Column

3年生座談会 安田学園高等学校(東東京)「ショックが大きかった秋の敗戦を越えて」【前編】

2017.08.27

 NPBで2000本安打を達成した阿部慎之助(巨人)を輩出し、2013年にはセンバツ甲子園にも出場した安田学園。今夏は東東京大会の4回戦で敗退となったが、主力として活躍した3年生に昨秋からの1年間を振り返ってもらった。

<メンバー>
牧野 陽太:主将、左翼手
小山 亮裕:副主将、捕手
渡部 賢也:副主将、中堅手
篠塚 勇汰:投手
森 航洋:投手
中川 航太:投手

ショックが大きかった秋の敗戦

3年生座談会 安田学園高等学校(東東京)「ショックが大きかった秋の敗戦を越えて」【前編】 | 高校野球ドットコム

牧野 陽太(安田学園)

――昨夏の新チーム結成時のことを教えてください

牧野:センバツに出場した2013年のチームと比べて、篠塚、森(航)、中川と投手陣が揃っていましたし、打撃は渡部を中心に足を絡めた攻撃もできたので、森泉 弘監督からは「今年の代は強い」と期待されていました。実際、8月の練習試合では強豪と対戦することが多かったのですが良い勝負ができていたと思います。

篠塚:明治大学との練習試合に先発させてもらったのですが、初回に失点した後は5回まで粘って投げることができました。最初は大学生が相手ということもあって外角一辺倒の投球だったのですが、途中からチェンジアップで緩急をつけたり、インコースを使って詰まらせたりして好投できたので自信が付きました。

小山:その頃は、みんな「やってやるぞ」という気持ちになっていて意識が高かったですね。守備は多少、ミスがありましたが安定していました。

渡部:攻撃も、打線につながりがあったと思います。

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小山 亮裕(安田学園)

――新チームは素晴らしいスタートを切ったようですが、秋季大会の戦いぶりはいかがだったのでしょうか?

牧野:一次予選はもっと余裕を持って戦えると考えていたのですが、なかなか得点を挙げることができなくて、ピッチャーの篠塚に助けてもらったという感じでした。

渡部:打線がつながらなかったのは、最初の公式戦ということで緊張してしまい、普段通りのスイングができなかったからだと思います。

――そして、本大会では1回戦で都立文京に7回コールド負け

小山:初回、先頭の牧野が出塁したんですが、2者連続でバントを失敗。

牧野:守備では遊撃手の選手がケガをしてしまってコンバートをしたばかりで連携がまだ取れていませんでしたし、バント処理でもミスが出てしまいました。安田学園はピッチャーを中心にした守りから流れを作っていくチームなので、やってはいけないことをやってしまいましたね。そうやってミス絡みで与えてしまった失点で点差を付けられて負けてしまい、正直、ショックは大きかったです。

[page_break:オフの厳しいトレーニングで個々の成長を実感]

オフの厳しいトレーニングで個々の成長を実感

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渡部 賢也(安田学園)

――秋季大会が終わってからは、どのような練習をしたのでしょうか?

篠塚:まずはバント処理の練習を徹底的にやって、どのポジションの選手がどのエリアまでボールを処理するのかをはっきりさせました。

小山:秋季大会は自分が一塁に暴投してしまったところからミスが重なってしまったので、普段の練習から気を引き締めて送球をするように心掛けました。やっぱり大会になれば気持ちが大事になることが分かったので、とにかく一生懸命でしたね。

渡部:攻撃面ではバント練習をやりましたし、つなぐ意識を高めるために逆方向へゴロを打つ練習にも取り組んでいました。

――冬のオフシーズンは、どうやって過ごしたのでしょうか?

牧野:「スイングの量を増やす」というテーマを掲げてティーバッティングやロングティーをすることが多かったです。そして、10分スイングと言って、3秒に1回のペースで10分間、バットを振り続ける練習をしました。連続で振ることになるので体力的にきつい練習でしたが、1日のスイングの総数が1000回を越えることもありました。

渡部:この練習のおかげでスイングスピードが速くなって、打球が飛ぶようになったと思います。

牧野:実戦でも、春になってからのオープン戦では、夏のスタメンだった選手はみんなホームランを打ちましたし、詰まった打球が内野の頭を越えたり、引っ掛けた打球が野手の間を抜けたりするようになりました。

篠塚:投手陣はランメニューが中心でしたね。

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篠塚 勇汰(安田学園)

森(航):コーチがメニューを作ってくれて、50mくらいの距離にコーンを置いてOKが出るまで往復して走ったり、短い距離をダッシュしたり。もう思い出したくないくらい厳しかったのですが体のキレが良くなり、下半身を使えるようになって球速も上がったので空振りが取れるようになりました。

篠塚:あと、12月末に館山で合宿をしたのですが、そこでも走りましたね。結構、傾斜がある砂山のようなところがあって、走ろうとすると砂が崩れるのでかなり下半身に負担がかかるのですが足の指に力が入る足袋を履いて駆け上がりました。

小山:そのほかにも合宿ではプッシュアップやシットアップといったサーキットトレーニングもやりました。

中川:自分は腰を痛めていて12月にやっと復帰したのですが、まだ体力が戻っておらずリハビリをしながらのトレーニングだったので筋肉痛がひどかったです。

――かなりきつい合宿だったようですが、牧野選手は主将としてどのようにチームを引っ張ったのですか?

牧野:普段から、自分が部員に対して厳しい事を言うためには、自分が誰よりもやらなければならないと思っています。だから、合宿の時も、朝、バスに乗って砂山まで行く15分ほどのわずかな時間もみんな寝ていたくらい疲れていたのですが、自分から率先して練習に取り組むようにしていました。

中川:でも、自分が見た時は牧野も寝てましたけれどね。

一同:(笑)

[page_break:良い刺激を得た強豪校との練習試合]

良い刺激を得た強豪校との練習試合

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森 航洋(安田学園)

――春季大会の戦いを振り返ると、1回戦は中川投手が7回無失点の好投でした

中川:森泉監督から「良いピッチングをしようと思わなくていい。打たれても監督の責任なんだから、いつも通り、オマエらしく投げろ」と言われました。正直なところを言うとケガをする前のようには投げられなかったのですが、昨年からチームメートのみんなが頑張って練習しているところをずっと見てきていたのでバックを信頼して投げることができました。

――しかし、2回戦の明大中野戦は5対6の1点差で惜敗

篠塚:明大中野戦は先発したのですが、実は大会前にヒジをケガしていて、この試合では四球を出してしまうなど思うような投球ができなかったんです。リズムも悪かったので、攻撃面にも悪影響を与えてしまったと思います。

渡部:たしかに取って、取られてという展開だったのですが、追いつけませんでした。

牧野:昨秋にくらべるとバントで走者を送ることはできたのですが、その後のチャンスで1本が出なかったですね。初球から打っていくような積極性も足りなかったと思います。

――明大中野戦は森(航)投手も登板しましたが……

森(航):秋も春もチームに貢献できなかったので、危機感を感じていました。それで、春の大会が終わってからは決め球が欲しかったのでスプリットを実戦で使うようにしました。

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中川 航太(安田学園)

――春季大会以降、チームとしてはどのようなテーマを持って練習していたのでしょうか?

牧野:走塁では二死二塁からワンヒットでホームに返ってくること。打撃ではやはり後ろへつなぐこと。

渡部:個人的に、春までは4番を打っていて「自分がランナーを返さなきゃ」という意識が強かったのですが、夏からは3番になってつなぐバッティングができるようになり、内容を見ても引っ張り専門からセンターを中心に右方向にも打てるようになりました。

牧野:そして、守備では連携プレーの質を上げるためにシートノックやランナーを付けたノックをやりました。

小山:全体練習が終わった後、1時間ほど個人練習をする時間があるのですが、みんなで集まって守備練習をやったり。

篠塚:投手陣はバッティングピッチャーを務めて、打者と対戦する感覚や制球力を磨いていきました。テンポ良く投げることを意識して、1日200球くらい投げていましたね。

――夏の大会に向けて、印象に残っている出来事はありましたか?

牧野:東北(宮城)と練習試合をしたのですが、3番と4番の選手にホームランを2本ずつ打たれて「こういうチームが甲子園に行くんだな」と思いました。試合は大差で負けたのですが、良い刺激をもらえましたね。

篠塚:東北戦では、甘いところに投げたら簡単にホームランを打たれましたが、高さを間違えなければ打ち取れることも分かりました。

中川:自分も木っ端微塵にされるくらい打たれたのですが、ストライクを先行させるだけじゃなく、きわどいところから入ってみるとか、この試合を機に配球を考えるようになりましたね。

森(航):自分は最終回に投げただけで主軸とは対戦しなかったのですが、厳しいコースにしっかり投げることを意識するようになりました。

渡部:あと、東農大三(埼玉)戦は序盤に6点のリードを許したのですが、チームが沈むことなく声を出して逆転勝ちすることができたので収穫となった試合でしたね。

後編では夏の大会の模様を振り返っていきます。

(取材・写真=大平 明

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【僕らの熱い夏2017 特設ページ】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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