Column

「小豆島旋風」から3年 小豆島中央の現在地

2018.10.14

 2007年2月に首都圏から居を四国地区に移し12年目。「さすらいの四国探題」の異名を背に四国球界でのホットな話題や、文化的お話、さらに風光明媚な写真なども交え、四国の「今」をお伝えてしている寺下友徳氏のコラム「四国発」。

 第17回では2015年秋・後に明治神宮大会で初優勝した高松商に競り勝ち、香川県大会初制覇を果たし、翌年センバツの21世紀枠出場につなげた小豆島旋風から3年、今秋県大会で初のベスト8入りを果たした統合新設校・香川県立小豆島中央高校の現在地をお伝えします。

3年を経て、激変した状況。が、しかし……。

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小豆島中央ナイン

 10月8日(月・祝)秋季香川県大会準々決勝は高松商にとって因縁の対決となりました。決勝戦で延長12回・1対2で敗れて以来、今大会では5年ぶりに対峙する小豆島勢との対戦。試合は4回表までは1対1。安打数は相手に上回わられるなど苦戦を強いられながら4回裏・6回裏・7回裏の複数得点で8対1とコールド勝ち。当時を知る長尾 健司監督をはじめ、勝利の校歌を歌うチームには一様に安堵感が浮かんでいました。

 ただ、その校歌を三塁側ベンチ前で悔しそうに聴くチームのユニフォームは黒の帽子・ストッキング・クリーム地に「小豆島」と左胸に縦書きされていた5年前とは全く異なります。帽子・ストッキングは紺色。ユニフォームは瀬戸内の海をイメージする青に紺の縦じま。そして左胸と防止には小豆島のローマ字・頭文字「S」と中央のローマ字・頭文字「C」が組み合わさっています。なぜ、ユニフォームがここまで変わっているのか?高松商が対戦したのは小豆島ではなく「小豆島中央」だからなのです。

 ここで少々説明を加えましょう。2016年センバツ21世紀枠で甲子園初出場を果たした香川県立小豆島高等学校は2017年3月31日をもって社会人屈指の右腕・佐竹 功年(早稲田大~トヨタ自動車)も輩出している香川県県立土庄高等学校と統合し閉校。同年4月1日より、統合新設校として「香川県立小豆島中央高等学校」が開校。現在2年目を迎えている同校は両校のほぼ中間地点にある蒲生地区にあり、野球部グラウンドも校内に新設。すなわち小豆島中央新設と同時に入学した2年生以下はいわば「新生・小豆島中央1期生」ということになります。

 が、しかし。小豆島土庄がなくなっても変わらないものもあります。では現チームの状況を現役時代は観音寺第一~早稲田大~東海理化で内野手として活躍、高松東部長を経て小豆島中央初代の指揮を執る大西 玲治監督に聴いてみることにしましょう。

[page_break: 「積極走塁」と「伝統の個性値」から春以降の飛躍へ]

「積極走塁」と「伝統の個性値」から春以降の飛躍へ

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本多 宗一郎主将

 「あそこでの走塁はずっと練習していたんです。勝負を賭けたんですけどね。」
 まず大西監督から出た悔いは、1対1の同点で迎えた4回表二死一、三塁のシーン。一塁走者がスルスルとスタートを切ると挟まれるやいなや、三塁走者がホームへ突入したシーンでした。結果的には寸前でタッチアウトとなり、その裏に3点を失う流れを作ってしまいましたが、「3回を終えてアップアップしていた」(長尾監督)高松商のスキを突く積極策としては有効的なもの。

 加えて「相手投手が130キロ後半を出すのは解っていたので、大振りせずコンパクトに振ることを心がけて」(主将の本多 宗一郎<2年・右翼手兼投手・右投左打・166センチ62キロ・小豆島町立小豆島中出身>)8安打を放った打力も目を見張るものがありました。

 

 そして小豆島土庄から引き継がれる個性的な選手たちも数名。5番・中堅手の新川 慶弥(2年・173センチ65キロ・右投左打・小豆島町立小豆島中出身)は一塁駆け抜けのダッシュ力に秀でたものを見せれば、1番・遊撃手の平間 真斗偉(1年・遊撃手・170センチ56キロ・右投右打・小豆島町立小豆島中出身)は打球の勢いを利用して時計回りで二塁送球を行うなど「天性の動き」(大西監督)を披露。冬を超えての成長が楽しみです。

 

 「19時までの全体練習の後、20時半までの自主練習で各個人の成長につながっていると思います。春までには守備力を向上させ、サインプレーで点を取れるようにしたい」と話すのは主将の本多。彼らは小豆島中央として初の県大会ベスト8を糧に、島民の声援を背に、旋風を再び起こすべく冬を過ごしていきます。

 

(文・寺下 友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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