Column

週刊せり高校野球【センバツが早稲田実業と日大三を強くした】

2017.05.06

 みなさん、こんにちは!『バトルスタディーズ』×高校野球ドットコム「強い者にはワケがあるキャンペーン」公式レポーターの芹 玲那です。

 秋季大会に続き、再び西東京のライバル対決となった春季東京都大会決勝戦
早稲田実業vs日大三
延長12回、4時間2分にも及ぶ大激闘。歴史的な一戦となりましたね!
試合の興奮が今でも冷めません。

 週刊せり高校野球第三回は、この早稲田実業日大三春季大会での闘いをピックアップしたいと思います!

 この試合を観て、私は改めて感じました。
“強い者にはワケがある”と――。

笑顔の早実、粘る日大三

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早稲田実業ベンチ

 早稲田実業日大三は、昨年秋の新チーム始動以来、私が一番観戦する機会の多かったチームです。

秋季東京都大会
決勝で両校は激突。8対6で早稲田実日大三を破りました。
そろって出場したセンバツでは、日大三初戦履正社と激突し、12対5で一回戦敗退。
早稲田実業初戦明徳義塾を延長戦の末5対4で破るも、二回戦東海大福岡に11対8で敗戦。
そしてこの春季大会、再び決勝まで両校が勝ち上がったのです。

 異例のナイターで行われたこの試合。私はかなり前の席で観ることにしました。
なぜって? 
できるだけ選手の声やベンチの雰囲気を近くで感じたかったからです。そこに「強さのワケ」があるのではないのか? と私は考えているからです。

 以前、「ニコニコ生放送」の選抜高校野球生中継番組へ『バトルスタディーズ』作者のPL学園出身・なきぼくろ先生と一緒にゲスト出演させて頂いたときに、なきぼくろ先生が「ピンチの場面ではなんと声かけ(声出し)をしたらいいか迷うことがある」と仰っていました。
実際、作中では、PL学園をモデルとしたDL学園の“声出し”が何度も取り上げられています。
第6巻55話では、野手陣が声で打者にプレッシャーをかけるシーンがあります。第9巻85話では、ピンチでベンチからマウンド上の先発投手に金川春馬がかなり厳しい言葉をかけて“喝”を入れています。

 全国屈指の強さを誇ったPL学園でもこのような声出しが行われていたのでしょうか?
事実、センバツで決勝に残った大阪桐蔭と履正社の声出しは、素晴らしかったです。(関連記事)

 待つこと30分経った16時半頃、選手たちがグラウンドに登場しました。やや一塁側の方に私は座っていたので、特に早稲田実業の選手の表情がよく見えます。
選手たちは、すでに沢山の観客が入りつつある[stadium]神宮球場[/stadium]の雰囲気に圧倒されることもなく、リラックスした様子です。ときおり笑顔まで見られます!
異例のナイター開催、[stadium]神宮球場[/stadium]という大舞台、優勝のかかった決勝という舞台、ライバル校との再戦……。さまざまなプレッシャーがかかる場であるはずなのに、リラックスできているのはさすがです!
と思いつつも、心のどこかでは、「まだ試合開始まで時間があるからかもしれないな」とも思っていたのですが……。

 さて、18時に始まった試合は壮絶な打撃戦となりました。逆転されてはまた点を取り返す…という精神的にも厳しい闘いです。ですが、両チームとも「ここからだぞ!」決して弱気な態度は見せません。ひとりひとりが声をしっかり出し、チーム一丸となって試合に挑んでいます。

[page_break:両校の“気持ちの強さ”]

両校の“気持ちの強さ”

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本塁打を放った大塚 晃平(日大三)

 特に両校の“気持ちの強さ”を感じたのが9回の攻防です。
9回表10対13と3点を追いかける日大三の攻撃。
重みのある、気迫のこもった声での気合い入れの後に、攻撃が始まります。
この回先頭打者の3番・櫻井 周斗選手のソロホームランを皮切りに、打者一巡の猛攻で一挙7点を上げ、再び逆転!
代打・大塚 晃平選手の2ランHRで17点目をあげた時には、日大三ベンチから「よっしゃあ!」と大きな声が響き、帰ってきた大塚選手と力強くハイタッチ!これまでで一番の大きな喜びに包まれていました。
この粘り、最終回の追い詰められたプレッシャーを跳ね返す日大三の選手たちに自然と大きく拍手している自分がいました!

 一方、17対13と4点差となった9回裏。追い詰められた早稲田実業
そのベンチにはなんと、選手の笑顔がありました!
仲間の好プレーを称えたり、得点の場面での笑顔は多く見かけてきましたし、全力で仲間を称える姿が早実の魅力だと思っていました。
しかし、こういった追い詰められた場面で選手たちの表情に笑みがあるのを私は見たことがなかったんです。
なんと声をかけたのかは分かりませんが、指示の後に和泉監督も円陣へ入り、肩を組んで、今まで以上に大きな声の円陣!
このベンチの雰囲気にスタンドも「このままでは終わらない」と期待する雰囲気が漂いました。
そして、飛び出したのは清宮 幸太郎選手の2打席連続となる第84号同点3ランホームラン! 劇的な展開に2万人の観客の多くが、興奮で席を立ち上がりました!

 試合は延長戦に入りました。すでに時刻は午後9時を過ぎています。
しかし、両チーム、誰一人として勝利を諦めません。だんだんと声がかすれてきながらも「声出していこーぜ!」と最後まで仲間に声をかけ続けています。この試合にかける両チームの想いの強さを感じ、球場でこの試合を見届けられたことを、心から嬉しく思いました!
結局試合は延長12回裏、1番・野田 優人選手の適時打で、秋に続いて再度早稲田実業がサヨナラ勝ちを収めました。

 笑顔の早実、悔しさを滲ませる日大三――。
ですが、試合後の握手の時には、両校とも笑顔を滲ませ、中でも清宮主将と櫻井選手が抱擁を交わし、健闘を称えあう姿には、本当に感動しました!

[page_break:見逃せないこれからの二校]

見逃せないこれからの二校

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健闘をたたえ合う清宮と櫻井

 試合を終えて、私が感じたのは、
「センバツでの経験がチームをさらに強くしたのではないか」
ということです。
センバツで日大三履正社に、早稲田実業東海大福岡に大量得点を許し、粘り切れずに敗れました。聖地・甲子園でプレーした経験、そして敗戦の悔しさはチームにとってとても大きなものだったのだと思います。その悔しさを胸に練習を重ね、チームが同じ意識の下、まとまってきた結果が、重圧をはねのけて決勝まで勝ち上がる強さを生み、両チームで本塁打7本、計35点決勝戦の大激闘に繋がってきたのではないかと思いました。

 そして試合前から気になっていた早稲田実の“笑顔”。結局4時間2分、絶えることはありませんでした。
幾度となく訪れたピンチの場面でも、延長戦に入って、いつ疲労で集中が途切れてもおかしくない状態になっても、変わりませんでした。これまでは、ピンチの時には乱れてしまい、選手たちの表情もこわばってしまう一面を見ることがありました。これも「センバツがチームを強くした」結果なのかもしれません。

 両校とも今月茨城県で行われる春季関東大会への出場が決まり、ここでの再戦の可能性もありますが、春季大会は夏の予選のシード権をかけた闘いでもあり、第一シード・第二シードを獲得した両校が夏にぶつかるとしたらおそらく決勝の舞台になります!

 試合後のインタビューで「夏の大会ではどんな形でも早稲田実業を倒したい」と語った櫻井主将。
チーム全員が早実へのリベンジに燃え、意識の統一された日大三の夏―。
「俺たちは打撃がいいんじゃなくて粘り強いんだ」と仲間に声をかけ、チームを引っ張ってきた清宮主将。
清宮選手を中心に纏まり、個々の意識も高まった早稲田実業の夏――。

 この2校がまた夏に向けてどう強くなっていくのか、見逃せません!!

 ここまでの週刊せり高校野球では、春季東京都大会からレポートしてきましたが、次回は神奈川県大会からお届けします。
それではまた次回お会いしましょう!

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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