目次

[1]120キロ台しか出ない投手をどう抑えるかを考えるのが楽しい
[2]最後まで頭脳は冷静だった

 初出場の大分。その大分の攻守のまとめ役が九州ナンバーワンキャッチャーと呼ばれる江川 侑斗だ。スローイングタイム1.8秒台の強肩、フレーミング技術、投手の持ち味を生かしたインサイドワークが光る好捕手。インタビュー取材で「今年は江川 侑斗がいることを見せつけたいと思います」と同世代の捕手をライバル視し、全国舞台での活躍を誓った江川は捕手として最高の働きを見せた。

 エース・長尾 凌我の持ち味を引き出し、1失点完投勝利を演出。このバッテリーから見える投球術、駆け引きというのは改めて野球は「考えるスポーツ」だと気づかせてくれるものだった。

120キロ台しか出ない投手をどう抑えるかを考えるのが楽しい


 試合前の取材では、「打者ごとに配球を考えてきました」と語る江川。しかし頼みの長尾はブルペンの投球から不調だった。
 「ストレートが高めに上ずっていて、スピードも出ていなくて、苦しいなぁと感じました」

 この日の長尾はストレートのスピードが120キロ中盤。決して速くはない。今年の出場校のエースでも遅い方に入るだろう。ただ、110キロ前半のスライダー、決め球の120キロ台のシュート、カーブを高低、コーナーに投げ分ける制球力の高さは一級品だ。江川は長尾をリードする面白さをこう語る。

 「120キロ台しか出ない投手をどう考えて抑えてリードするのか。そこを考えるのが楽しいです」

 巧打者揃いの松山聖陵に対しても、幅広い攻めで抑え込んだ。特にキーとなったのはシュートだ。110キロ台に沈むボールは大きな武器となった。長尾は「右打者にインコースのシュートや真っすぐを効果的に使えたのが良かったです。また、思っていた以上に緩いボールが使えることが序盤でわかったので、しっかり後半でも投げられました。」と決め球と球速が遅いカーブをしっかりと活かし、ピンチの場面でも抑えた。

 長尾は球審の判定が狭いことを察知し、「内に集めることなくベースの角を削ることを意識してアバウトに投げました。」
 独特の表現をした長尾だが、ようはコーナーにピンポイントに集めすぎることを意識すると思うようなボールが投げられないので、アバウトに投げることでたとえ120キロ台でもしっかりとしたボールを投げることができる。

 また、甲子園に向けて練習してきた横へのスライダーも決まっていた。またこの試合、光っていたのが江川のフレーミング。捕球する直前に若干ミットを動かす高等技術でストライクを多く演出。長尾の好投を引き出していた。

 さらに江川は松山聖陵の足も封じた。昨秋は9試合で12盗塁と機動力に自信を持つ松山聖陵に対し、1回裏、見事に盗塁阻止。長尾は「非常に助かった。あれは大きなプレーでした」と胸をなでおろす。

 江川は「走者のスタートが遅れていたので、うまく刺すことができてよかったです」
 江川の好送球により、その後の盗塁はゼロ。長尾が言う通り、非常に大きなワンプレーだった。

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