮城)、長崎海星(長崎)にも快勝して頂点に立った。
 関東一にとっても、44歳の米澤貴光監督にとっても、初の全国大会のタイトルになる。

 昨年の秋季都大会では国士舘に完敗するなど、新チーム結成時はまだ不安定さがあった。しかし、球威がありながらも投球にムラがあった谷幸之助が大崩れはしなくなり、俊足の大久保翔太の出塁率が上がり、攻撃力がアップすると夏の東東京大会を制し、甲子園でも準々決勝に進出して国体の出場権を得たうえでの、快挙であった。

 その他、台風19号の影響で河川の氾濫、増水が相次ぎ、多摩川や荒川などの河川敷で練習をしている日体大荏原東京実錦城学園城西大城西など、多くの学校が深刻な被害を受けたことも、重要なニュースだ。

 また都立小山台がこの夏も東東京大会の決勝戦に進出。都立勢が2年連続で決勝戦に進出するのは初めて。

 その一方、春季都大会で優勝した東海大菅生は、実力的には東京ナンバー1であったが、春、夏とも甲子園には行けなかった。
 強肩で俊足・強打の捕手・小山翔暉の甲子園でのプレーを見たかったという声も少なくない。

(文=大島 裕史

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2019年秋の大会 東京都大会 準々決勝 帝京vs日大三
ベスト4の壁を乗り越え、甲子園まで登り詰める!攻守の柱・宮崎恭輔(國學院久我山)
エースとしての自覚や責任を感じた、関東一・土屋大和がコントロールとキレで勝負するわけ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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