元プロ野球選手が指揮する湖東リトルシニア(滋賀)。チーム発足わずか8年で全国大会に出場できたワケ【前編】
チーム設立が2012年と歴史は浅いが、これまでに5人の海外派遣選手を送り出すなど、確かな育成力を誇っている湖東リトルシニア。昨年もエースの南琉人がMCYSA全米選手権の日本代表に選出されている。
現チームも中学生硬式野球・関西No.1を決める第15回タイガースカップに出場。新型コロナウイルスの影響で8月に延期となったJA共済杯第26回日本リトルシニア全国選抜野球大会の出場権も獲得している。
着実に成果を出している湖東リトルシニアはどのようなチームなのだろうか。
元プロ監督が最初に苦労したのは設備の確保
湖東シニアの練習風景
チームを立ち上げたのは村西哲幸監督。高校時代は比叡山のエースとして3年時に春夏連続甲子園に出場している。卒業後はドラフト3位で横浜ベイスターズに入団し、7年間のプロ人生を歩んだ。
引退後は彦根市で野球塾の「彦根ベースボールアカデミー」を開校したが、「野球だけでなく、社会に出て行くまでの教育を含めた野球チームを立ち上げよう」と現在はコーチ兼統括部長の窪田辰徳とともにクラブチームの立ち上げを決意。2011年1月に立ち上げ準備を始め、翌年4月にチームが始動した。
最初に苦労したのはグラウンドの確保だった。
「どうしても硬式野球となると、場所を確保するのが大変なので、最初の2年間は色んな場所を借りて限られた中での練習でした」と村西監督は当時を振り返る。それでも2012年12月に東近江市に本社を置く株式会社関西オークラのグラウンドを練習場として使えるようになり、現在は恵まれた環境で練習を行うことができる。
1期生の卒団生はわずか4人だったが、2期生以降は10人前後の選手が集まるようになり、現在は新3年生が12人、新2年生が8人所属している。
[page_break:高校でどのポジションでも守れるように全員が二遊間の守備練習をする]高校でどのポジションでも守れるように全員が二遊間の守備練習をする
内野守備練習の様子
村西監督が指導の根本に心がけているのが人間教育だ。その理由は自身の現役時代への反省も含まれているという。
「野球だけをしていれば良いとなるのはやめてほしいというのが一番にあります。勉強も大事ですし、私生活の面でも幅広い視野を持った選手になってほしいですね。ワンプレーに対してなぜこの練習が必要なのかという意図を私は考えて野球をしておけば良かったなというのがありますし、周りの方々の協力があって野球ができているんだというのを感じてほしい。僕が若い時にそこまで考えていなかったものですから。
今になってその時に協力して頂いた方には申し訳ない気持ちがあるので、今の選手たちには周りに助けられて今の自分があるというのを感じてほしいと思います」
練習に関しては投手出身の村西監督が主に投手を担当。野手に対しては「僕がピッチャーだったら君みたいなバッターはこう思う」、「ここをこうすればピッチャーが嫌なんじゃないか」といったように投手目線で声をかけることはあるが、主な指導はコーチ陣に任せている。指導陣で役割を分担し、責任を持って指導するのが湖東リトルシニアのやり方だ。
練習を見ていて印象的だったのが、キャッチボールとトスバッティングを終えた後に全員が二遊間の守備位置につき、併殺の練習を行っていたことだ。
村西監督にその理由を聞くと、「どこでも守れるようにするため」とのことだった。中学野球は高校野球に向けてのステップである。高校生になれば、今とは違う任されるポジションが変わる可能性もあるため、プレーの幅を広げるために行っているのだ。これは毎回の練習で行っているそうで、外野手や左投げの選手もスムーズに併殺を完成させていた。
今回はここまで。次回は今年の湖東シニアの特徴に迫っていきます。次回もお楽しみに!
(記事=馬場 遼)
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