Column

NPB審判員「プロの業」と「フェアプレー精神」を伝授

2019.01.30


NPB審判員「プロの業」と「フェアプレー精神」を伝授

 2007年2月に首都圏から居を四国地区に移し12年目。「さすらいの四国探題」の異名を背に四国球界でのホットな話題や、文化的お話、さらに風光明媚な写真なども交え、四国の「今」をお伝えしている寺下友徳氏のコラム「四国発」。

 第32回では1月27日に愛媛県松山市の[stadium]坊っちゃんスタジアム[/stadium]室内練習場で開催された「NPB初心者向け審判講習会」の模様をお届けします。

「審判目線」で変わる野球の接し方

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プレイボール!の実演をするNPB審判員たち

 「柳田 悠岐(福岡ソフトバンクホークス)選手の打球はナックルみたいに来る。だから、ポジショニングも避けるのも結構難しいんですよ」

1月27日(日)に行われた「NPB初心者向け審判講習会」。グラウンド上で起こる生の証言に愛媛県松山市の[stadium]坊っちゃんスタジアム[/stadium]室内練習場に集った38名の参加者たちが目を丸くしました。

 この日は、日本シリーズ1回・オールスター2回の出場経験を持つ吉本 文弘審判員をはじめ、須山 祐多、梅木 謙一、今岡 諒平、松本 大輝の関西所属NPB審判員5人が、セットの体勢から走り、「He is OUT!(アウト)」「セーフ!」「タイム!」のコールで帰結する基本動作から指導をスタート。

 「基本は野手からの送球に対し90度で見れる位置で見る」各塁審の判定ポジショニングと際どいセーフ判定コールには野手の足が離れた際の「オフ・ザ・バック」、ボールを落とした場合の「ドロップ・ザ・ボール」、ボールをジャックルした際の「ジャックル・ザ・ボール」など、NPBで実際に行われている「プロの業」を惜しげもなく伝授していきました。

 講習会の雰囲気は文章よりも写真で感じて頂くとして、筆者が最も今回の講習会取材を通じ感じたのは「審判員の立場を知れば野球の接し方が変わる」ということ。

 例えば、カメラのファインダー越しに見ても審判員の位置と選手側の位置からでは全く視界が異なり、正しい審判員の位置からだと多くの情報が得られることが解りましたし、参加者が汗だくになったことからも明らかなように、実際の審判員が試合中に動く運動量は半端ないことも今回はじめて感じたことです。

 NPB育成審判員時代の2016年に四国アイランドリーグplusで1年間審判を務めた松本 大輝審判員は「これを機会に審判にも興味を持って頂きたいし、少年野球とかで『審判をやりたい』となってくれれば、プロ野球選手だけでなく、プロの審判の道もあることも知ってもらえればうれしいです」と講習会後に話してくれましたが、審判視点で野球を見るとまた新たな世界を見つけられることは間違いないところ。

 ぜひ、皆さんも「審判員」という仕事や審判の動きにぜひ、興味を持って頂ければと思います。

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「フェアプレー精神」こそが全てのの源

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足を外した方向を両手で表現し「セーフ!オフ・ザ・バッグ!」を実演する須山 祐多NPB審判員

 こうして休憩中にも途切れなく質問が飛び交うなど大盛況だった講習会は約3時間で終了。「教えてことによって我々も勉強になりましたし、貴重な発見がありました」(梅木 謙一審判員)とNPB審判員の皆さんも充実した表情を浮かべる中、24年間で1300試合を裁いてきた吉本 文弘審判員は審判員の果たす役割について参加者に熱く語り掛けました。

 「たとえば、ボークを宣告する時は『それはフェアプレーじゃないよ』と言ってあげればいいと思いますね。実はNPB12球団も今は『フェアプレーで、相手をだましたり、相手にヤジを飛ばしたりすることはやめましょう』となっています。私たち審判員はゲームを仕切る上で、秩序やルール、相手を敬うことを作るのが役割ですし、皆さんもそこに取り組んで頂ければと思います」

 「実は『フェアプレーをしていくために、アンパイアはどういう姿であるべきか』が、今回一番メッセージとして伝えたかったことだったので、そこを5人やNPB野球振興課の皆さんと考えてプログラムを組みました。今回のことを入り口に野球に興味を持ってくれればと思います」

 吉本審判員の言うように、現在はNPBも高校野球も「フェアプレー精神」が全ての源。ぜひ、高校球児や高校野球関係者の皆さんもこれからはグラウンド内外での「グッドマナー」に努めてほしいと思います。ひょっとしたら、それがプロへ進む上で、社会で生きる上で、最後の決め手になるかもしれないのですから。

(文・寺下 友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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