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習志野の撃破は必然だった 鶴岡東は「個性的な選手」が揃ったチームだ

2019.08.15

 高松商習志野を破り、初の2勝を達成して勢いにのる鶴岡東習志野を破ったことで俄然と注目度が高くなったが、今年の東北では仙台育英に並ぶ強さを持ったチームだった。

習志野撃破も試合後は冷静な立ち振る舞い

習志野の撃破は必然だった 鶴岡東は「個性的な選手」が揃ったチームだ | 高校野球ドットコム
習志野戦で2打席連続弾を放った丸山蓮 ※写真=共同通信社

 今年の鶴岡東は全国クラスの強さと印象付けたのは今春の東北大会からだろう。夏を占う意味で、ほぼチームも仕上がりの時期に入る6月の東北大会で鶴岡東盛岡大附青森山田を破ってのベスト4は価値がある。

 勢いだけではなく、打線は東北大会で2本塁打を放った丸山蓮、投手陣では影山雄貴池田康平と実力ある選手が揃っており、東北大会後の練習試合では最速148キロ右腕・落合秀市擁する和歌山東と対戦し、落合から7回まで7得点を奪って攻略するなど、その実力は現場の間では知れ渡っていた。

 そして山形大会ではほぼ危なげない試合展開で勝ち上がり、決勝戦の山形中央戦でも11対7で破り、3年ぶりの甲子園出場を果たした。

 初戦の相手は春夏連続出場の高松商。高校生でも技巧派左腕ならばトップクラスの実力に入る香川卓摩を攻略して、6対4で競り勝った。そして習志野戦では山形大会で3本塁打を放っていた丸山蓮が、150キロ右腕・飯塚脩人から二打席連続弾を放った。習志野は流れやリズムを大事にして、驚異の粘り強さを発揮するチームだったが、さすがに丸山の2本目の本塁打は戦意を喪失させた。9回裏を三者凡退に抑え、3回戦進出を決めた。

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好守備を連発したショートの河野宏貴(鶴岡東)

 センバツ準優勝の習志野を破った鶴岡東。試合後の取材で控え室に入った選手たちはどこかサバサバしていた。強豪校を破ると、テンションが上がって盛り上がりすぎるチームはよく見かけるが、鶴岡東はそういう様子が見られない。

 常に堅い守備を見せ、好守備を連発したショートの河野宏貴は「相手どうこうというよりいかに自分たちの野球をやるかを心掛けていました。今日に関しては、前回、バウンドの合わせ方が良くなかったので、バウンドの合わせ方を修正して臨みました。今日は結構球足の速い打球が多かったんですけど、それがうまくできてよかったです」と冷静に試合を振り返る。

 相手を意識することなく、自分たちの野球を心掛けた結果が習志野を破ったのだろう。

[page_break:ライバル・奥川恭伸に投げ勝ち、日本一へ]

ライバル・奥川恭伸に投げ勝ち、日本一へ

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速球投手にめっぽう強い天才型のセンターの山下陽生

 そんな今年の鶴岡東は、1人1人見ていくと実力、性格も実に個性的だ。
 主将で2打席連続弾を放った丸山は、2016年に鶴岡東が甲子園に出場したときのメンバーであり、高校通算38本塁打を放った丸山大(亜細亜大)の弟。弟も兄に負けないパワーを持った選手だが、理論ではなく感覚で勝負する選手。細かいことは考えず、思い切りフルスイングを行う打撃が魅力だ。

 遊撃手の河野宏貴は、大阪・河南シニア時代は控え選手だった。それでも部員100人超の鶴岡東でレギュラーを奪うために、打撃面、守備面も突き詰めて考えることを続けてきた職人肌タイプの遊撃手だ。

 また走攻守のすべてにおいて一流とチームメイトが口を揃える山下陽生は、右の速球投手にめっぽう強い天才型のセンターだ。和歌山東の落合からは3安打、習志野の飯塚からもいきなり痛烈な中前適時打を放ったように、とにかく速球派に対して成績を残す。

 そして投手陣では、2試合連続で先発して好投を見せた186センチ左腕・影山雄貴がここまで大きな存在感を見せている。
 右腕のグラブを高く掲げ、左腕を折りたたむような投げ込むフォームが特徴で、最速138キロのストレートは微妙に動き、捕手の大井光来も「微妙に動くので、僕も取りづらい。だから打者も打ちにくいと思います」と語る程。さらにその独特の球筋、投球フォームも意識的に取り組んだわけではなく、気づいたら変則的な投げ方になったと話す。

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2試合連続で先発して好投を見せた186センチ左腕・影山雄貴(鶴岡東)

 ピッチングの際は、とにかく腕を強く振ることを大事にしていると話す影山だが、性格的はまったりとしていてマイペース。配球もすべて正捕手の大井任せだが、そのまったりとした性格がここまではうまい形で活きている。

 一方、エースの池田康平は地元・鶴岡市出身の本格派左腕で、影山と比べると非常に繊細。130キロ後半のストレートに加えて多彩な変化球を操るが、甲子園での2試合はどちらも失点を喫し、本人にとっては思うような投球ができていない。
 それでも池田は「習志野を破った達成感は自分にはないので、次はしっかりと抑えて貢献したいです」と強く意気込む。

 その投手陣をまとめるのが4番キャッチャーの大井光来。今年の鶴岡東の頭脳ともいっていいぐらい大人びた選手で、大井に話を聞くと、池田と影山をどう操縦しているのか、どういう配球をしたのかを明確に答えてくれる。この大井あっての影山、池田なのだと納得させられた。

 個性的な選手がうまく絡んで実力校を2校撃破した鶴岡東。毎年、甲子園出場校の中には鶴岡東のようにダークホースになれるチームがたくさんあるが、その能力を発揮できずに敗れ去るチームがほとんどだ。

 鶴岡東はこの2試合で1つの壁を乗り越えた。次の相手は関東一と厳しい戦いは続くが、さらに甲子園で大暴れを見せてくれるに違いないだろう。

(記事=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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