Column

「日本一の学生コーチ」母校に還る

2018.06.06

 2007年2月に首都圏から居を四国地区に移し12年目。「さすらいの四国探題」の異名を背に四国球界でのホットな話題や、文化的お話、さらに風光明媚な写真なども交え、四国の「今」をお伝えてしている寺下友徳氏のコラム「四国発」。
 第7回では4年の月日を経て、母校・徳島商に還った前川 紀洋コーチのお話。実はこの前川コーチ。すごい経歴を持っているんです。

徳島県総体協賛ブロック大会に現れた「秋の大学日本一」の立役者

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昨年は日本体育大学生コーチとして明治神宮大会Vに貢献、今年4月から母校・徳島商の実習助手となった前川 紀洋コーチ

 野球以外のほとんどの部活高校生たちにとって、最大の舞台は「全国高校総体(通称:インターハイ)」。四国地区では高知県は5月第3週、他の3県では6月第1週の週末から月曜日を中心に、全国大会出場をかけた熱い戦いが繰り広げられます。

 では、その間の高校野球は?これは四国4県によって対応さまざまです。高知県では夏の高知大会シード権をかけた独自の総体競技があるのに対し、徳島県では毎年、西部・南部・中央A・中央Bブロックで完結する「総体協賛ブロック大会」を開催。また、愛媛県と香川県では特に大会は開催されません。ただ、高知県と徳島県で言えば、この大会から1年生が出場可能となり、4月に異動・新赴任した指導者たちがはじめて公式戦を体験することもあり、決して軽視できる大会ではないのです。

 事実、今年も大きな発見がありました。6月1日(金)、中央ブロックBの試合が行われる鳴門渦潮高校グラウンドに足を運んでみると、そこにいたのは徳島商のユニフォームを身にまとった見慣れないコーチ。いや、よく見ると私にとっては「見慣れない」ではなく「懐かしい顔」でした。4月から体育の実習助手として母校・徳島商に戻ってきた前川 紀洋コーチがいたのです!

 

 「前川 紀洋」。この名前を聞いてピンときた人もいるかもしれまぜん。前川コーチは昨年は日本体育大野球部の一選手から学生コーチへと転身。
「監督はどうしても威厳があるものだし、選手は監督の顔色を見ながらプレーしがち。そこで僕は選手と監督の距離を縮めることを心がけたし、監督の考え方をかみ砕いて選手たちに伝えて、逆に選手たちの意見も監督に報告するようにした」立ち位置を常に考え続けて、チームの明治神宮大会優勝に大きく貢献した凄腕なんです。

[page_break: 「選手と監督の距離を縮める」コーチとして]

「選手と監督の距離を縮める」コーチとして

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試合前ノックを打つ徳島商・前川 紀洋コーチ

 

 そんな大学時代の働きと高校時代も主将を務めるなど「僕の考え方をすべて知っている」実績を森影 浩章監督に見初められ、今回大学から高校へと指導の場を移すことになった前川コーチ。

 「大学生は考え方も基本的に大人なので感情の幅が実は大きくない。ただ、高校生は成長期。感情の幅も広い部分で気を遣う部分がある」と高校野球指導の難しさを感じながらも、「そこは高校時代の実体験が活きています」と充実した今を話してくれました。

 そんな前川コーチの指導もあってか、徳島商はこの徳島県総体ブロック大会で徳島大会第2シードが決まっている生光学園に快勝して決勝戦に進むと、決勝も徳島大会第4シードの城東、第1シードの鳴門を連覇してきた板野に7対0と快勝。1年生も加えた2018年度初戦を優勝で飾っています。

 こうして「本当に助かっている」と指揮官も全幅の信頼をおく前川コーチを加え、ノーシードから7年ぶり24回目の夏の甲子園出場を狙う徳島商。そのキーマンとなるのは「徳島商でも選手と監督の距離を縮めていきたいし、それが一番大事なことだと思っている」前川コーチなのかもしれません。

(文・寺下 友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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