良質なタンパク質について解説!
前回は、「カラダが栄養素を効率よく吸収するための組み合わせ」について説明をしました。今回は、「良質なタンパク質について!」を解説をしていきます。第2回でタンパク質の重要性について解説をしましたが、主にどういった食品に含まれているのか、その「質」について解説します。
良質なタンパク質とは?
良質なタンパク質をとって筋力アップ!
よくテレビ番組などで「◯◯の食べ物では良質なタンパク質がとれます」ということがありますね。ですがそもそも「良質なタンパク質」とは、どんなタンパク質のことをいうのでしょう?言われてみるとよく分からないという方も多いのではないでしょうか。タンパク質の「質」というのは、その食品に含まれるたんぱく質の含有量で決まるわけではありません。食べ物に含まれるタンパク質の「質」を判断することができれば、筋力アップに効率的に役立てることができます。
・同じタンパク質でも成長度に差が出る?
同じ量のタンパク質を与えて成長に違いが出るのか、ラットを対象にして行った実験があります。ラットにカゼインタンパク(牛乳からとれるたんぱく質)を含んだエサを与えると順調に成長しましたが、一方で小麦のタンパクを含んだエサを与えた場合は成長が劣るという結果になりました。
同じタンパク質なのになぜ成長に差が出るのかといいますと、カゼインたんぱく質と小麦たんぱく質では、パーツとなるアミノ酸の配合量が異なるからです。
・必須アミノ酸の量とバランスが関係している
生体のタンパク質はほどんどの場合、20種類のアミノ酸の組み合わせによって作られています。
身体に必要なタンパク質を合成する場合、そのタンパク質を構成するアミノ酸のうち1種類でも欠けていると、タンパク質を作ることはできません。必要なタンパク質の合成を円滑に行うためには、材料となる全てのアミノ酸がそろっている必要があります。
そしてこのアミノ酸には体内で合成できるアミノ酸と合成できないアミノ酸とがあり、後者の体内で合成できないアミノ酸は、食品から必ず摂取しなければならないことから「必須アミノ酸」と呼ばれます。
必須アミノ酸はヒトではトリプトファン、ロイシン、リジン、ヒスチジン、バリン、スレオニン、フェニルアラニン、メチオニン、イソロイシンの9種類があり、この必須アミノ酸の含有量がタンパク質の「質」と関係しています。
ラットの実験の例でいうと、カゼインタンパクは必須アミノ酸がバランスよく含まれているのですが、小麦タンパクではリジンとスレオニンという必須アミノ酸が不足しているため成長が劣る結果となったのです。
良質なタンパク質の効果
必須アミノ酸が豊富で良質なタンパク質をとることは、私達の健康を保つ上でとても大切です。良質なたんぱく質をとることで次のような効果が期待できます。
・筋力アップ
体の筋肉はタンパク質を材料にして作られていますので、運動後は良質なタンパク質をとることで効率的に筋肉をつけることができます。反対に良質なタンパク質をとらなければ、いくらハードな運動をしても思うような効果は得られません。
・免疫力・貧血予防
そのほか、体内の免疫細胞や血液のヘモグロビンなどもタンパク質から作られています。つまりタンパク質が不足していたら、免疫力が落ちて病気にかかりやすくなったり、ヘモグロビンが少なくなって貧血になったりしてしまいます。このようにタンパク質は体の様々な組織に使われ、私達の健康に関わっているため、どれか1つのアミノ酸をとればいいというものではなく、それぞれのアミノ酸をバランスよく摂取することが大切です。
・アミノ酸スコアが高いものが良質なタンパク質?
生体に必要なタンパク質を合成するために、食品のタンパク質中の必須アミノ酸の含有率を数値化したものを「アミノ酸スコア」といいます。
アミノ酸分子には窒素(N)が含まれているのですが、この窒素1gあたりに占める必須アミノ酸が、評価の基準値に対してどれだけ含まれているのかでアミノ酸スコアの値が決まります。
理想の含有量として各必須アミノ酸には基準値が設定されており、この基準値を100%とすると、小麦タンパク質ではリジンやスレオニンが100%を下回ります。リジンやスレオニンの代わりとなるアミノ酸はありませんので、他のアミノ酸がいくら多くてもタンパク質合成が十分にできません。
小麦タンパク質のアミノ酸の中で最も基準値に足りていないリジンは、基準値の42%しか含まれていません。この場合、小麦たんぱく質のアミノ酸スコアは42となります。
一方、カゼインタンパク質では全ての必須アミノ酸が100%を超えているため、体内で効率的にタンパク質の合成が行われます。この場合、カゼインタンパク質のアミノ酸スコアは最大値の100となります。なお、アミノ酸スコアは食品に含まれている必須アミノ酸の量を評価しているわけではなく、あくまで窒素1gあたりに占める必須アミノ酸が、基準値の何パーセント含まれているのかを数値化しています。そのためタンパク質含有量は少なくてもアミノ酸スコアは高いということはありえます。
[page_break: 良質なタンパク質を含む食品]良質なタンパク質を含む食品
良質なタンパク質、すなわちアミノ酸スコアが100のタンパク質を含む食品は、一般的に肉・魚・卵・牛乳の動物性食品に多く含まれています。
植物性食品は全般的にアミノ酸スコアはあまり高くありませんが、大豆のアミノ酸スコアは100で良質なタンパク質を含んでいます。
なおアミノ酸スコアに用いられる必須アミノ酸の基準値は1973年版のものと1985年版のものとがありますが、最新版の1985年版のスコアを参考にするとよいでしょう。サケやサバなどの魚肉はアミノ酸スコアが100になりますが、タコやイカ・貝類などは100にならないものが多いです。
・プロテインも良質なタンパク質
タンパク質を手軽に摂取できるサプリメントとして「プロテイン」があります。プロテインは大豆や牛乳のたんぱく質を抽出して作られていますので、プロテインのアミノ酸スコアも同様に100になります。
プロテインは食品中の糖質や脂質を除去しており、摂取カロリーを抑えながら効率的にたんぱく質をとることができますので、アスリートや健康のためにトレーニングをしている方の身体作りに役立ちます。
・良質なタンパク質は毎食とろう
どんな食品に良質なタンパク質が含まれているかはお分かり頂けたかと思いますが、もちろんアミノ酸スコアの低い他の食品は食べなくていいというわけではありません。ごはんはエネルギー源になる炭水化物、野菜やいも類などは体調管理に役立つビタミン・ミネラルの供給源になります。
大切なことは朝・昼・晩の3食とも、きちんと良質なタンパク質を含む食品を取り入れるということです。
身体の筋肉は常に合成と分解を繰り返しており、タンパク質が足りなくなると分解の方ばかりが進んでしまい、また1回の食事で吸収できるたんぱく質の量も限られているためです。
肉をあまり食べないという方は少ないかもしれませんが、次のような場合は意識してアミノ酸スコア100の食品を取り入れましょう。
×朝食ではごはんやパンだけしか食べない
→◯納豆や冷奴、目玉焼き、牛乳などもメニューに加える
×昼食はインスタントラーメンだけ
→◯肉野菜炒めをトッピングする
×コンビニで菓子パンとコーヒーだけ買う
→◯肉や魚の入ったお弁当やお惣菜を買う
×体調を崩して食欲がないので、何も食べない
→◯卵を入れたおかゆや、タンパク質の入った飲料(プロテイン)を口にする
十分にタンパク質をとることによって、筋力アップや免疫力アップにつながります。
良質なタンパク質をこまめに取り入れて、身体作りに役立てましょう。
・総括!
タンパク質は20種類の「アミノ酸」というパーツからできており、食品から摂取しなければならないアミノ酸を「必須アミノ酸」という必須アミノ酸は9種類あり、これらがバランスのよさは「アミノ酸スコア」という指標で数値化される。
アミノ酸スコアが100の食品のことを一般的に「良質なタンパク質」という
肉・魚・卵・牛乳といった動物性食品の多くはアミノ酸スコア100の良質なタンパク質を含んでいる
植物性食品のほとんどは良質なタンパク質を含んでいないが、大豆はアミノ酸スコアが100である
良質なタンパク質を含む食品を、朝・昼・晩の3食に取り入れるよう意識しよう
文=久保 翔平 (カラダツクル株式会社代表取締役)