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日本は佐々木朗希をロースターから外す選択肢もあった?予備選手の必要性を考える

2019.09.10

 今回の代表選手の目玉といえば、佐々木朗希大船渡)だった。NPB・MLBのスカウトが注目する163キロ右腕は世界相手にどこまで通用するのか、注目が集まった。

 しかし、8月26日の大学日本代表の試合前にマメを作り、大事を取って1回で降板。その後、リハビリを重ねるも、韓国戦で血豆が再発。1回無失点でマウンドを降り、これが佐々木の唯一のマウンドとなった。佐々木にとっても、日本代表にとっても痛恨の結果だろう。

国際大会まで見据えたメンバーだったのか

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韓国戦で先発のマウンドに上がった佐々木朗希

 今回の過程を追っていく中でまず考えたのは、佐々木朗希は8月26日の時点でロースターから外す選択肢もあったということだ。国際大会に詳しい記者の方に聞いたら、「他国だったらロースター抹消だね」と答える。

 直前で怪我を負った選手をロースターから外す事を考えると、今後は補欠選手を考えないといけない。今回、佐々木が負ったマメは肩、ひじに比べれば軽い。ただ、その治療期間が大会と丸被りしてしまえば、投げることは不可能。プロ野球のようにローテーションを1回飛ばせばいいという話でもないのだ。

 佐々木クラスの投手を外すのは、大きな決断だと思うが、ほかの国ではあっさりと変更する。準優勝のアメリカは左腕エースとして期待されていたネイト・サビ―ノが故障のため、ロースター外。優勝したチャイニーズタイペイもギリギリでロースター発表。韓国は7月の段階で発表を行い、1か月近くチームを熟成し、故障者に備えて予備エントリーも行っていた。

 しかし日本の場合は8月20日~21日前後で代表選手18名ないし20名を発表し、その代表選手で活動する。しかしその中で故障選手、不調の選手が出てくるのはつきもの。今回、佐々木だけではなく、奥川恭伸は疲労のため、二次ラウンドまで投げることができなかった。そのため一次ラウンドは7人で回す形となり、結果的に西純矢宮城大弥飯塚 脩人の3人に負担をかける形になったのである。

 この問題、今回だけに限らず、2012年のワールドカップでは、濱田達郎愛工大名電-中日)が肩の故障で投げられないことが発覚。当時、代表監督だった小倉監督(日大三)は選考に関わっておらず、現場側はやりくりにかなり苦労したと聞く。

 ただ日本でも代替選手が代表チームに入った実例がある。昨年12月にキューバ遠征を行った東京代表は11月5日のセレクション後の翌日に代表選手20名・予備選手3名を発表。その予備選手は代表選手の故障に備えてのもので、代表選手に選ばれていた黒川麟太郎(国士館)が故障のため外れて、代わりに入った渋谷 嘉人関東一)が代表入り。渋谷はこの経験で大きく成長し、夏の甲子園の活躍につなげた。

 ロースターの変更のメリットは2つあり、戦力を補強できることと、代替選手のチャンスを与え、成長のきっかけを作ることができること。今回、佐々木を外す場合、補強ポイントを挙げるとなれば、左腕投手だった。今回は投手であれば、左腕投手の先発は宮城しかいなかったことが、やりくりに苦労した。

 来年以降、同じミスを繰り返さないためには今まで行っている8月20日以降の国内合宿は、代表選手ではなく、30名前後の候補者を集め、対外試合を重ねる中で、現場スタッフが期日までに最終ロースターを決める方針が一番ベターではないだろうか。候補者に対しては公にして、さらにそれぞれの選手に課題を与える方針を伝えることも大切だ。

 今までの選考は選んだ側の顔が見えなかった。方針も明確でもなかった。しかし来年は、候補者を集めてから現場側で選考、方針まで明確に責任をもたせ、チームを作ってもらいたい。

 今、世界のレベルはアメリカ、カナダの北米、台湾、韓国のアジア、キューバなどの中南米に限らず、オセアニア、ヨーロッパの野球のレベルも高まっている。対策次第ではオープニングラウンド敗退も覚悟しなければならない。

 だからこそ今から危機感を持って準備することを願いたい。

(記事=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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