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今年の甲子園は捕手が「トレンド」。甲子園を熱くするバラエティに富んだ逸材野手たち

2019.08.04

 投手に続き、野手の逸材を紹介したい。今大会はある特徴がみられる。大会が進めば、そのポジションの選手が盛んに騒がれると思う。

全国に集結した逸材捕手たち

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注目捕手・有馬諒(近江)

 昨年は小園海斗報徳学園―広島)を筆頭にショートの逸材が多かった年だったが、今年は好捕手が集まった。
 その中でもナンバーワンの評価をされるのが有馬諒近江)。183センチ81キロの大型捕手はさらに守備力が高まった。1.9秒台のスローイング、絶妙なキャッチング、相手の狙い球を外す好リードと、捕手として必要な部分はすべて備えた選手。打者としても打率.444を記録する。攻守で大暴れしたい。

 高校日本代表候補に選出された東妻純平智辯和歌山)は1.8秒台も計測する強肩、捕手としてナンバーワンとも呼べる強打が魅力。また、奥川恭伸とバッテリーを組む山瀬慎之助星稜)はキャッチング技術がさらにレベルアップ。縦系の変化球を難なく捕球し、奥川の好投を引き出している。山瀬によると高校1年秋までキャッチングが苦手で投手陣に苦言を呈されたのがきっかけだ。

 「投手陣に下手といわれたのが悔しくて、1年冬はキャッチングの練習を来る日も来る日も続けてよくなりました。今では奥川からもいわれることはないですね」
 キャッチング面で自信をつけた山瀬は打者としてもライト方向へ本塁打を放つ試合もあり、パワーアップを見せている。有馬、東妻をかなりライバル視しており、「日本一のキャッチャーになりたい」と強く意気込んでいる。

 佐々木朗希の163キロを捕球し、一気に話題となった藤田健斗(中京学院中京)も、1.8秒台の強肩と好打が光る好捕手。

 全国レベルの強打の捕手・持丸 泰輝旭川大高)、鶴岡東をけん引する強打の捕手・大井光来、9番打者だが、自慢の強肩とパンチ力溢れる打撃が魅力の菅原謙伸、複数投手陣を粘り強くリードし、さらにしぶとい打撃が光る大型捕手・兼子 将太朗習志野)、夏こそ本塁打はなかったが正確なスローイングと高い打撃センスが光る野口洋介関東一)。米澤監督からも「プロ入りした石橋(康太)とはタイプが違いますが、非常に良い捕手です。野球に対する考え方が最終学年になってよくなりました」と評価も高い。

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明石商の正捕手・水上桂

 東京代表でキューバ遠征を経験した宮崎恭輔(国学院久我山)は今までなかなか勝てなかった早稲田実業相手に試合を決める逆転満塁本塁打を放った強肩強打の捕手、強力打線と強力投手陣をけん引する東海大相模の正捕手・井上 恵輔も、1.9秒台の強肩、対応力の高さが光る強打に注目。4年ぶり出場の静岡の好捕手・小岩和音、大阪大会決勝戦で高校通算30号本塁打を放った野口海音履正社)も、打者としてのスキル、スローイング、リードセンス、ストッピング能力は全国レベル。

 あまり騒がれないが、明石商水上桂も全国レベルの捕手として評価していい。1.9秒台の強肩、冷静沈着なリードセンス、犠打も強打も兼ね備えた嫌らしい打撃、投手の持ち味を引き出すインサイドワークと接戦に強い明石商は水上の存在抜きでは語れない。

 2年ぶり甲子園出場の明徳義塾はリード、肩、強打が魅力の安田陸のパフォーマンスが勝利のカギを握っている。
 二季出場の筑陽学園は4番に座った進藤勇也はリード、打撃ともに磨きがかかり、チームの精神的な支柱として期待がかかる。

[page_break:黒川、韮澤、武岡など今年も好ショートが集まる]

黒川、韮澤、武岡など今年も好ショートが集まる

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5期連続甲子園に出場する黒川史陽(智辯和歌山)

 内野手では黒川史陽は2本塁打5打点をマーク。高校日本代表合宿でも木製バットを握り、140キロを超える好投手から長打をマークした打撃の完成度は今年出場する左打者の中でもトップクラス。また高校日本代表候補の武岡龍世八戸学院光星)は打率.588をマーク。夏の大会までは不調に苦しんでいたが、武岡の打撃を見ていた先輩からスイング軌道の指摘を受け、それがうまくはまり、復調につなげた。また視野の広さとスピーディな動きが備わった遊撃守備に必見だ。

 また同じく高校日本代表の韮澤雄也花咲徳栄)は西川愛也(西武)のようなタイミングの取り方から強打を連発。埼玉大会では打率.385を記録したが、韮澤のポテンシャルを考えればもっと高いパフォーマンスを発揮できるはずだ。五季連続出場の西川晋太郎智辯和歌山)も遊撃守備、ミート力が高い打撃に注目。

 剣持 京右前橋育英)も広角に長打が打てる打撃技術、軽快な二塁守備に注目。
 下級生時代から抜群のスピードを武器にした守備を見せていた坂下翔馬智辯学園)は奈良大会で5本塁打。猛烈なスイングスピードから繰り出す打撃は小さい選手に夢を与えている。また3本塁打を放っている塚本大夢智辯学園)は智辯学園らしい威圧感を持った右のスラッガーだ。甲子園を経験している井林泰雅高岡商)も全国クラスの左の強打者だ。

 青森大会で6本塁打を放った近藤 遼一八戸学院光星)は「非常にボールが良く見えていて、甲子園の打席でもこの感覚で入れば」と手ごたえは上々。高校通算30本以上の平泉遼馬関東一)も期待のスラッガー。米澤監督も「実力を発揮してほしい。はまったときはすごい打球を飛ばしますから」と期待は高い。

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星稜・東海林航介

 2本塁打、打率.529をマークした天才的な打撃を見せる菅野秀斗山梨学院)、4年ぶり出場の岡山学芸館は打率.476をマークした知念大輔は攻守で高い野球センスを発揮。スイングスピードの速さを生かした打撃で安打を量産する。また鳥取大会で特大本塁打を放った福島悠高米子東)も飛距離は全国トップクラスの右のスラッガー。6年ぶり出場の熊本工では軽快な動きとバットコントロールの高さが光る二塁手・田中亮誠が攻守の中心だ。5年ぶり出場の沖縄尚学のスラッガー・水谷留佳は現在、高校通算32本塁打。今年から二塁に専念。「日本一の強打のセカンドを目指してきた」と意気込む水谷は習志野投手陣を攻略し、甲子園でもアーチを描く。

 卓抜としたバットコントロールを見せる住谷 湧也近江)は滋賀大会で打率.556をマーク。その高い打撃技術を甲子園でも発揮できるか。4本塁打を放った井上広大履正社)は打席内の修正力の高さが光る。さらに強肩も魅力だ。山形大会で3本塁打を放った丸山蓮鶴岡東)は思い切りの良い打撃スタイルで次々と長打を連発。乗せたら怖い選手だ。浦和博鳴門)は高校通算30本塁打を超えており、打率.611、三振0と長打力と巧打力を兼ね備え、打撃フォームを見ても間合いの取り方がうまく、打ち取るのが難しい選手。

 福岡大会では不調だったが、長打力と強肩が魅力の福岡大真筑陽学園)も全国レベルの外野手だ。石川大会決勝戦の満塁本塁打含む3本塁打を放った東海林航介星稜)も長打力がアップ。強打の核弾頭として開花の兆しが見えている。花咲徳栄の2番・橋本 吏功もとても2番打者とは思えないスイング、打撃技術を誇り、本塁打を量産。走塁、守備のスキルも高く、大会注目の外野手といえるだろう。

 9年ぶり出場の宇和島東は4番村上裕一郎の打撃に注目。181センチ78キロと恵まれた体格から手元に呼び込んで豪快なスイングで振りぬく打撃スタイルは迫力がある。

文=河嶋 宗一

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同世代の一流選手との対戦で課題と収穫を得た 韮澤雄也(花咲徳栄)
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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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