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2018夏・四国地区「ピックアップゲーム」3選

2018.09.05

 2007年2月に首都圏から居を四国地区に移し12年目。「さすらいの四国探題」の異名を背に四国球界でのホットな話題や、文化的お話、さらに風光明媚な写真なども交え、四国の「今」をお伝えてしている寺下友徳氏のコラム「四国発」。
各大会取材のため7・8月とお休みを頂き、久々となる第12回ではカテゴリーを問うことなく、2018年夏に四国地区のチームが関連した試合から3試合をピックアップします。はたして全カテゴリー合わせて300試合を越える中から、どんな試合が選ばれたのでしょうか?

中学は「あの名勝負」を選出!

2018夏・四国地区「ピックアップゲーム」3選 | 高校野球ドットコム
高知中は春夏連覇を達成した

(ピックアップゲーム1)
2018年8月23日 呉市二河野球場(広島県)
第40回全国中学校軟式野球大会 決勝戦
高知中(四国地区1位・高知)2-1秀光中(東北地区1位・宮城)
*7回制・延長11回(延長10回からは無死満塁からの特別延長<タイブレーク>)
試合レポートはコチラ!

 四国大会決勝戦で高知中・森木 大智投手が前人未到の「150キロ」をマークしたことで全国から注目を集めることになった同大会。中学軟式野球界の竜虎相まみえる形になった決勝戦は、両校の意地と技術が真っ向からぶつかる素晴らしいゲームでした。

 結果的には高知中が春の文部科学大臣杯に続く「中学軟式野球界春夏連覇」を達成することになった訳ですが、実は四国大会後、濱口 佳久監督が高知高校の監督に就任した高知中は、この大会ですべてのサインを主将の吉岡 七斗(3年・捕手)が出していたのです。

 表彰式後は「疲れました。でも、勝ててよかったです」と充実感をにじませていた吉岡選手。チームコンセプトとして掲げてきた「自ら動く」をまさに体現した彼らの高校入学後にも大いに期待です。

 そしてこの夏、中学年代では明徳義塾中(高知)も全日本少年軟式野球大会準優勝。松山中央ボーイズ(愛媛)も全日本中学野球選手権大会ジャイアンツカップで1勝をあげ、名門・武蔵府中リトルシニアにも2対3と好勝負を展開。大豊作の予感が漂う中3年代の来年以降が今から楽しみです。

[page_break: 社会人からは「最大のジャイキリ」を選出]

社会人は「最大のジャイキリ」を選出!

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都市対抗でJR四国・Honda撃破の原動力となった菊池 大樹(四国銀行・投手)

 

(ピックアップゲーム2)
2018年7月14日 東京ドーム(東京都)
第89回都市対抗野球大会
JR四国(四国地区代表・高松市)3-1Honda(北関東代表・狭山市)

 日本球界にこの夏、もたらした衝撃度はこれが一番かもしれません。JR四国にとっては都市対抗19年ぶりの1勝は、同時に四国地区社会人チームが企業チームに対しあげた19年ぶりの勝利に。(2007年は四国銀行<高知市>が岩手21赤べこ野球団<矢巾町・クラブチーム)に、2014年は松山フェニックス<松山市>が全足利クラブ<足利市>に勝利)。しかも、相手は戦前、優勝候補の筆頭にあげられていた名門・Honda。大会最大の「ジャイキリ(ジャイアント・キリング)」になりました。

 この試合、私は徳島県内でライブ中継を見ていたのですが、試合終了の瞬間には思わず両腕を突き上げてしまいました。某カレーチェーン店内にもかかわらず(笑)。

 ただ、この勝利は決して偶然ではありません。要因の1つにあげられるのは7回3分の0を5安打2四死球4奪三振1失点。5回4安打2四死球5奪三振1失点(自責0)でマウンドを降りたドラフト1位候補のHondaの最速150mキロ右腕・齋藤 友貴哉と互角以上に渡り合った先発の最速149キロ右腕・菊池 大樹投手。ただ、この菊池投手は四国銀行(高知市)からの補強選手。JR四国・佐野 晃監督の大胆起用が功を奏しました。

 そして菊池投手の側も準備は万端でした。いまやドラフト候補の一角となった彼は「補強選手としてJR四国の練習に参加した時から、チーム状況を見て先発・リリーフ両方できる準備は進めていました。だから、先発を言われた時もうれしかったですけど、あわてることはなかったです」と、当時を振り返っています。

[page_break:高校年代はあえて敗れた「攻防戦」を]

高校年代はあえて敗れた「攻防戦」を

2018夏・四国地区「ピックアップゲーム」3選 | 高校野球ドットコム
済美のエース・山口 直哉は甲子園で獅子奮迅の活躍を見せた(写真は春季大会)

 

 高校年代は正直悩みました。明徳義塾の最速149キロ右サイド・市川 悠太(3年・侍ジャパンU-18)を高知大会決勝戦で撃破した高知商の打棒は衝撃的でしたし、もちろん済美の星稜戦での逆転満塁サヨナラアーチも凄かった。
 がしかし、私はあえて「敗れた」このゲームを選ぶことにします。

(ピックアップゲーム3)
2018年8月20日 阪神甲子園球場(兵庫県)
大阪桐蔭(北大阪)5-2済美(愛媛)
試合レポートはコチラ!

 この試合は5回裏までグラウンド全体を俯瞰できる場所から試合を見ていました。そこで非常に興味深く感じたのは済美大阪桐蔭両校が、お互いに強いプレッシャーを様々な形で掛け合っていた「攻防戦」。そして5回表まではともすると済美柿木 蓮投手(3年・侍ジャパンU-18代表)に100球以上を投げさせた打線に代表されるように、効率的かつ多くのプレッシャーを相手にかけていた点です。

 この試合、大阪桐蔭は「らしくない」エラーが中盤までに2つありましたが、それも済美のプレッシャーが誘発させたと言ってよいでしょう。

 ただ、大阪桐蔭はそれでも守備で1球ごと全員が連動して声を掛け合って細かいポジション修正を施していました。済美ももちろん、4番・三塁手・主将の池内 優一(3年)を中心に声を掛け合ってはいたのですが、大阪桐蔭ほどではなかった。最終的には柿木投手の「二枚腰」といってよい投球と同時に、そのわずかな差が山口 直哉投手(3年)が力尽きての敗戦につながったと考えます。

 ただ、こういった最高峰の経験を四国の学校が得られた意義は今後を考えると非常に大きいことは間違いありません。四国の各校は済美の敗戦を他山の石として、ぜひ次世代への教訓とし、大きな山を越えてほしいと切に願います。

 ということで久々の第12回はここまで。次回は何を取り上げるのか。どうぞお楽しみに!

(文・寺下 友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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