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エポックメイク・星稜!昭和~平成と劇的な敗退を重ねてきた星稜が令和最初の夏に生むストーリーは?

2019.08.21

 星稜が初めて甲子園に姿を現したのは、1972(昭和47)年夏である。この時は初戦で北見工に勝利して、2回戦で準優勝する柳井に敗れている。その4年後、小松辰雄投手(中日)を擁してベスト4に進出するのだが、これが最初に星稜が全国的に注目された時と言っていいであろう。当時、世に出回り始めたスピードガンの計測値が145キロとか150キロと言われて、剛腕小松は「スピードガンの申し子」などともてはやされた。そして、敗れてなお小松投手の存在とともに星稜のインパクトは強烈だった。

 その後、甲子園の常連校となっていく星稜だが、次にスポットを浴びたのは1974(昭和54)年夏となる。3回戦でこの年春夏連覇を狙う箕島との、あの伝説の試合である。1対1のまま延長にもつれ込んでいくが、先攻の星稜は延長に入って2度リードするものの、ことごとくその裏に本塁打で追いつかれる。しかも、16回には相手打者の一邪飛で万事休す、星稜勝利かと思われたが、一塁手が芝生の切れ目に躓いて転倒。その直後に本塁打が飛び出すというものだった。その挙句に、引き分け再試合寸前の延長18回にサヨナラ負け。

 星稜の大健闘は称えられたとともに、その試合そのもののドラマ性も含めて今でも語り継がれている好試合となっている。こうして、非運の星稜が作られていった。

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第101回全国高等学校野球選手権大会

松井秀喜の5打席連続敬遠

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卵色のユニフォームとともにアピール

 その後、星稜は石川県を代表する強豪として甲子園の常連校となっていく。

 時代は昭和から平成に移ると、星稜は平成元年となった1989年夏から4年連続で甲子園出場を果たす。その間に、やがてメジャーで活躍して国民栄誉賞も受賞する松井秀喜も入学してきて、1年生の夏から4番打者として活躍していた。松井が2年生の91年夏には、その年の最大の注目校だった松商学園を準々決勝で下してベスト4に進出している。準決勝では、優勝する大阪桐蔭に敗退するが、星稜の存在感は卵色のユニフォームとともに強烈にアピールした。

 そして松井が3年生となった92年には春夏連続出場を果たす。

 春は開幕試合を引き当てて松井が本塁打2本を放つなどで大勝。さらに星稜の存在感を印象づけた。この年からラッキーゾーンが撤去されたのだが、そうした中で放った松井の2本塁打は強烈な印象だった。その星稜、夏は優勝候補の一角にも名を連ねていた。2回戦は明徳義塾との試合だったが、明徳義塾は松井と勝負せず5打席すべてを敬遠して試合は、星稜は2対3の1点差で敗退した。明徳義塾の秘策だったが、そのことが物議を醸し、甲子園では前代未聞の大騒動となった。

 このことで、さらに星稜は敗れ方で注目されていく存在となった。

 その3年後、山本省吾投手を擁して決勝進出を果たし、「北陸勢初の全国制覇」への期待も高まったが、帝京に1対3で敗退。さらに、敗者として星稜が印象づけられていくことになった。

「強いけれど、どこか球運に恵まれない星稜」
 そんなイメージも根付いてきてしまった。

[page_break:平成最後の夏は史上初となる逆転満塁サヨナラ本塁打を浴びる]

平成最後の夏は史上初となる逆転満塁サヨナラ本塁打を浴びる

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インタビューを受ける奥川恭伸 写真提供:手束仁

 平成最後の夏となった2018年、2年ぶり19回目の出場となった星稜。開幕試合ではレジェンド始球式で招待されていた松井秀喜と偶然にも重なった。松井先輩の見守る中で開幕試合を快勝した星稜だったが2回戦、またしても劇的な敗退が待っていた。済美との試合は最大6点リードしていたが8回に一挙8点を失って逆転される。それでも9回表に追いついて9対9で延長へ。そして、この年から導入されることになったタイブレークとなる13回。先攻の星稜は2点を奪ってあとは守るだけとなった。ところがその裏、史上初となる逆転満塁サヨナラ本塁打を浴びて、またしても劇的に敗れ去った。

 そして2019年春、平成最後の甲子園ということで注目を浴びた大会でエース奥川恭伸投手を擁する星稜は優勝候補の一つに挙げられていた。初戦の相手は屈指の好カードと言われた履正社だ。星稜は奥川投手の3安打完封という快投で勝利。そのまま進撃かと思われたが、2回戦で習志野に屈する。しかも試合後、相手にサイン盗みの行為があったのではないかと抗議したことの事後処理が、却ってマイナスとなり星稜は初めてダークなイメージも背負わされた。

 林和成監督も、その責を負って一時謹慎。監督不在のまま春季北信越大会を戦ったが、それでも優勝した。その後林監督が復帰して、万全の大会で挑んだ第101回選手権大会。準決勝では苦しんだものの順当に石川大会を勝ち上がって2年連続出場を果たす。

 スター不在と言われた大会で最大の注目を浴びながら奥川投手擁する星稜は勝ち進む。3回戦では、注目の一戦となった智辯和歌山との試合で、初の2年連続でタイブレークを経験するチームとなり、今度は本塁打でタイブレークを制した。

 こうした話題を提供しながら、星稜は下馬評通りというか準々決勝、準決勝と快勝しての決勝進出。春の初戦の相手でもある履正社と雌雄を決する。令和最初の夏、昭和~平成とドラマを作り続けた星稜。果たしてどんなドラマを提供してくれるのか、興味深いところである。

(記事=手束 仁

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記録にも記憶にも残る奥川恭伸のピッチング。奥川は伝説の投手になった


済美・矢野が史上初の逆転サヨナラ満塁弾!延長13回で星稜下す!

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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