Column

選抜出場校大分、夏の敗戦に何を感じたのか?【前編】

2019.07.29

 選抜に出場し1勝を上げた大分。もちろん夏はそれ以上の成績を目指していたはずだ。だが大分は初戦で表舞台から去った。今選手たちは、夏を終え、すでに新しい目標に向けて歩み始めている。大分の3年生達は何を思い、そしてどのような気持ちで次への飛躍を考えているのか?大分の3年生5名の座談会を通して、彼らが試合中に何を感じていたのかを紐解きたい。エース・長尾凌我、プロ注目の捕手・江川侑斗、大型二塁手・足立駿(すぐる)、三塁手・飯塚和茂、中堅・小手川巧は、何を考えているのだろうか。

<メンバー>
長尾凌我(3年) 投手
江川侑斗(3年) 捕手
足立駿(3年) 二塁手
飯塚和茂(3年) 三塁手
小手川巧(3年) 外野手

夏の大会は何を感じたのか?


左から飯塚和茂、足立駿、江川侑斗

――最後の夏の大会についてどう感じましたか?

飯塚和茂:
 負けた時は正直何も考えられなかったと言うか考える気になれなかった。監督のミーティングを聞いている時に終わったんだなという実感が湧きました。

江川侑斗:
 先発の 飯倉(優侃)は毎回ランナーを出しながらだったんですけども、ホームラン1本に押さえて、なんとか1点に押さえていた。打撃も最初は打てない中良い形で逆転して、継投できたというのは内容的には完璧だったけども、その中で次の1点が取れなかったというのが試合の波に乗れなかったと言うか、流れでを持ってこれなかった。

足立駿:
 もともとゆるい左ピッチャーというのがチームの課題として苦手というのがあって、でもどっかしらチーム全体として過信したのか分かんないですけども油断というのは実際あったと思うので、そこが打てなかった原因にもなるのかなと思います。

 九州大会もだいぶ打って勝って、それ以降の練習試合もバンバン・ホームランを打つ人は打って、打撃にみんな自信がついてると思うんですけども、でもいざ課題のゆるい左のピッチャーに当たったにも関わらず「俺らは打てる」そういう雰囲気がありました。

 8回の一気に5点取られた時は少しまずいなと思いました。


左から江川侑斗、長尾凌我、小手川巧

長尾凌我:
 6回からマウンドに上がってたんですけどもその時からボールがコントロールできてなくて 、初回の入った先頭バッターにも3ボールになって、簡単にはフォアボールは出さなかったんですけども 結局レフト前に打たれて、その時点で自分の中ではおかしいなというのがあって、その回は抑えたんですけども、7回に同点に追いつかれて。

 その時点でちょっと焦りがあって、次の7回の裏の攻撃も、うまくいかず追いつかれた後に、取られたら取り返すのがうち(大分)の勝ちパターンでもあり、そういう風な流れじゃなく我慢な展開になってしまった時に、自分らしい球を投げれず、流れを止められず。

 自分はマウンドに上がった時から、違和感とういのは感じていました。

江川侑斗:
 球が行かないじゃなくて、逆に指にかかりすぎて、調子も良かったぶん、その分球が上ずって、投球練習の時からこれはちょっと高いなというのは感じていました。

小手川巧:
 今まで一巡するまでランナーが出ないという試合はなかったのですよ。夏の大会は、一巡ギリギリでヒットが出て。まず2回までにヒットは必ず出るという感じだったのが、全然出なくて、アウトのなり方も、自分のバッティングを主張しすぎて、チームの打撃じゃなくて、自分自分がというバッティングになっていた。最後の大会という力みもあるし、さっき(足立)駿が言ったように、いつか打てるだろうという、過信もあったとのかなぁと思います。

――小手川くんがいっていたような最後の大会という力みはあったの?

江川侑斗:
 他の公式戦とは変わらなかったです。自分はなかったですね。

[page_break:後輩に伝えたい一言]

後輩に伝えたい一言


足立駿

足立駿:
 負けて一番思ったのが、新チームの最初の頃に全員でミーティングをして、「こうやって行こう」そういうのを決めて、自分の中では選抜まではなんとか徹底してできたのかなと思っているんですけど、やっぱ春から夏にかけて自分らでやろうと決めたことがなぁなぁになったり、それを疎かにしてしまったりした部分は自分の中ではあると思うので、今の後輩・新チームが始まったばっかだと思うんですけど、その新チームの中で決めたことを最後まで徹底してやってほしいなというのは思います

小手川巧:
 うち(大分)のバスケとかハンドボール部は常に大分県で優勝するのが当たり前みたいな感じだったんで、バスケ部の先生に 「毎年毎年安定した強さがあるのは何でですか」 と聞いたら 「安定した強さというのは難しくてどっかで途切れてしまうものがある」というのを言っていて、「途切れるのはしょうがない、今までの代が勝っていたから自分たちも勝てると思っていれば、それは隙になって、どんどんチームが弱くなっていくから、その代その代が、それぞれの代で自分たちは「勝つ!」という今までのチームの成績というのは無しにして自分たちが勝つためにを意識して練習していけば、それが結果的に安定した強さになっていく」 というのを言っていたので、(昨夏も)何人か自分たちの代でベンチに入っていた人もいて、選抜に出て一回勝つということができたけども、その自分たちは(甲子園に)行ったから勝てるという考えじゃなくて、自分たちが行っても勝つという考えを持ったら強くなると思います。

[page_break:だからこそ、僕らは更に成長する!]

だからこそ、僕らは更に成長する!


左から、足立駿、江川侑斗、長尾凌我

足立駿:
 (長尾)凌我が、「いつもと違うなぁ」と感じて投げてたというのは、守っていて分かったんですけども、そこをコントロールして悪い中でもいいピッチングはできるのが今までの(長尾の)印象だったんですけども、夏は見ていて、何か悪い悪いを引きずって自分の持ち味を出せてなかった、そうさせてしまう雰囲気がチームにあったのかぁ、と試合中考えていました。

――チームの雰囲気が長尾くんの投球にも影響を与えてしまったのかもしれませんね。

江川侑斗:
 甲子園終わってから、ずっと(長尾の)調子悪かったんですけど、前日のブルペンの投球がが今までにないぐらい良かったんで、それで捕った時にいけるなーと思って、試合に入って、やっぱり(試合当日も)前日に似たボールが来ていて、球自体は、スピードとしても出ていたんで、良かったと思ったんですけども、それが自分の力を持ってるもの以上出そうとしてしまったので空回りしたというのはありますし、やっぱり逆転して1点リードをした場面で自分が抑えるという気持ちが強かったので、その辺を自分がキャッチャーとしてコントロールしてあげれなかったというのはあると思います。

長尾凌我:
 僕的には、そう思わずに、逆に自分がそういう雰囲気にさせてしまったと言うか、(江川)侑斗が今言ってたように、自分でも前日調子が良かったというのは実感がありますし、試合中に代打が送られてピッチャーが交代で、もちろん自分(が次にマウンドに上がる)だろうなという予想がついていてブルペンに入っていて、そこでもボールは来ていて。ただ、いざ(マウンドに)上がってみて、真っ直ぐがコントロール出来ていないなというのは(周りに)思わせてしまった時点で、そういうのが周りに伝わってしまったので…

 自分としては、春終わってからの期間というのはずっと長いトンネルの中にいて、いざ夏に合わせると言うか、指導者ともそこは話していたので、そこは良かったし、夏に向けて出来てきているなぁというのはあったんですけども、いざ試合になって打たれる形になってそこで、 調子がいいのに何でこんな風になっているというのはあったしそう思ってる姿をみんなが見て何かそういう雰囲気にさせてしまったんじゃないかなというのは思っていてそこはマウンドに立つ人として良くなかったのかと思っています。

 マウンドに立つ人というのは試合の雰囲気自体を変えてしまうという怖さを気が付きました。それがこの試合で気付いて、夏を終わらせてしまったのは申し訳ないですけど、今後どのような場面でも、この経験に気がつけたのは良かったと思います。


左から長尾凌我、小手川巧、足立駿_、飯塚和茂、江川侑斗

編集後記
 5名が試合で何を感じ、そしてそれをどのように消化しプラスに転換しようと考えているのが伝わってくる座談会でした。座談会中も、「自分がどうしていれば、どうなった」と自分事で考えているところに、他人のせいにしない、自分ときちんと向き合えている大分の選手たちの強さを感じました。そんな選手だからこそ、この経験がきっと財産になると信じています。

 中編は、大分での野球部で何を学べたかについて話してもらいました。

【中編を読む】ライバルがいたからこそ成長できた!中高一貫の強みを活かす大分(大分)【中編】

(コーディネーター:田中 実

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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