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福岡県の強豪・八幡南ボーイズがウォーミングアップだけで1時間もかける深い理由とは?

2021.01.31

 これまで計8度の全国大会出場実績(2020年第51回夏季全国大会含む)を持つ、福岡県の強豪・八幡南ボーイズ。地元の福岡県を中心に毎年OBも活躍を見せているが、最近では県外でも活躍する選手が目立っている。

 文武両道をモットーとし、学習塾とも提携を結ぶなど選手の学力の向上にも積極的に取り組んでいるが、野球技術向上と人格形成を主に選手たちと日々努力を続けている。そんな八幡南ボーイズの取り組みに迫った。

1時間をかけて行う「怪我しないための基礎体力作り」

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ウォーミングアップの様子

 北九州市に専用球場を持っており、屋内練習場での練習や屋根付きのブルペンなど恵まれた環境の中で練習ができている八幡南ボーイズの選手たち。平日は夕方5時から8時までの約3時間練習に励んでおり、学校を終えた選手たちはグラウンドに集合して全体練習がスタートする。八幡南ボーイズの練習は、まずウォーミングアップに大きな特徴がある。

 始めに選手たちはストレッチと体幹トレーニングを入念に行い、その後ランニング、ダッシュと続いていく。ダッシュまで終わると、今度は1メートルほどの棒を持ってきて肩のストレッチを行い、さらにその後反復横跳びも行うなど、ウォーミングアップだけで何と1時間以上も時間をとる。練習時間が限られている中でウォーミングアップにこれだけ長い時間を割く理由を、チームを率いる徳野 晴美監督は「怪我しないための基礎体力作り」と説明する。

 「怪我の防止がまず一つですが、それ以外にも、今の子どもたちは山や野に入って遊んできていないので、私達の時代と違って基礎体力がありません。そのため体幹トレーニングなども含めて、普段の練習の中で基礎体力を伸ばして行こうと、そういった目的で行っています」

 また打撃練習中も、待ち時間を活用してウォーターバッグトレーニングを行うなど、選手たちは体作りに余念が無い。八幡南ボーイズでは技術よりも体力的な成長を重視しているが、それは徳野監督が常に指導理論を学ぶ中で構築されていったものだ。

 徳野監督は現役時代は福岡県・東筑高で甲子園出場を果たし、その後も専修大、門司鉄道(現JR九州)とアマチュア野球の強豪を渡り歩いた。特に専修大時代は東都大学リーグ1部の外野手部門でベストナインも獲得し、指導者としてもJR九州の監督だけでなく、多くの少年野球チームを指導した。そんな経験豊富な徳野監督でも、野球の理論は日々進歩していると感じており現在でも学ぶべきことはとても多いと話す。

 「私が現役の頃とは野球のやり方が180度変わっています。昔は水を飲むと根性がないと言われたり、ピッチングが終わった後も肩や肘を温めるなど、今と真逆のことをやっていました。野球を教えるにあたって私たちも常に勉強していかないと、嘘は教えられないので一生懸命勉強しています
ここ5、6年は成績も良いので、効果は出ているのかなと感じています」

[page_break:今年は投手陣を中心に力のあるチーム]

今年は投手陣を中心に力のあるチーム

 

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反復横跳びの様子

 そんな徳野監督の指導方針に惹かれて八幡南ボーイズに入団した選手の一人が、2年生で新チームの主将を任された古賀 涼太選手だ。チームでは1番・サードのポジションを任され、好守で存在感を見せる古賀選手だが、入団した理由も中学野球の期間で大きく成長出来る環境だと感じたからだという。

 「体力作りなど練習も厳しいんのですが、設備が整っていて周りのレベルも高いので、自分もここで頑張れば強くなれて、上を目指していけると思ったので入りました」

 今年の八幡南ボーイズは、吉原 渚投手に塚本 空輝投手、安田 創磨投手と実力のある3人の投手がおり、10月31日から2日間行われた日本少年野球九州大会では投手陣を中心にベスト4進出を果たした。古賀主将は課題を克服してさらにチーム力を上げていき、春、夏の全国大会に向けての強い意気込みを語った。

 「今年のチームはピッチャーが安定していて、バッティングもしっかり打てる選手がいます。打てるチームと思っていますが、まだ相手投手によって打てたり打てなかったりするので、そこをしっかりと練習して打てる確率を上げていきたいと思います」

 また投手陣の一角である右腕の塚本 空輝投手にもお話を伺った。
 小学校時代には福岡ソフトバンクホークスジュニアに選出され、120キロ越えも記録するなど活躍を見せた塚本投手。八幡南ボーイズ入団後も順調にステップアップして、現在は130キロ近くまで球速はアップし、体格も173センチ・70キロと成長している。

 塚本投手も、最終学年に向けてさらに実力を伸ばしていきたいと意気込みを語った。
 「将来的は山本 由伸投手のように、ストレートで押すことができて三振をたくさん取れるピッチャーになりたいです。自分の持ち味をしっかりと活かせるように、試合でも思い切り自分のピッチングができるように頑張ります」

 この秋は高校野球の新チームの主将に5名のOBが選出され、また関東では佼成学園の1年生・重藤 琳太郎選手が4番打者として活躍を見せるなど、卒業生の活躍も選手たちの大きな刺激になってる。文武両道、そして基礎体力の向上を何よりも大切にする八幡南ボーイズ。これからどんな選手が頭角を現すのかとても楽しみだ。

(取材=栗崎 祐太朗

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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