テニスボールやラケットを使用。軟式野球の強豪・門真ビッグドリームスが他には無いひと味違った練習に取り組む理由
近年、軟式野球に大きな注目が集まっている。
2018年に高知中だった森木 大智が中学最速となる150キロを記録し、また今年のプロ野球開幕投手は12人中11人が軟式出身であるなど、将来性に期待が持てるデータもあるためだ。
関西地区の軟式野球で大きな存在感を見せているのが、大阪府門真市で活動する門真ビッグドリームスだ。
2004年2月に設立され、これまで5度の全国大会出場の実績を持つ。現在は計64名の部員で活動しており、昨年は上加世田 頼希投手、渡辺 優斗選手(共に敦賀気比)の2名がU-15日本代表に選出された。
そんな門真ビッグドリームスの練習は、普段から選手の成長を第一に考えたものであった。
少年野球の距離でノックを行う理由
ノックバットを握る橋口和博監督
京阪本線の古川橋駅から徒歩5分、門真ビッグドリームスは旧門真第六中学校グランドで練習を行っている。
チームを率いる橋口和博監督は、まだ体が出来上がっていない選手たちを指導するにあたり、独自の指導方法でこれまで選手たちを育ててきた。
その指導法はキャッチボールの前からいきなり始まる。
選手たちは野球ボールではなくテニスボールを手に取ると、始めたのは何とお手玉。
その後も、二人一組でテニスボールを投げあったり、テニスボールを積み上げる練習など、一見野球とは関係のないような練習が続いていく。
この練習の意図を、山下 天虎主将は「ハンドリングと集中力を鍛えるためにやっています」と説明し、集中力を高めるために試合前にも行っていることを明かす。
そして、いざキャッチボールが始まっても、ただ普通のキャッチボールを行う訳ではない。
実際の守備の動きを想定した実践的なキャッチボールを行う。
バックステップを入れたスローやタッチプレーに特化したキャッチボール、また握り替えや中継プレーを意識したキャッチボールなど、その種類は10種類以上。
あくまで試合を想定した練習を行っているのだ。
そして門真ビッグドリームスの練習の中で最も特徴的なのが、ノックでは少年野球の距離でシートノックを行っていることだ。
一見、肩力を鍛える機会を無くしているようにも思えるが、もちろんここにも理由がある。
橋口監督は、怪我の防止とた正しい送球フォーム固めの二つを目的に挙げ、少年野球の距離を取り入れることの有効性を語る。
「故障者も少ないですし、投げ方も正しい形を作って、そこに力がついていけばという考え方です。
特に1年生は入ってきてすぐに中学の距離になると、強いボールを投げたいばかりにフォームが無理な形になっていきます。中学2年生の夏から秋にかけて、通常の距離で投げさせるとしっかり投げれるようになるなと感じています」
中学生は体の成長を待ってあげることが大事
期待の左腕・麻田悠介(門真ビッグドリームス)
橋口監督がここまで基礎固めの練習にこだわるのは、中学生の体の成長には個人差があることが理由の一つにある。
中学時代に活躍を見せる選手の多くは体の成長が早いケースが多く、またほとんどの選手は体が出来上がっていない。
その中で橋口監督が意識していることは、とにかく体に負担をかけずに体が出来たときに思い切り野球ができる土台を作ることだ。
「親御様にもいつも言ってるんですよ、待ってあげてくださいと。
もちろんこの時期に結果を出してくれたら嬉しいですけれど、4月生まれと3月生まれでは大きな差があるように、成長の違いは必ずあります。今は技術がない選手でも、成長期は絶対あるので無理はさせません」
そんな門真ビッグドリームスの新チームは、投手陣を中心に高い総合力を持っており9月に行われた第12回全日本少年春季軟式野球大会大阪府予選会では、3年連続8回目の優勝を飾り、3年連続5回目の春の全国大会出場を決めた。
中心となるのは、前チームから経験のある左腕の麻田悠介投手だ。
「投手をやるなら軟式でもいいんちゃうか」という小学校時代の監督の助言により、門真ビッグドリームスに興味を持ったという麻田投手。
楽しくて元気のある雰囲気に惹かれて入団を決めて、1年秋から2年春にかけて大きく成長してきた選手だ。
持ち味は直球と変化球にキレがあるところと語り、現在はコントロールと変化球の精度を高めることを目標に練習に取り組んでいいるという。
中学野球の残りの期間でも大きく成長して、将来はプロ野球選手になりたいと意気込みを語る。
「まずは高校で活躍できるような選手になって、甲子園に出場したいです。そこからプロ野球選手になって、有名な選手になりたいと思います」
OBの上加世田投手は、秋季北信越大会で存在感を見せており、麻田投手をはじめ現役選手たちの大きな刺激になっているという。
大阪の軟式野球の強豪・門真ビッグドリームスから、これからどんな選手が誕生するのかとても楽しみだ。
(記事=栗崎祐太朗)
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