目次

[1]一大イベントで見られたシーンの数々
[2]記念試合で143キロを投げる投手が!真剣勝負だからこそ見えた出場選手の可能性

  夏に試合に出られない3年生が大会前に試合を行うことを「引退試合」や「記念試合」と呼ばれるが、全国的に当たり前となってきた。ここ数年で、報道されることも多くなってきたが、20年からも行っている指導者がいる。それが倉敷商の森光監督だ。感動的なイメージがある「記念試合」だが、6月28日に開催された倉敷商vs岡山東商の「記念試合」はそれまでのイメージを覆すような緊迫感のある試合だった。

ベンチ外の3年生の最後の試合でも、真剣勝負


 緊張からの守備のミスも出る。焦りから投手の制球が乱れる。
 飛び込んだファインプレーも出る。ミスがあれば厳しい叱咤激励も聞こえる。ベンチにいる選手が声をからして、守っている選手に対してのポジショニングの指示をする。これらは公式戦の風景と何ら変わりない。ピリッとした緊張感はスタンドにまでも伝わってくる。

 その空気を作ったのが倉敷商の森光淳郎監督。玉野光南を経て、2005年から倉敷商の監督に就任したが、玉野光南時代から「記念試合」を行っているという。「どうしても競争を行うと試合に出られない3年生が出てくる。そういう3年生のために憧れであるマスカットスタジアムで公式戦と同じ緊張感の下でプレーをさせたかった。20年前は珍しかった記念試合ですが、僕がやり始めてから他の岡山の学校も続いてきたんです」
 そして2005年、倉敷商に赴任しても岡山を代表する伝統校・岡山東商と「記念試合」は続いた。この試合では、3年生全員がベンチ入り。試合に出るのは原則、公式戦のベンチ入りをしていない選手。背番号もそういう選手が上位の背番号をつけ、レギュラーの選手は後の番号となる。そしてマネージャーもベンチ入りし、女子マネージャーも背番号付きのユニフォームを着用する。森光監督がこの試合の狙いは、
「いつも日陰で支えている選手をレギュラー選手が全力で応援すること。そうすることで感じるものも違うと思いますし、チームは一つとなると思います」
 そして3年生にこう注文した。それは真剣勝負に徹することだ。
 森光監督は「記念試合ではありますが、お祭りになってほしくない。記念試合はいろいろ考えがあると思いますが、試合に出られない3年生が試合に出場する最後の試合だったとしても、勝利を目指す真剣勝負であることが私の考え。そこははき違えてほしくないんです」と語気を強めて意義を語った。

 森光監督がベンチに入れば、ピリッとした緊張感に包まれる。キャッチボールでも少しでも緩い動きが見えれば、森光監督の叱咤が飛ぶ。緩い雰囲気では公式戦のような緊張感は味わえない。そこは心を鬼にして、生徒に接しているのだ。
「今まで出ていない3年生にとっては足が震えるような緊張感を味わうわけですよ。それを経験することでレギュラー選手に対する見方も変わってくる。サポートにも力が入ると思うんですよね」
 それは岡山東商の藤井孝正監督も同意する。「そこは大事にしているところで、こちらもあくまで勝利を目指すだけ。だから、見ている人は緊迫感があって面白いという声をいただきます」と語る。

 だからこそ緊迫した雰囲気ができたのだろう。

 試合は岡山東商が1回裏に2点を先制したが、6回表に倉敷商が押し出しなど相手のミスをついて3点を入れて逆転に成功。だが、8回裏には岡山東商が同点に追いつくと、選手がベンチを飛び出してハイタッチ。最後まで決着がつかず、両チームの指導者の間で延長戦も考えていたがマスカットスタジアムの使用時間を考慮し、時間切れで3対3の引き分けとなった。

 キビキビと締まったゲームにスタンドから盛大な拍手が送られ、選手たちはやり切った表情よりも試合が決着つくまでやりたい。そんな表情をしている選手が多かった。選手たちは指導者の想いを感じ取って試合を行っていたのだ。

 ただ球場を出ると別。試合後、選手は親や友達と写真撮影を行ったり、和気あいあいとしている様子が。メリハリはしっかりとしていた。

PHOTO GALLERY フォトギャラリー

写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます。