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子供たちの自主性を育て全国大会出場へ 大津瀬田ボーイズ(滋賀)

2020.02.20

 滋賀県を代表する中学硬式野球クラブチームとして名高い大津瀬田ボーイズ。OBには中日ドラゴンズで活躍中の小熊凌祐がおり、2007年には後に北大津で甲子園に出場した小谷太郎大野晋平らを擁して日本少年野球春季大会で滋賀県支部初となる優勝を果たした。確かな実績を積み重ねている強豪ボーイズはどんな取り組みをしているのだろうか。

自由にノビノビがモットー

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大津瀬田ボーイズの集合写真

 練習拠点となる大津市の「から池グラウンド」は内野が黒土で両翼90mの広さがある。中学生のチームが使うグラウンドとしてはかなり恵まれている部類だろう。グラウンドの確保に悩むチームがある中で、土日祝日にこのグラウンドを自由に使えるのは大きなアドバンテージだ。実際に練習環境の良さが入団の決め手になった選手もいるという。

 チームを率いるのは昨年4月に就任した山尾茂監督。大津瀬田ボーイズで指導を始めた年に入団してきたのが小熊だった。当時から秀でた才能の持ち主だったそうで、「球のキレが凄かったですね。本当に10年に一人の逸材かなと思いました」と振り返る。チームの指導方針についてはこう語ってくれた。

 「自由にノビノビと野球をするのがモットーです。そこに礼儀を教えたり、基礎的な中学生としての野球の指導を理念に置いています」

 中学生で軟式から硬式に移る選手は多く、マウンドからホームの距離も16m(リトルリーグは14.02m)から18.44mと遠くなる。大きく野球が変わる中で山尾監督は体作りの重要性を説く。
 「まず距離やボールなどスケールが大きくなるので、そこに対しての体力作りを念頭に置いています。体の大きい、小さいはバラバラですが、走り込みをしたり、柔軟性を上げたり、体作りをメインに考えています。それは個々の段階に応じた指導をすることをモットーにしています」

 そして練習の方針としては打撃練習が中心だ。1986年のチーム発足当時から打撃重視のカラーを掲げており、現在も継続している。取材日も午前にフリー打撃、午後からシート打撃にノックと多くの時間を打撃練習に割いていた。

 土日祝日に充実した練習ができるとはいえ、平日は全体練習がないため、自主練習をすることが求められる。だからこそ、選手たちには自主性を育む指導を行っているという。

 「こちらが何度もしつこく言うのでなく、一回言ったことに対して子どもたちが自主的に動けるような指導方法をしています。難しいですが、子どもの自主性を第一に考えて指導しています」

[page_break:スター選手不在でも勝つことで自信をつけさせたい]

スター選手不在でも勝つことで自信をつけさせたい

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実戦練習の様子

 昨年は山田陽翔というスター選手がいて投打でチームを引っ張っていたが、今年のチームには絶対的な選手は不在。「去年に比べると山田のような引っ張る選手がいないので、比較的やや見劣りするかなと。個々の能力はそれほど高くはないですが、低くもないので、そこをどう伸ばしてやるかということで今は取り組んでいますね」と山尾監督は春以降に向けて模索を続けている。

 そんな中で指揮官が期待を寄せているのが投手の下坊大地と捕手の若林徹太。山尾監督は「このバッテリーが引っ張ってくれたら去年と同じくらいの成績が残せる」とキーマンに指名した。

 下坊は投打の中心選手。「バッターとピッチャー両方で勝負したい」と本人が話すように二刀流での活躍を目指している。好調時には手を付けられない投球を見せる一方で、「大人し目でピッチャーとしては前向きでないところがある」と山尾監督はメンタル面の弱さを指摘する。取材日の練習後に次の大会の背番号が配られたが、下坊の背番号は7番だった。ここから奮起してエースナンバーを勝ち取りたい。

 若林は野球をよく知っていて、周囲への気配りが出る捕手。肩も強く、投手からの信頼は厚い。打撃では最近、映像で見たという前田智徳氏を手本にしているという。シート打撃では本塁打を放つ場面も見られ、今後の活躍に期待を抱かせた。山尾監督は「キャッチャーとしてのチームをまとめる力が弱い」と課題を挙げており、今後はグラウンド上の監督としてのリーダーシップを発揮していきたいところだ。

 チームの目標は全国大会出場だ。大きな大会に出て勝つことが選手の成長につながると山尾監督は話す。
 「子どもたちは大きな大会で優勝したりすると、それが自信となって、そこからさらにレベルアップします。そういうことを覚えさせてあげるのも我々の役目だと思うので、全国大会や地方大会の優勝を獲るのが目標ですね」

 小熊は3年生の時に日本少年野球選手権大会でベスト8進出、2007年に全国制覇した代の選手は数名が甲子園で出場するなど、大津瀬田ボーイズ時代に全国の舞台を踏んだ選手が上のステージで活躍することは多い。

 若い年代で勝利にこだわることに批判的な意見が出ることもあるが、勝って自信をつけることは選手の成長につながるということを大津瀬田ボーイズは証明している。現在、在籍している選手の成長を願って指導者たちは全国を狙えるチーム作りを行っている。

 全国大会出場に向けて主将の中川慶信は「ホームランではなく、後ろに繋いでいく野球をしたい」と話す。山田のような突出した選手はいないが、全員野球で激戦の関西地区を勝ち抜くつもりだ。

(記事=馬場 遼

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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