ジャイアンツカップ2度制覇!湘南ボーイズの強さの秘密は野球と塾の両立
ジャイアンツカップ優勝が2度、夏の選手権大会でも1度の優勝実績がある湘南ボーイズ。中日ドラゴンズの高橋 周平選手や小笠原 慎之介投手など、これまで4名のプロ野球選手を輩出し、大学や社会人野球でも多くの選手が活躍を見せる。
チームを率いる田代 栄次監督は、東海大学を卒業した直後の1999年に若干22歳で監督に就任。当初はチームの規模も現在ほど大きくなく、一学年の部員数が10人を切る年もあったが、地道に実績を重ね、また学習塾を併設する運営も支持を集め、徐々に部員数は増えていき強豪チームとして認知されるようになった。
現在では一学年で50名を越える部員数を抱えるが、田代監督は「選手全員がしっかりと練習できる環境がある」と言い切る。
野球と塾の両立で規則正しい生活習慣を身につける
湘南ボーイズのウォーミングアップの様子
取材に伺った日は寒川町の倉見グランドで練習を行っており、河川敷側に両翼92m、中堅120mのグランドがあり、さらに新幹線の線路下にも両翼90m、中堅90mのグランドがある。河川敷側ではバッティング練習を、新幹線の線路下側では守備練習を行い、また空いたスペースを活用して自重トレーニングを行うなど、選手たちは申し分ない環境で練習に打ち込むことが出来ている。
「選手みんながグランドを使える環境があるので、なるべく数多くボールに触れることが大事かなと思っています。選手にはよく習うよりも慣れることが大事だと伝えているのですが、最近は答えがわかってから動こうとする選手が多いと感じています。
そうではなく答えが分からない中でも、自分で考えて(感覚を)掴んでいくことが大事だと思っていて、例え時間が掛かっても掴むことが出来れば、絶対自分のものになる。壁にぶつかっても自分で突破していく力がすごく弱いので、そういった力を身につけることが今の選手は大事かなと思っています」
また選手の練習機会の確保に努める一方で、実戦経験ももちろん大事にしている。2006年からは湘南茅ヶ崎ボーイズを立ち上げ、3年生が引退して新チームがスタートする際には2年生は2つのチームに分かれる仕組みを作った。
できるだけ多くの選手が公式戦を経験できるようになったことで、高校野球で体ができてから一気に伸びる選手も多くなったという。
そしてもう一つ、昔から田代監督がこだわっているのが文武両道だ。
成績を上げることで選手の将来の選択肢を広げることももちろんだが、野球と塾を両方やるとなるとほぼ毎日湘南ボーイズの環境に身を置くことになる。学校が終わった後に練習や塾に通う、そのサイクルで生活することで規則正しい生活習慣が身につき、高校に入学した時にも違和感なく環境に入ることができるのだ。
「土日の活動のみのチームと比べると、うちはかなり忙しいと思います。でも学校とチームの活動を両立していくことは、選手が次のステージに向かうにあたってすごく大事なことだと思います」
地元・神奈川の強豪校に進学する板垣選手と小泉選手
キャッチボールの様子
そんな湘南ボーイズの環境の中で、今年も注目の選手が多く育ってきている。高校入学を控えた3年生の選手では、板垣 拓心選手と小泉 卓哉選手が注目だ。
チームでは主に2番や3番打者として活躍した板垣選手は、小学校時代はベイスターズジュニアに選出され、湘南ボーイズでも1年生の秋から試合への出場機会を掴んだ。守備ではセカンドとして堅い守りを見せ、また打撃では鋭いスイングから長打を連発。攻守でチームに貢献してきた。
田代監督は、板垣選手の一番の持ち味を力強いバッティングだと語る。
「すごく馬力のある選手です。ですが、どちらかと言えばすごく不器用なタイプなので、高校野球では速いボールや逃げるボールに対してどこまで対応できるかだと思います。ボールに当てる感覚や、守備でもハンドリングをどれだけ身につけていくかが勝負だと思います」
また小泉選手も、板垣選手と同じく小学校時代はベイスターズジュニアに選出された選手で、湘南ボーイズでは主将で捕手を務めた。打線の中では3番や4番に座り、捕手としても正確なスローイングにブロッキングなど総合力の高いプレーを見る。
攻守で能力の高い小泉選手だが、田代監督は高校野球で通用するためには精神的な強さが課題だと話す。
「バッティングはすごく非凡なものを持っています。ただもう少し自分の気持ちを全面に出していかないと、高校野球での競争に勝つことはできません。うちでは早くから試合に出ていましたが、高校では競争の中で勝てるかどうかだと思います」
高校野球に向けて板垣選手は「私生活からしっかりしないとプレー出てしまうと思うので、私生活をしっかりとしてその上でチームの中心として活躍したいです」と意気込みを語り、また小泉選手も「高校野球では、自分よりレベルの高い選手がいっぱいくると思います。そこで負けないように、体を強くしてレギュラー争いに勝てるようにしたいと思います」と強い思いを語った。
また2年生では、田代監督が「見てきた中で素材としてはナンバー1」と語る藤田 琉生投手が注目だ。すでに身長は188センチに達しており、最速は135キロを記録する。またバント処理や牽制、投内連携なども器用にこなし、大型選手でありながら身のこなしが軽い点も注目すべきポイントで、田代監督もそのポテンシャルの高さに大きな期待を寄せる。
「身長はまだまだ伸びていますし、将来がある投手なのでまずは壊さないように次のステージに上げることが大事かなと思っています。ただ、素材が良いだけで大成しない選手も今までいっぱいいると思うので、そういった考え方の下で努力してもらいたいなと思います」
規則正しい生活の中で、文武両道を目指す湘南ボーイズ。これからどんな選手が誕生するのかとても楽しみだ。
(取材=栗崎 祐太朗 )