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2018大学野球の「旋風児」広島大前主将 「因縁の」小松で高校野球コーチ奮闘中

2019.05.24

 2007年2月に首都圏から居を四国地区に移し13年目。「さすらいの四国探題」の異名を背に四国球界でのホットな話題や、文化的お話、さらに風光明媚な写真なども交え、四国の「今」をお伝えしている寺下友徳氏のコラム「四国発」。

 第47回では昨年、選手主導で国立大唯一の全日本大学野球選手権出場を果たした広島大の前主将・國政 隆吾の現在を取材。愛媛県立愛媛小松高等学校野球部コーチ兼石鎚寮寮監として新たな野球人生をスタートした2018大学野球「旋風児」が地元・愛媛県で志すものを伝えていきます。

2018春・広島大旋風の主役は今、地元愛媛・小松コーチに

2018大学野球の「旋風児」広島大前主将 「因縁の」小松で高校野球コーチ奮闘中 | 高校野球ドットコム
外野ノックを打つ小松・國政 隆吾コーチ兼石鎚寮寮監(愛媛松山ボーイズ〜松山東〜広島大)

 この「四国発」ではなかなか取り上げる機会のなかった大学野球ですが、6月10日(月)から7日間の日程で、明治神宮野球場・東京ドームで開かれる「第68回全日本大学野球選手権」の中四国3連盟代表校も先日、すべて出そろいました。

 まず、広島六大学野球連盟は2季連続51度目の優勝を決めた近大工学部が、2年ぶり29回目の出場。中国地区大学野球連盟からは、これも2季連続7度目の優勝を果たした環太平洋大が3年ぶり2度目の出場。そして四国地区大学野球連盟からは、高知県立の高知工科大。2季連続2度目のリーグ優勝ながら全日本大学野球選手権は初出場となります。

 昨年大会は徳山大(中国地区大学野球連盟)がベスト8に進出。3大学には全5戦中3戦が中四国地区で行われる<7月16日(火)18時・坊っちゃんスタジアム(愛媛県松山市)、17日(水)18時・今治市営球場(愛媛県今治市)、18日(木)18時・絆スタジアム(山口県岩国市)>「第43回日米大学野球選手権大会」メンバー入りへの大志も抱いて、大いに暴れてもらいたいと思います。

 そんな「全日本大学野球選手権」では昨年、もう1つ話題を呼んだ大学がありました。出場27校中唯一の国立大として35年ぶり3度目の出場を果たした広島大(広島六大学野球連盟)。大会では優勝した東北福祉大(仙台六大学野球連盟)に初戦で3対8と敗れましたが、現在は三菱重工高砂・神戸に所属する最速148キロ右腕・中田 朋輝を軸にしつつ、「配球の傾向を見て攻略法を打っていく」選手主導で試合を動かす戦い方は、大いに好感が持てるものでした。

 ちなみに練習メニュー考案などその中心人物であり、東北福祉大戦で本塁打も放ったのが当時主将の國政 隆吾(愛媛松山ボーイズ~松山東・捕手)です。松山東3年時にも主将・村上 貴哉(明治大~JX-ENEOS)らを「最後の夏なのでまとまろう」とサポートし夏の愛媛大会準優勝。1学年下の亀岡 優樹(愛媛大4年・投手)らにセンバツ21世紀枠出場・1勝への道しるべを作った「旋風児」。実は一年近くが経過した現在、彼の姿は……決勝で敗れた愛媛小松のグラウンドにありました。「愛媛県立小松高等学校野球部コーチ兼石鎚寮寮監」。これが國政 隆吾・現在の肩書です。

[page_break: 「1人1人に合わせた」高校野球指導者のスタートライン]

「1人1人に合わせた」高校野球指導者のスタートライン

2018大学野球の「旋風児」広島大前主将 「因縁の」小松で高校野球コーチ奮闘中 | 高校野球ドットコム
小松・宇佐美 秀文監督の話を聴く國政 隆吾コーチ兼石鎚寮寮監

 「僕は大学のころから地元の愛媛県で高校野球の指導者になろうと思っていました。ですので、昨年も教員採用試験を受験したんですが合格しなかったんです」(國政コーチ)

 その矢先に高校時代に縁の深い愛媛小松からコーチ兼寮監の話が舞い込み「今後、高校野球の指導をしていく上ではそういった立場の経験も必要」とオファーを受けた彼は、現在、同学年・元捕手・加えて奇遇にも昨年の全日本大学野球選手権で本塁打を放っている鈴木 大夢(大阪淀川リトルシニア~米子北~福井工業大)コーチ兼石鎚寮寮監と共に、51人中38人が生活する野球部員と石鎚寮で寝食と共にしながら野球部指導と教職採用試験合格への勉強に勤しんでいます。

 「高校生は状態の上下が大きいので指導は難しいですね」と言いつつ、練習では細やかに選手たちに声をかける國政コーチ。「1人1人に合わせた指導を心掛けている」大学での経験値を活かしたアドバイスは「練習試合が終わるごとに配球についても話をしてくれるので、リードもしやすくなりました」(日野 絢心<3年・捕手・167センチ63キロ・右投右打・愛媛ヤングラディアンツ出身>)と選手たちから好評を博しているようです。

 川之江今治西・そして愛媛小松と公立3校を甲子園に導いた名将・宇佐美 秀文監督からも「しっかりしているし、質問も自分の意見をもって聞いてくる。チームも元気になった」と評価を与える國政 隆吾・高校野球指導者の滑り出し。これからの道のりは決して順風満帆ばかりではないでしょうが、令和新時代を迎える四国・愛媛高校野球の若手指導者の旋風児となるべく、これからも彼らしくチームを支えてもらいたいと思います。

(文・寺下 友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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