高校生No.1遊撃手を輩出した湖北ボーイズ(滋賀)で守備が上手い選手が育つ理由
今年で設立20周年を迎えた湖北ボーイズ。古澤 勝吾(元ソフトバンク)、横川 凱(巨人)、土田 龍空(中日)といったプロ野球選手を輩出するなど、育成力の高いチームとして知られている。取材を進めていくと、優秀な選手が育つ土壌が明らかになってきた。
上下関係のないチーム作り
湖北ボーイズの練習に密着!
練習拠点となっているのが滋賀県長浜市にある[stadium]奥びわスポーツの森[/stadium]の多目的広場。白土ではあるが、十分な広さがあり、保護者の協力の下で綺麗に整備されている。そのためイレギュラーが少なく、守備力が向上しやすい環境であると中村 忠博監督は胸を張る。
「守備に関しては県でナンバーワンという自信を持っております。これからもどんどんいい選手が出てくると確信を持っています」
卒団生の土田は高い守備力が評価されてドラフト指名を勝ち取っている。その背景には名手を生み出すのに最適なグラウンド環境があったのだ。
また、学年や能力を問わず全員で練習を行うのが湖北ボーイズの特徴だ。「後輩は先輩を見習え、先輩は後輩を可愛がれ」というのが湖北ボーイズのチーム方針。後輩が実力のある先輩のプレーを間近で見て学ぶことで選手たちの成長を促している。
土田が湖北ボーイズにいた時も1学年上に守備の上手い遊撃手がいた。その選手がノックを受ける姿を後ろから見ることで遊撃手としてのイロハを学び、超高校級の守備を身に付けた。
上下関係もほとんどなく、先輩と後輩が活発に意見を交わせる環境にあり、選手同士で刺激し合いながら力をつけていくのが湖北ボーイズのやり方だ。指導方針も指導者が一から十まで指導するのではなく、選手の自主性を重んじていると中村監督は話す。
「我々が指示をするのではなく、選手で考えてもらっています。あくまでも選手がノビノビとプレーできる環境を整えることを第一に指導しています。ただ楽しいばかりでは困りますが、選手個々が考えてやってくれていると感じています」
中学時代から自分で考えて練習する習慣を身に付けさせることで、上のカテゴリーでも活躍できる選手を育てている。決して指導者のトップダウンになることはなく、風通しの良い環境でノビノビと選手たちはプレーしている。
その中で湖北ボーイズが抱えているハンディがある。それが冬場の気候だ。滋賀県最北端の市町村である長浜市は降雪量が多く、12月から2月まではグラウンドで練習することが難しい。その期間は体育館で体力強化などに励んでいるが、実戦練習ができないまま2月に大会を戦うこともある。
温暖な地域のチームに比べて不利な環境だと思われがちだが、「室内での練習で体幹等を鍛えて粘り強く体作りに専念できることで、夏場に力を発揮できると感じています」と中村監督は前向きに捉えている。冬場に土台をしっかり作っておくことで、夏場の厳しい暑さの中でもパフォーマンスを落とさず戦えることを強みとしている。
[page_break:「野球の楽しさを十分に感じて欲しい」]「野球の楽しさを十分に感じて欲しい」
湖北ボーイズの練習に密着!
今年は前田 悠伍(3年)という国際大会も経験した中学球界屈指の左投手を擁していたが、コロナ禍で練習や試合が思うようにできなかった。それでも夏以降に行われた大会では好成績を残し、「最高の終わり方ができたと思います」(前田)といい形で3年生を送り出すことができた。
2年生主体の新チームについて中村監督は「非常にまとまっていて、チームワークが良い」と語る。昨年のチームと比べて試合での勝率は高くないが、実力は着実に上がっており、来年に向けて期待が高まる。コロナ禍で3年生が出場できなかった全国大会に出場するのが今後の目標だ。
中心選手として中村監督が期待しているのが主将で遊撃手の横井 汰星(2年)と二塁手の山口 展世(2年)。「二遊間コンビで守備からの野球で湖北ボーイズらしいチームができたらいいなと考えています」と二人を中心に守り勝つ野球を目指している。
土田と同じ遊撃手の横井は「ここで僕らと同じ練習をやって、甲子園で1年生からしっかり活躍してプロになるのはとても尊敬できるので、僕も見習って1年間大切にしようと思いました」と先輩のプロ入りに刺激を受けている。横井も守備に高い意識を持って取り組んでおり、堅い守りからチームに流れをもたらす存在となりそうだ。
もう一人の注目選手が外野手の松居 慶眞(2年)。ベースランニング1周を15秒台で走る俊足の持ち主で、100mの滋賀県1位にも輝いたことがある。今年は中学時代に100mと200mで日本一になった中央大の五十幡亮汰が日本ハムからドラフト2位で指名されたが、彼もそのような選手になるかもしれない。
自主性を促しながら素質ある選手を育て、上のステージで活躍する選手を輩出してきた湖北ボーイズ。今後の人材育成について中村監督は次のように話してくれた。
「野球が好きな選手に来てもらって、野球の楽しさを十分に感じてもらいたいです。野球の中から色んなことを学んでもらって、立派な社会人になってもらいたいですし、自立をしっかりしてもらえる人間になってもらえたらいいなと感じています」
好きな野球を通じて社会に通用する人間を育てることを中村監督は目指している。今後も立派な野球人を多数生み出してくれることを期待したい。
(取材=馬場 遼 )
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