「野球は審判も含めてアジアで日本が一番」台湾から海を渡っての四国審判修業
2007年2月に首都圏から居を四国地区に移し13年目。「さすらいの四国探題」の異名を背に四国球界でのホットな話題や、文化的お話なども交え、四国の「今」をお伝えしている寺下友徳氏のコラム「四国発」。
第57回では「秋の四国で見つけたダイヤの原石たち」第2回の前に、台湾から海を渡り、四国アイランドリーグplusで四国審判修業を続ける朱 學謙(しゅ・がくえん)さんを紹介します。
四国アイランドリーグplusに加わった台湾人審判員「朱 學謙」さん
台湾から海を渡り四国アイランドリーグplusで後期から修業を積む朱 學謙さん
徳島インディゴソックスの2年ぶり5回目の総合優勝で幕を閉じた15年目の四国アイランドリーグplus。後期に入るとスコアボードには新たな文字が刻まれるようになりました。
審判員の場所に、「朱」の一文字。今季の四国アイランドリーグplusにはNPBから和田 隆(23歳)、正木 雄大(20歳)の両氏が研修審判員として派遣されていますが、彼ら2人からはやや齢を経ている風貌ながら、大きな声とキビキビした動きは強く印象に残るものでした。
では「朱」審判員とはいったい……。そんな時はこのお方へ聞くに限ります。神谷 佳秀・四国アイランドリーグplus審判部部長。リーグ創設時から審判を務め、現在は若き審判員たちと寝食を共にしながら審判技術の向上に心血を注ぐ「ザ・審判員」。一方でtwitterやfacebookでの審判員情報発信にも熱心に取り組んでいます。「神谷さん、朱さんはいったいどこからいらしているのですか?」
「台湾から来ていただいています。台湾プロ野球(CPBL)での審判経験もある方ですよ」
そうなんです。朱 學謙(しゅ・がくえん)さんは海を渡り遠く日本・四国まで審判修業にいらした29歳。しかし、わざわざ「youは何しに日本へ?」なのか??さっそく、同じく台湾から日本にやってきている徳島インディゴソックス通訳兼広報の鄧 樂慈さんに通訳をお願いし、本人にお話を聴いてみることにしました。
[page_break: 四国アイランドリーグplusへの感謝を込めて]四国アイランドリーグplusへの感謝を込めて
選手たちとも的確にコミュニケーションを取りながら試合を進める朱-學謙さん
「野球といえば審判も含めてアジアで日本が一番。そこを勉強しようと思って日本にやってきました」。朱さんは柔和な笑顔で来日の理由を語り始めました。
嘉南藥理科技大學1年まで選手を務めた後、審判員に転身。2014年から2017年まではCPBL一軍で11試合塁審を務め二軍でも豊富な試合経験を積み、2年前はNPBのアンパイアスクールで研鑽を積んだこともある朱さん。その後ケガにより一時、プロの道から離れてからの再起を図る彼にとって「毎試合100%やりきる意思を強く持っている」四国アイランドリーグplusの審判環境は、さらなる審判技術を高める上でも大いに糧となっているようです。
「いいパフォーマンスをできなったことは落ち込むこともありますが、それでも次の試合で元気を出してやることが大事。理想は試合が終わった時、観客の皆さんが審判の存在に気付かないこと。主役は選手たちなので」
そう最後に話してくれた朱 學謙さんの次なる舞台はルートインBCリーグ覇者・栃木ゴールデンブレーブスと徳島インディゴソックスとの間で争われる「日本独立リーググランドチャンピオンシップ」。そこでは自らの修業申し出を快く受け入れてくれた四国アイランドリーグplusへの感謝も込めたジャッジが見られるはずです。
(文・寺下 友徳)