Column

「愛媛プロレス」から学ぶ「令和らしい地域密着スポーツエンターテイメント」

2019.05.02

 2007年2月に首都圏から居を四国地区に移し13年目。「さすらいの四国探題」の異名を背に四国球界でのホットな話題や、文化的お話、さらに風光明媚な写真なども交え、四国の「今」をお伝えしている寺下友徳氏のコラム「四国発」。

 令和最初となる第44回では平成最後の日に行われた愛媛プロレスイベントから、令和の時代にふさわしい地方型スポーツエンターテイメントを語っていきます。

「わかりやすい」「面白い」「地域に貢献する」愛媛プロレス

「愛媛プロレス」から学ぶ「令和らしい地域密着スポーツエンターテイメント」 | 高校野球ドットコム
四国統一ヘビー級選手権らしいハイレベルな技の攻防

 皆さま。令和あけましておめでとうございます。穏やかな気持ちで年号の変化を迎えさせて頂いた平成上皇陛下による格段のご配慮に深く感謝すると共に、天皇・皇后両陛下に倣い私自身も引き継ぐべきこと、改めるべきことを考え実行に移し、常に世の中へ貢献できる人間になることを心掛けてまいります。

 そんな私が平成最後の日、仕事を午前中行った後に足を運んだのは……JR松山駅前にある「キスケBOX」です。この日行われたのは新元号カウントダウンイベントの1つとして開催された「愛媛プロレス」。

 実はプロレス好き30年以上の私にとって愛媛プロレスは2016年4月の立ち上げ以来ずっと興味を持ちながらなかなか足を運ぶ機会がなかったのですが、この日は「四国統一ヘビー級選手権」も含めカードも魅力的。

 さらに自ら愛媛県観光大使を務め、選手たちも次々と県内各所の観光大使に送り込み、さらにプロレス外でも各所で地域貢献への凄腕を発揮しているキューティエリー・ザ・エヒメ代表(twitter@Elly_EPW)とも交流を持たせて頂いていることもあって、はじめて足を運んでみました。

 会場はキスケBOXの階段ロビー。入ってみるとそこには驚きの光景が!無料イベントとはいえ500人をゆうにこえる観客が3階までの階段をびっしりと埋めていたのです!さらに試合も笑いあり、シリアスありで実にわかりやすく面白い!すっかり私ははまってしまいました。

 そしていよいよメインイベント。山口県のエゴイストプロレスに所属し、かつて女子プロレス界のトップクラスに君臨した大向美智子さんをマネージャーに従えたチャンピオン・土屋クレイジー選手にプロレスリング・ノアなどにも参戦。

 「NHK杯輝け!全日本大失敗選手権大会」では初代NHK杯も獲得した愛媛プロレスのエース・ライジングHAYATO選手がキューティエリー・ザ・エヒメ代表をマネージャーとして挑戦した四国統一ヘビー級選手権です。

 試合は土屋クレイジー選手の執拗な膝十字・関節技に苦しみながらもスーパーキックなどで局面を打開したライジングHAYATO選手が、最後は不知火とディスティーノの複合技っぽいプロレス界初の新技(技の名前は愛媛プロレスで公募するそうです)で見事ベルトを奪還!直後のサイン会も含め、会場は大いに盛り上がり熱気を見せていました。

[page_break:地方型令和的エンターテイメントの責務は「世間が望むこと」に応え続ける]

地方型令和的エンターテイメントの責務は「世間が望むこと」に応え続ける

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四国統一ヘビー級ベルトを奪還し高々とベルトを掲げるライジングHAYATO

 もちろん私も大満足の愛媛プロレス初観戦だったわけですが、ここで終わっては「スポーツライター」ではありません。なぜ満足したのか?その理由を考えてみました。

 まず私が会場やニュースで見る令和の時代に入る方々の表情を見て如実に感じたのは「皆さんは日常を忘れる瞬間を望んでいるんだろうな」ということです。決して生きやすい環境ではない現代生活。かつ四国を含む地方の状況は大都市圏より厳しい。となれば、地方型エンターテイメントに求められるのはひと時でも非日常を味わえること。この日の「愛媛プロレス」には間違いなくその場所がありました。

 加えて夢を共有できる。試合後、ライジングHAYATO選手はこうマイクアピールで言いました。「まだ名前は言えませんが、6月9日のビックマッチではすごい選手と戦います!」

 翌日、ライジングHAYATO選手は石鎚山太郎選手と共に大阪プロレスタッグベルトへ挑戦表明。相手はGamma &スペル・デルフィン選手。いずれもジュニアヘビー級のレジェンドです。

 結局「世間が望むこと」に応え続けなければ、エンターテイメントは存在意義を失う。その基本はプロレスでも野球でも同じこと。そんな当たり前であるにもかかわらず、内部に入りすぎると見失いがちなことに気付かされた平成最後の一日でした。

 当然、私もそうです。冒頭に記したことを軸に「世間が望むこと」に応えられるように、この「四国発」を展開してまいります。まだまだ小人の域を全く出ない私でありますが、読者の皆さま、引き続きよろしくお願い申し上げます。

(文・寺下 友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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