現在、全国唯一、春季大会開催となった沖縄県大会。なぜ沖縄大会を開催できたのか?その内情に迫った。後編では野球部関係者の声や、開催でも選手感染者0に成功した感染対策についても深く迫る。

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何故、春季沖縄県大会は全国で唯一、開催出来たのか【前編】

父母、指導者の声


 しかし、少なくとも選手や親には、これまでにない特別な体験や感情が記された。

 あるチームの親は「私は沖縄県高野連には本当に感謝しています。この子たち、こんなに声が出るのかと新しい発見を感じました。野球が出来る。やれることを選手たちが本当に感じていた。」と語った。

 大会があると無いとでは、選手たちのモチベーションが違って当然だろう。ベスト4に進んだあるチームの指導者の話だ。

 「他の都道府県では大会の中止が相次いでいる。幸い、僕らは大会で試合が出来る。これは素晴らしいことだ。高野連の先生方が、君たちプレイヤーのために多くの気苦労を背負って開催してくれた。だから、野球が出来ることに感謝して毎試合、全力でプレーしよう!」と、選手たちと話してきました。

 また、親やファン、OB、地域の方々から「コロナウイルスで暗いニュースばかりの中、元気を頂いています。ありがとう」との言葉をチームは頂いた。キャプテンをはじめ、野球が出来る喜びを体全体で表現していった。

 野球が出来る喜びといえば、連合チームもそうだ。

 普段は9人に満たない部活。試合なんて出来ない。それが大会が開催されたことで、開邦南部農林、辺土名、真和志の4校の生徒が一つのチームとなった。野球が出来る喜びに満たされた彼らは、当初誰もが予想しなかった秋の準優勝校を破り堂々のベスト16入りを果たした。

 沖縄県高校野球春季大会の開催は、指導者、選手、親らに対しプラスの要素をたくさん生み出した。マイナスの要素は皆無に近い。他の都道府県の方々が、コロナウイルスに感染してしまう可能性がある中での開催はすべきでは無かったと、沖縄県を思い遣って下さることは本当にありがたい。

用意周到の上で臨んだ開催



中部商の仲程(沖縄尚学戦より)

 しかし、開催したのは決して無謀無策ではなかったことを信じてもらいたい。

 試合前に熱がないかなどのチェックを行うのは当然。試合前のシートノックは排除。グラウンド整備中の、一塁側と三塁側ベンチ前と、それぞれの外野でノックをしてのウォームアップを勧めた。グラウンド内のボールボーイも、試合をする両校の生徒たちで固め、出来る限り外部が関わらない形でやった。

 大御所の学校には、生徒たちを内野スタンドに配置することを許した。しかし、声援を送ることはせず、じっと試合を見学するようにさせ、さらに一人一人の距離を取るようにさせた。

 試合終了後の校歌斉唱も無くし、選手たちを出来る限り早く学校に、家に返すようにしたし、古くから沖縄県の高校野球の礎を築いてきた元会長や元理事長など顧問の先生方にも、この大会の観覧を遠慮して頂いた。

 コロナウイルスは、人の手からの接触感染、口から出るツバなどからの飛沫感染が大と聞く。考えられる限りの手を打った用意周到なスタジアムの中は、選手たちにとって安全な場所となった。大会を振り返って、未だに選手たちに一人の感染者も出ないのは決して偶然では無い。

 沖縄県高等学校野球連盟のその姿を、子供たちを通して見ていた親だからこそ、「もし感染したら誰が責任を取るのか!」などという人はいなかった。子供たちの笑顔を直で見ることは叶わなかった親やファンだが、テレビや新聞、ネット(高校野球ドットコム)などから、子供たちの野球が出来る喜びを感じることが出来た。また、家に帰ってきた子供の表情から感じとることが出来た。

 大会を開催したことで、多くの笑顔と今後貴重な体験となっていくだろう思いを、子供たちは得たのだ。