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2020年の沖縄県高校野球を占う 気になる名将四天王の采配と勢力図を予想

2020.01.05

 2019年。新チームがスタートした沖縄県高校野球は新人大会、秋季大会、そして一年生大会が終了し、しばし冬のトレーニングに入る。どのチームも課題を克服しつつ長所を伸ばしながら、春の県大会そして最後の夏を見据えていくが、ズバリ2020年の沖縄県高校野球界はどのチームを中心にし、どのように動いていくのかを予想してみようと思う。

全国各地の名将たち

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沖縄県高校野球の名将の一人である興南の我喜屋優監督

 次の言葉を言い切ることは、かなり暴言的であると僕も認めるがこのテーマではあえて言おう。
 選手たちが高校野球で、目標である甲子園出場を果たせるかどうかは、指導者による影響が大きいと断言して良いだろう。

 福島県で夏13連覇中の聖光学院の斎藤監督。宮城県出身で、仙台育英高校を二度の準優勝に導いた佐々木監督(現学法石川高校)など。

 栃木県作新学院の小針監督。埼玉県は浦和学院森監督と、花咲徳栄岩井監督。東京都は日大三高小倉監督や、帝京高校前田監督、二松学舎大附市原監督など。

 京都府は龍谷大平安の原田監督。大阪府は大阪桐蔭西谷監督と履正社岡田監督。一線から退いたが、横浜高校の渡辺監督や智辯和歌山の高嶋監督。広島県は広島広陵高校中井監督。高知県だと明徳義塾馬渕監督。

 また、熊本の秀岳館の監督に就任して甲子園でベスト4に3度導き、県岐阜商の監督になってすぐに、来春の選抜高等学校野球大会出場をほぼ確定させた鍛冶舎監督などなど。
 他にも数多くいる名将と言われる監督さんは、甲子園へ出場する確率も高い。

沖縄を代表する四天王

 そう考えるとここ沖縄でも名将が率いる高校が、甲子園へ一番近いと言えるだろう。沖縄県を代表する名将を挙げるとしたら次の4人だ。

 2010年、史上6校目の甲子園春夏連覇を果たした興南高校我喜屋優監督。
 選手として、また監督として甲子園で優勝。県勢唯一の明治神宮大会を制した沖縄尚学比嘉公也監督。
 浦添商で甲子園初出場ながらベスト4進出を果たした神谷嘉宗監督(現美里工業高校監督)。
 中部商糸満で4度甲子園出場している上原忠監督(現沖縄水産高校監督)。

 僕は、この4人を沖縄県高校野球指導者四天王と呼んでいる。(現役の監督)
 ここで、我喜屋監督が興南高校の監督に就任した2007年以降の、夏の選手権沖縄大会の決勝戦に進出した2校をまとめてみた。

※我=我喜屋監督、比=比嘉監督、神=神谷監督、上=上原監督
2007年 興南2-0浦添商(我・神)
2008年 浦添商5-2沖縄尚学(神・比)
2009年 興南4-2中部商(我)
2010年 興南9-1糸満(我・上)
2011年 糸満2-1中部商(上)
2012年 浦添商8-5沖縄尚学(比)
2013年 沖縄尚学5-2美里工(比・神)
2014年 沖縄尚学6-1糸満(比・上)
2015年 興南4-3糸満(我・上)
2016年 嘉手納11-3美里工(神)
2017年 興南15-1美来工科(我)
2018年 興南5-0糸満(我)
2019年 沖縄尚学8-7興南(比・我)

 どうだろう。13年間×2校で述べ26校が決勝に進出しているが、20度は四天王が率いる高校の名前が出ているのがお分かり頂けると思う。

 しかも、毎年必ず、この4人の監督さんのいずれかが決勝に残っており且つ、11度の優勝を飾っている。四天王以外の監督さんが甲子園出場を決めたのは僅か2度(2012年、2016年)のみだ。
 さらに、今年の決勝を含む13年間で、半分以上の7度は四天王同士の対決となっている。

 その中で7度決勝に進み、今年沖縄尚学に負けるまで夏の決勝負け知らずだったのが興南高校の我喜屋監督。
 その我喜屋監督に土をつけた沖縄尚学比嘉監督は、2013年、14年の連覇と今年の優勝を始め、3度の優勝5度の決勝進出。両者とも私学の監督ということもあり安定した成績を残している。

 方や早くて5〜6年、長くても7年のスパンで転勤を強いられる沖縄県立の先生である神谷監督と上原監督が、私学の両監督に引けを取らない数字を残しているのは、ある意味圧巻でもある。(神谷監督、上原監督ともに決勝進出が4度ずつ)
 もしかしたら来年の夏も、この4人が率いる興南高校、沖縄尚学高校、美里工業高校、沖縄水産高校のうち1校、もしくは2校が決勝へ進出しているのかも知れない。

[page_break:四天王のチーム成績と投打の柱]

四天王のチーム成績と投打の柱

2020年の沖縄県高校野球を占う 気になる名将四天王の采配と勢力図を予想 | 高校野球ドットコム
2020年の沖縄の注目投手の一人である古波蔵悠悟(沖縄水産)

 では四天王が率いた高校の、新チーム以降の2019年はどうだったのか。

興南高校(新人中央大会ベスト8、秋ベスト16、一年生中央大会優勝)
沖縄尚学高校(新人中央大会ベスト8、秋優勝、一年生中央大会準優勝)
美里工業高校(新人中央大会ベスト4、秋ベスト8)
沖縄水産高校(新人中央大会優勝、秋ベスト8)
※美里工と沖縄水産の一年生大会は、中央大会出場校と僅差で地区予選敗退

 沖縄尚学高校には、甲子園でもマウンドに上がった永山がおり、秋の県大会の被打率は驚異の1割以下だった。且つ、永山に劣らない大湾は防御率0.87、奪三振率は9.61。この二枚看板が盤石だ。

 沖縄水産高校にも、一つ上の國吉らと遜色ないピッチングを見せた左腕古波蔵がいる。
 美里工業高校にも、一年生から経験を積む剛腕上間がおり、この3校には計算出来るピッチャーが新チームになってもいた。

 一方、宮城大弥を筆頭に、又吉、西江と三人の三年生で回してきた興南高校が、新チームになって柱となる投手に苦労していた。秋の県大会では沖縄水産高校に10失点し、屈辱のコールド負けを喫したほどだ。
 しかし一年生中央大会で山城京平が台頭。大会三連覇を狙った沖縄尚学打線を5安打7奪三振で完封した。2020年は、三年生となる上記のライバル校エースたちに対し、興南高校が二年生となる山城で挑むのかも知れない。

 打線に目を向けると、沖縄尚学高校には當銘、島袋と與谷、崔と、強力な打撃力を備える上位四枚が強力。
 美里工業高校には富島と打も優れる上間。興南高校には黄と西里という、前チームから主力を張ってきた打の柱が新チーム後もクリーンアップに座る。

 一方、殆どのオーダーを三年生で組んできた沖縄水産高校だったが、蓋を開けてみると新チームの打力も高く、内原と古波蔵を中心にライバル校に引けを取らない。

2020活躍が楽しみなチームは

 ここまで四天王のチームだけを述べてきたが、ここで他校にも目を移してみよう。

 秋で旋風を起こした準優勝の八重山農林高校は、投打で高いレベルを持つ。12名という選手層の薄さが懸念されるが、体力がつき、新一年生が多く入ってくれたら最後の夏、夢の甲子園も可能だろう。

 ベスト4の具志川高校は、投手陣を中心に守りとチームワークで秀逸。冬に打撃力をどこまで上げられるか。

 同じベスト4の嘉手納高校や、県21世紀枠選出の本部高校と、同じベスト8の宜野湾高校の3校は、四天王の高校に引けを取らない個々の能力や強力な打線が魅力だ。

 総括すると、現段階で他校をリードしているのは、沖縄尚学高校、興南高校、美里工業高校、沖縄水産高校、八重山農林高校、具志川高校、嘉手納高校、本部高校、宜野湾高校の9校ということになる。

 ここに普天間高校、具志川商業高校、中部農林高校、知念高校、八重山高校、沖縄工業高校、糸満高校、那覇工業高校など、秋に良いゲームを見せたチームがどれだけレベルアップして上位9校に食い込んで来れるか。

 例年仕上がりを見せてくる首里高校、那覇高校、コザ高校、美来工科高校、宜野座高校などの古豪や商業高校の雄である中部商浦添商も含め、今から来年の春が待ち遠しい。

(文=當山 雅通

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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