関東一伝統の「1番センター」を受け継ぐ大久保翔太。大ファインプレーは師匠の教えがあった
関東一の1番センターは毎年、超俊足のセンターがいる。オコエ瑠偉の登場によって、そのポジションは注目されるようになった。
2016年 1番センター 宮本瑛己(東海大札幌キャンパス)
2017年・2018年 1番ライト・センター 斎藤 未来也(中央大)
そしてその1番センターを引き継ぐのが大久保翔太だ。50メートル走の測定では5秒7を記録。6秒0の重政拓夢(2年)も「あの人はマジで速いです。あっという間に駆け抜けます」と語るほど。実際に一塁までの駆け抜けタイムはショートゴロで最速3秒66を記録。その後も3秒7~3.8秒台とまるで左打者のセーフティバントのタイムを大久保は打ってたたき出すのだ。今年の高校生でもナンバーワンのスピードだろう。
取手シニア出身で、関東一の野球に憧れて入学した大久保は歴代の1番センターに負けない選手へ成長を遂げていた。
超俊足でも盗塁と守備が苦手だった
大久保翔太選手(関東一)
「負けましたが、自分の仕事はやり切ったと思いますし、この仲間とやれたので、悔いはないです」と大久保は涙をこらえながら語った。
野球を始めた時から足には自信があった。取手シニア時代から俊足打者として活躍した大久保。取手シニアの先輩で関東一に進んでいることが多かったこと、また関東一の野球に憧れて、入学を決めた。しかし入学当初は高校野球のレベルの高さに苦しんだ。
足には自信がある大久保だが、盗塁、守備が苦手だった。
「入学した時、自分は野球勘というのが全然なくて、失敗が多く、いつも監督さんやコーチの方々に考えてプレーをしろといわれていました」と振り返る。悩む大久保の良きコーチ役となっていたのが1学年上の斎藤だった。
入学して斎藤のスピードぶりに圧倒された大久保。米澤 貴光監督も「歴代の選手のなかでも3本の指に入りますし、大久保より上だと思います」と絶賛する。大久保が斎藤からアドバイスしてもらったことはボールを見ることだ。
「ボールをじっくり見るということ。ボールをしっかりと見ることを重要視してきました」
そうすることで、どういうプレーをすればいいか走塁、守備でも判断しながら動くことができる。今までは勢いに任せてプレーをしていたが、まず足元を見つめて、基本的なことを実践することが大久保の上達につながった。
大ファインプレーに隠されたポジショニングの奥深さ
大久保翔太選手の今後の飛躍に期待したい(関東一)
履正社戦では二度の大飛球を捕球。特に5回裏のフェンス際の捕球は観客を沸かせた。このプレーはこれまでの練習の成果を発揮した。
「風もあって打球が伸びていく感じがありましたので、しっかりとスタートが切れて捕球できました」
センターの守備が得意になったのは斎藤のおかげだ。特に学んだのはポジショニングだ。
「斎藤さんが付きっ切りでスタートの切り方、ポジショニングなどを教えてくれました。
ポジショニングで意識していることは、打者のスイング軌道を見てインパクトまでの入り方、またネクストで振っている打者のスイングから傾向がわかるので、それを見極めます。
また投手の調子の良し悪しも考えることも大事です。ボールが浮いているのか、引っ掛かっているのか、低めに決まっているのか。打者のスイングだけではなく、投手の状態や仲間のレフト、ライトの守備範囲などすべてのことが考えられてポジショニングなんだよと斎藤さんから教わって、高校3年夏になって、斎藤さんが言った通りだなと実感しています」
あの守備が成り立つまでにはいろいろな計算尽くして成り立っているのだ。ファインプレーがさらに奥深く感じる。
「本当に斎藤さんには僕にノックをずっと打ってくれたり、いろいろ教えてくれました。斎藤さんのおかげでここまで来れたので感謝しています」
1学年上の師匠に感謝の思いを述べた。そしてこの試合は1回表に盗塁を決めている。サインは出ていたが、無我夢中の思いで走った。
「今まで一番の盗塁だったと思います」と胸を張った。米澤監督も「本当にこの夏で外野守備がさらに上達しました」と評価し、佐久間和人コーチも「あのファインプレーは大きかったですね。あのプレーに関しては斎藤を超えたと思います」と絶賛した。
そして大久保は関東一の3年間について「本当にいろいろなことを学びました。監督さんからは野球のことだけではなく、人間としていろいろなことを学ばさせていただきました」と感謝の思いを述べた。
関東一伝統の1番センターは本人の努力だけではなく、先輩のマンツーマン指導によって成り立っていたのを見ると、胸が熱くなる。
2019年の関東一の「1番センター」であり、高校野球トップのスピードスター・大久保翔太の今後の活躍が見逃せない。
(記事=河嶋 宗一)
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第101回全国高等学校野球選手権大会