目次

[1]全ての選手に誠意を持って接する
[2]大会ではドラマチックな演出にこだわる


 昨年8月に行われたジャイアンツカップ2019で、2度目の優勝を飾った世田谷西シニア。
 部員数は毎年3学年で180名にも達し、OBにも木下 幹也投手(横浜3年)や廣澤 優投手(日大三-JFE東日本)、内海 貴斗選手(横浜-法政大)など活躍を見せる選手は多く、プロ野球にも山本泰寛選手(巨人)がいる。

 エリート集団のイメージが強い同チームだが、吉田昌弘監督は決してエリートが揃うチームではないと強調する。その言葉の裏にはどんな指導理念があるのか。

全ての選手に誠意を持って接する


 部員数は1学年で約60名、3学年を合わせると約180名にも達し、全国でもトップクラスの選手を抱えるが、吉田監督は「面倒を見きれなかったら、これだけ選手を受け入れません」と強く口にする。

 どの選手にも平等に練習時間が確保され、また同じ日に3カ所で練習試合を組むなど物理的な工夫ももちろんあるが、それだけではなく選手のレベルに合わせたメニューやコミュニケーションなど、一人一人と真剣に向き合うことに何よりも気を使っている。

 「自信を持って言えるのは、一番上手な選手でも学年で60番目の選手であっても、野球をやっていることにリスペクトしてあげて、誠意をもって接していることです。
 全員にしっかり野球をやらせてあげて、そのためにできる範囲でスタッフも協力して、進学もしっかりサポートできると思うのでこの人数でやっています」

 吉田監督は、よく選手たちに「同じ学年の60名いる部員の中で、自分は立ち位置は何番目だと思う」と質問を投げかける。
 ポジションや特徴の違いはあれど、選手たちは自分なりに立ち位置を考えて答えるが、その解答のほとんどが指導者の考えと一致しているという。

 指導者、大人が思っている以上に選手は自分の立ち位置を理解しており、そして目指す目標も選手それぞれ。
 その中で吉田監督は、「野球が上手になるサポートを、一生懸命していることが選手に伝わる練習」をすることが大事と考えている。

 「学年全員が同じ練習をすることもあれば、違う練習をすることもあります。
 親御様に対しても、『このチームは自分の子どもが試合に出ていなくても、野球に一生懸命参加させてくれる』ということが伝わればと思ってやっています」

 その結果、毎年180名程いる部員の中でチームを途中で辞める選手はほぼおらず、選手が引退した後も「チームのサポートに加わりたい」と志願する親も多くいる。
 そして驚くべきことに、そのほとんどがレギュラーとして試合に出場できなかった選手の親だそうだ。

 目的はあくまで底辺の拡大。
 野球が好きなままチームを卒業して欲しいという思いが、吉田監督の指導の根底にある。