Column

四国高校・独立&中国大学・社会人ドラフト指名5人衆

2018.11.11

 2007年2月に首都圏から居を四国地区に移し12年目。「さすらいの四国探題」の異名を背に四国球界でのホットな話題や、文化的お話、さらに風光明媚な写真なども交え、四国の「今」をお伝えてしている寺下友徳氏のコラム「四国発」。

 第21回では10月25日(木)に開催された「2018年 プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」で指名を受けた四国地区の高校・独立リーグ選手に加え、筆者が普段取材カテゴリーとしている中国地区の大学・社会人選手計5名を、指名あいさつ時などのエピソードも交えて紹介していきます。

市川 悠太が東京ヤクルトスワローズ「3位」だった理由

四国高校・独立&中国大学・社会人ドラフト指名5人衆 | 高校野球ドットコム
橿淵 聡スカウトグループチーフ(右)岡林 洋一中四国担当スカウト(左)と握手する東京ヤクルトスワローズ3位指名・市川 悠太(明徳義塾3年・投手)

 まずは四国地区。10月25日(木)に開催された「2018年 プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」では以下の3名が指名を受けました。

東京ヤクルトスワローズ3位指名
市川 悠太(いちかわ ゆうた・明徳義塾高3年・投手・184センチ76キロ・右投右打・2001年3月29日生・高知県出身・高知市立潮江中)

千葉ロッテマリーンズ8位指名
土居 豪人(どい ひでと・松山聖陵高3年・投手・191センチ84キロ・右投右打・2000年4月2日生・愛媛県出身・宇和島市立城東中~宇和島クラブシニア~聖カタリナ学園高<1年7月まで>)

千葉ロッテマリーンズ育成1位指名
鎌田 光津希(かまた みずき・徳島インディゴソックス1年目・投手・180センチ91キロ・右投右打・1995年9月6日生・千葉県出身・匝瑳市立野栄中~横芝敬愛高~敬愛大)

 昨秋の明治神宮大会優勝投手。右スリークォーターの市川投手は10月30日(火)に明徳義塾高で東京ヤクルトスワローズから指名あいさつを受けました。席上、下級生時代から密着マークを続けてきた岡林 洋一スカウトが3位指名に至った理由の1つとしてあげたのが7月6日(金)に急きょ行われた関西(岡山)との練習試合で自己最速149キロをマークした際の「5回というイニング短いイニングでの適性が見えた」内容。

 さらに岡林スカウトは「段階の中で投げるたびに成長してくれた。中心選手になりえるし、先発でもリリーフでもいける」。実際に高知大会決勝戦を見た橿渕 聡スカウトグループデスクも「低い位置から強いボールを投げられる。試合を見ても評価は揺るがなかったし高校生投手では一番の評価でした」と大きな期待を寄せ、これに対し市川投手も「自分はまだまだだが、そのような評価はうれしい。日本を代表するような投手になりたいし、できるだけ早く一軍に上がれるようにしたい」と答えていました。

 個人的にはストレートとスライダー。そしてシュートは十分右打者への武器となるだけに、あとは自らも課題としてあげる左打者対策の落ちるボール修得に取り組んでもらえれば一軍デビューは早いと思います。

 11月10日(土)・11日(日)には、他のドラフト指名6選手(2位指名の法政大・中山 翔太外野手と7位指名の九州共立大・久保 卓眞投手は明治神宮大会、5位指名の新日鐵住金広畑・坂本 光士郎投手は日本選手権中のため欠席予定)と共に、現在愛媛県松山市の坊っちゃんスタジアムで行われているチームの秋季キャンプ見学も予定されているようなので、ぜひNPBの現実を目の当たりにして、さらなる研鑽に励んでもらいたいです。

[page_break: 土居 豪人が見せた「サプライズ」と鎌田 光津希の「決意」]

土居 豪人が見せた「サプライズ」と鎌田 光津希の「決意」

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千葉ロッテマリーンズ育成1位指名・鎌田 光津希(徳島インディゴソックス)

 最速149キロの角度あるストレートが持ち味の土居投手は11月1日(木)に松山聖陵高において千葉ロッテマリーンズから指名あいさつを受けました。あいさつ後は地元報道陣にかこまれどぎまぎしていた部分もありましたが、この日は大きなサプライズも見せてくれました。

 秋季四国大会準決勝を目前に控えていた現役生相手にフリー打撃の投手役を買って出た彼は「夏を終えた後に週末は宇和島に帰って股関節の可動域や使い方についてトレーナーと取り組んできた」成果を伸びのあるストレートと鋭く曲がるカットボール、スプリットで誇示。これにはネット裏で見つめていた永野 吉成チーフスカウト、黒木 純司・中四国担当スカウトも「今までで一番いい」と大きくうなずいていました。

 

 「自分でやるべきことを少しずつやっていきたい」と本人も語るように1年目当初は体力強化が主になるでしょうが、50メートル6秒1の俊足など随所に見せる身体能力の高さが技術とつながれば、今年高卒2年目で先発7試合を経験した種市 篤暉投手や、同じく高卒2年目からローテ投手になった二木 康太投手のようなブレイクも十分考えられます。

 そんな土居投手と同じく胸に「M」が輝く縦じまに身を包むことになった最速155キロストレートとナックルカーブ、フォークなどを操る鎌田投手。市川投手と同じ10月30日(火)に指名あいさつを受けた翌日「四国アイランドリーグplusAWARD2018」で詳しく本人から話を聴くことができました。

 「フェニックスリーグではフォークで空振りを奪った場面など思うようなボールは投げられたが、結果が残らなかったので指名される自信はなかった。指名された時はホッとしました」と本音を述べた後、強い口調で述べたのは「四国アイランドリーグplusの名を汚してはならない。這い上がりたい。石井 貴さん(監督→東北楽天ゴールデンイーグルス2軍投手コーチ)のような気合で押していくようになりたい」といった決意の言葉。「今のスタイルを貫いてもらえばいい」と黒木スカウトも太鼓判を押すコツコツ努力する姿勢を続けることができれば「高校・大学で投げた経験もありますけど、打者が近くに見えるので投げやすい」地元・ZOZOマリンスタジアムで躍動する日も近いでしょう。

[page_break: 「超ビックスケールの20歳」杉山 一樹には大注目]

「超ビックスケールの20歳」杉山 一樹には大注目

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福岡ソフトバンクホークス2位指名あいさつ直前、町田 公二郎監督と会話を交わす杉山 一樹(三菱重工広島・投手)

続いて中国地区の大学・社会人からはこの2名が指名されています。

福岡ソフトバンクホークス2位指名
杉山 一樹(すぎやま かずき・三菱重工広島3年目・投手・193センチ92キロ・右投右打・1997年12月7日生・静岡県出身・静岡市立東中~駿河総合高)

埼玉西武ライオンズ育成3位指名
中熊 大智(なかくま だいち・徳山大4年・捕手・176センチ84キロ・右投左打・1996年8月27日・熊本県出身・菊陽町立武蔵ケ丘中~九州学院高)

 まずは杉山投手。10月29日(月)に三菱重工広島事業所内で指名あいさつを受けた際、「福岡のイメージは?」と報道陣に問われ「博多美人以外に思い浮かばないんです……」とはにかみながら答えた辺りは20歳らしい部分をのぞかせてくれましたが、マウンドでの彼は全てにおいて「ビッグスケール」と言っていいでしょう。

 「革靴はネット通販かフリーマーケットでないと購入できないんです」と本人が苦笑いを浮かべる30センチの大きな両足を踏みしめ、193センチの角度から投ずるストレートは日本選手権1回戦・新日鐵住金鹿島戦で自己最速タイの153キロをマーク。スライダー、カーブ、チェンジアップも角度ゆえに縦方向に鋭い軌道を描きます。

 「社会人からの伸びしろを期待しているし、大きくホークスを引っ張る投手になってほしい」(永井 智浩・スカウト室室長)、「ショートイニングなら一年目から戦力になれるし、そのポジションを奪い取るところまで期待している」(山崎 賢一/・中四国担当スカウト)といった球団側の望みに対しても「特徴を出さないと一軍に入っていけない。ストレートで有名な投手に負けないようにして、来年の優勝に少しでも貢献できるようにしたい」と足下を見失わないまま前に向かう姿勢もNPBで成功する資質を秘めています。

 来季は先発ならば「二軍でまず育成」。リリーフならば「開幕一軍も」という形になりそうな杉山一樹ですが、いずれにしても長く注目すべき選手になることは間違いないでしょう。

[page_break: 「中熊 大智」とはこんな選手]

「中熊 大智」とはこんな選手

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埼玉西武ライオンズ育成3位・中熊 大智(徳山大4年)の打撃フォーム

 そして5選手のうち唯一の野手指名である中熊捕手。今年の全日本大学野球選手権で2勝をあげた徳山大の正捕手・主軸であったこと以外は、なかなか情報がないといってもいいでしょう。実は……「育成指名があるかも」という情報はドラフトの少し前から得ていましたし、本人を除く周囲からは話を聴いていたので、数試合見た私見も交えてここで紹介したいと思います。

 熊本・九州学院高では阪神タイガースで売り出し中の島田 海吏外野手の一年後輩だった彼の強みは左打席からの「巧打」。シンプルにトップを作り、最短距離でバットを出すことができるため、左投手も苦にせず広角なスプレーヒットを打つことができます。しかも、ツボに入れば長打もあるため、相手投手にとっては厄介極まりありません。

 2年秋には打率.417で初の中国地区大学野球リーグ1部首位打者・ベストナイン捕手部門を獲得すると、4年春にも打率.476で2度目の首位打者とベストナイン捕手部門を受賞。「右ひじの回復途上と下級生捕手育成のため」(徳山大・中村 光宏監督)指名打者専任となった4年秋も4割前後のアベレージで3度目のベストナインとなるなど、こと打撃に関しては大学トップレベルにあるといっていいでしょう。

 なお、先に触れた右ひじも中村監督によれば「1シーズン休んだので、もう回復している」とのこと。春までは2秒を切る二塁送球を連発しリードにも安定感があったので、試合でのリード勘が戻れば早々に支配下選手登録の運びとなるのではないでしょうか。

 以上「四国発」では5選手を紹介してきましたが、彼らを含め計104名のドラフト指名選手たちには指名されず涙を呑んだ選手たちの想いも心に留めて、全力で野球に打ち込んでくれることを期待したいと思います。「NPB」はそれが存分にできる環境を与えてくれるのですから。

(文・寺下 友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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