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- 【2017年 キミは最も輝いていたで賞!】地元国体、マウンド上で流した涙の訳 八塚 凌二(済美・3年)
第4回 【2017年 キミは最も輝いていたで賞!】地元国体、マウンド上で流した涙の訳 八塚 凌二(済美・3年)2017年12月27日
【目次】
[1]「愛顔つなぐえひめ国体」での涙/数々の苦難を乗り越えて
[2]「愛顔(えがお)」をマウンドで出す旅へ

八塚 凌二(済美・3年)
高校野球ドットコムでお馴染みの現地記者の皆さんが、今年一年、最も輝いていたと思う選手に贈る賞を発表!第四弾は、寺下 友徳記者が表彰!済美のエースの八塚 凌二投手 に、「2017年の最も輝いていたで賞」を贈ります!
「愛顔つなぐえひめ国体」での涙
2017年10月7日(土)16時7分。坊っちゃんスタジアムでの「愛顔つなぐえひめ国体」高等学校野球(硬式)競技2回戦。大阪桐蔭7番・坂之下 晴人(3年)の打球が右翼スタンドへの逆転サヨナラ3ランとなった瞬間、済美の背番号「1」、八塚 凌二(3年)はマウンド上で泣いていた。
挨拶を終えても止まらない涙。記者会見でも「たくさんのお客さんから力をもらって、坊っちゃんスタジアムで終えられたのは幸せ」と話す反面「夏、盛岡大附に負けて、同じように打たれてしまった。(中矢 太)監督さんにも『甲子園の経験を生かしていってこい』といわれたんですけど、期待に応えられなくて申し訳ない気持ちでいっぱいです」と、八塚は言葉を詰まらせた。
そして、地元代表としての責任感を果たそうとしていた彼の中にはもう1つの「想い」が去来していた。
数々の苦難を乗り越えて
新居浜リトルシニアでは2014年4月の「第6回少年硬式野球四国選手権大会」で優勝投手・最優秀選手に輝き、ジャイアンツカップにも出場するなど、四国中学硬式野球屈指の右腕として鳴らした八塚。そんな彼が選んだ進学先は済美であった。しかし、この時点で彼には「最初の夏」を経験することすら許されない状況が横たわっていた。
済美は2014年8月から一年間の対外試合禁止処分「真っ暗で、先が見えなかった」と八塚は当時を振り返る。ただ、彼に力を与えたのは、公式戦出場という目標がなくても真摯に練習に取り組む3年生をはじめとする上級生たちであった。「先輩たちのために」甲子園でも彼が常にこの言葉を添えていたゆえんはここにある。
苦難は続いた。対外試合禁止処分が明けてからは、外野手として主軸を担い秋の四国大会ベスト4も2016年のセンバツ切符は得られず。2016年夏の愛媛大会はまさかの初戦敗退。さらにエース・主将となった2016年秋は2年連続ベスト4も準決勝・明徳義塾戦のコールド負けが響き、またしてもセンバツ出場を逃す。
普通の人間であれば嫌気がさす状況。それでも、彼は周囲への心配りを忘れなかった。

- 寺下 友徳
- 生年月日:1971年12月17日
- 出身地:福井県生まれの東京都東村山市育ち
- ■ 経歴
國學院大學久我山高→亜細亜大。
幼稚園、小学校では身長順で並ぶと常に一番後ろ。ただし、自他共に認める運動音痴から小学校入学時、早々に競技生活を断念。その後は大好きなスポーツに側面から関わることを志し、大学では応援指導部で4年間研鑽を積む。亜細亜大卒業後はファーストフード販売業に始まり、ビルメンテナンス営業からフリーターへと波乱万丈の人生を送っていたが、04年10月にサッカーを通じて知り合った編集者からのアドバイスをきっかけに晴れてフリーライター業に転進。07年2月からは埼玉県所沢市から愛媛県松山市へと居を移し、現在は四国地域を中心としたスポーツを追いかける日々を過ごす。 - ■ 小学校2年時に福岡からやってきた西武ライオンズが野球と出会うきっかけ。小・中学校時代では暇さえあれば足を運んでいた西武球場で、高校では夏の西東京予選の応援で、そして大学では部活のフィールドだった神宮球場で様々な野球を体感。その経験が取材や原稿作成の際に「原体験」となって活きていることを今になってつくづく感じている。
- ■ 執筆実績
web上では『ベースボールドットコム』(高校野球ドットコム、社会人野球ドットコム、独立リーグドットコム)、書籍では『ホームラン』、『野球太郎』(いずれも廣済堂出版)、『週刊ベースボール』(ベースボール・マガジン社)など。『甲子園だけが高校野球ではない2』(監修・岩崎夏海、廣済堂出版)でも6話分の取材・文を担当した。
さらに野球以外でもサッカーでは、デイリースポーツ四国3県(香川・高知・愛媛)版・毎週木曜不定期連載中の『スポーツライター寺下友徳・愛媛一丸奮闘記』をはじめ、「週刊サッカーダイジェスト」(日本スポーツ企画社)、『サッカー批評』、web『スポーツナビ』など多数媒体での執筆実績あり。また、愛媛県を熱くするスポーツ雑誌『EPS(ehime photo sports)』でも取材協力を行っている。 - ■ ブログ:『寺下友徳の「四国の国からこんにちは」』■twitterアカウント@t_terashita
■facebook: http://www.facebook.com/tomonori.terashita