1年生捕手・野呂田漸(秋田中央)。指揮官、先輩から絶大な信頼をされる理由
45年ぶりの出場を果たした秋田中央。その原動力となったのは1年生捕手・野呂田 漸(ぜん)だ。秋田大会では先輩投手を粘り強くリードするだけではなく、20打数10安打と攻守にわたる活躍で1年生にして甲子園出場を成し遂げた。その野呂田はこの甲子園初舞台でも初安打を放ち、リードしても1失点に抑え、堂々と自分のパフォーマンスを表現した。
秋田を代表するキャッチャーへの第一歩を踏み出す
マウンドにキャッチャー姿で集まった野呂田漸(秋田中央) ※共同通信
1年生らしからぬ捕手だ。ネット裏の間では野呂田 漸の攻守の力量の高さは評判となっていた。174センチ70キロと決して体格的に恵まれているわけではない。だが、所作が高校1年生とは思えないぐらい落ち着いている。エース・松平 涼平の持ち味を発揮する好リード、ピンチでも慌てない立ち居振る舞い、間の取り方の上手さ、地肩はそれほど強くないが、持ち替えが速いスローイングと、1年生としては高度な技量を持った捕手だ。
その野呂田は1年春からスタメン起用されている。その理由について秋田中央の佐藤幸彦監督はこう語る。
「なかなか勝てない中央高校といわれ、勝つには何か変化が必要だと考えました。そこで適任だったのが野呂田だったのです。技量も含めて、1年生らしからぬ落ち着きがあり、彼に託そうと思いました」
野呂田の抜擢は夏に実る。春は緊張してしまい、思うような働きができなかった野呂田は「夏ではなるべくタイムを取って投手を落ち着かせようと思いました。春では緊張で何もできなかったんですけど、夏は考えて動けるようになったと思います」
懸命に動く1年生に、先輩たちも支えた。野呂田は「先輩たちはとても優しくて、いろいろ支えてもらいました」と感謝の思いを述べたが、愛されるだけの人間性が備わっている。
3年の武田 楓は野呂田の人間性についてこう語る。
「素直で、しっかりと練習しますし、それでいて試合になるとあの落ち着いて捕手としてプレーができるのはとても尊敬します。普段は素直なので、とても可愛い後輩です」
1年生で試合に出られる選手といえば、物おじしない強気な選手が多く、その選手の素顔を知るべく、先輩からその選手の人柄を聞くと、「あいつはなめている。先輩を先輩と思っていない」と笑いながら冗談を言うことがあるのだが、野呂田は非常に真面目で、大人相手でも自分の考えをしっかりと話せるクレバーさを感じる。真面目で、大舞台になると、硬くなる選手は多いが、真面目で、自分の考えを話せて落ち着いてプレーできる選手はなかなかいない。そういうところが指揮官に評価されたのだろう。
甲子園初陣となった立命館宇治戦では内角球で強気に攻めることを指示。試合には敗れたが、エラーのみの1失点に抑えたのは大きく評価できる。野呂田は今回の反省点について、「制球が乱れる投手に対して導き方に課題があると感じました。投手のリードの仕方、接し方でまだ課題が多いことが分かりましたので、甲子園の課題を秋に生かして、また甲子園に戻っていきたいです」と再び甲子園に戻ることを誓った。
佐藤監督も「メンタルなどは1年生とは思えない落ち着きがあるので、あとはフィジカルなどを強化していけば、来年、再来年には秋田を引っ張っていく捕手になっていくと思います」と大きく期待をしている。
甲子園初舞台でも持ち味を発揮した1年生捕手はやがて秋田県を代表するキャッチャーに成長して、甲子園に戻って見せる。
(記事・河嶋 宗一)
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