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『高校で楽しめ』中学野球は通過点にすぎない 西京ビックスターズ(京都)【後編】

2019.06.10

 今年の文部科学大臣杯第10回記念全日本少年春季軟式野球大会を制した西京ビッグスターズ。これまでに5回の全国制覇を誇る名門軟式クラブチームで卒団生には駒月仁人(西武)や昨年に龍谷大平安のエースとして活躍した小寺智也(近畿大)などがいる。
 後編では、現在のチームの状況やOBの活躍についても触れていきたい。

◆勝利と育成の両立を可能にした「状況に応じた野球」の追求 西京ビックスターズ(京都)【前編】

7年ぶり2度目の優勝の立役者

『高校で楽しめ』中学野球は通過点にすぎない 西京ビックスターズ(京都)【後編】 | 高校野球ドットコム
西京ビッグスターズの集合写真

 また、西京ビッグスターズの卒団生は半数以上が大学でも野球を続けているそうだ。卒団生の佛教大・吉村颯と京都産業大・西川寛崇(ともに龍谷大平安出身)はそれぞれ主将を務めている。

 「彼らも年末年始は練習に来てくれるんですよ。先輩が高校、大学で頑張っているから現役の子も恩恵を受けて高校で良い評価をしてもらえるんです」

 高校、大学で活躍する先輩たちは現役の選手たちの励みとなる存在だ。先輩のようになりたいと努力することで高校から評価され、先輩のように高校以降で活躍するという好循環がこのチームには生まれている。

 今年のチームに目を通してみよう。全日本少年春季軟式野球大会では7年ぶり2度目の優勝を成し遂げた。宮本監督に優勝の要因を聞いてみたが、以外にも答えを探すのに苦労している様子だった。

 「何なんですかね。本当にわからないです。僕も毎年そういうことを言っているんですけどね。手応えがあってヨシということは一回もないです。チームワークですかね。大人しいところもあるんですけど…」

7年ぶり2度目の優勝の立役者

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優勝の立役者となったエースの中西孔太朗(西京ビッグスターズ)

 そんな中で宮本監督が優勝の立役者に挙げたのが6試合中4試合に登板したエースの中西孔太朗(3年)。「よく投げてくれました。勝てたのはコイツのおかげですね」と指揮官も絶賛の活躍だった。

 中西の武器は最速126㎞のストレート。「全国大会に出たかった」と高い志を持って西京ビッグスターズに入団してきた。念願の全国の舞台は「凄く緊張したけど、思う存分プレーできたと思います。優勝した時は凄く嬉しかったです」と振り返ってくれた。

 目標にしているのは杉内俊哉(巨人ファーム投手コーチ)で「コントロールが良いピッチャーになりたい」と日々の練習に取り組んでいる。現在は「伸びる球が投げてみたい」と吉田輝星(日本ハム)の投球フォームを参考にしているそうだ。

[page_break:春夏連覇は叶わぬも、今度は高校野球での活躍を目指す]

春夏連覇は叶わぬも、今度は高校野球での活躍を目指す

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西京ビッグスターズの打撃練習の様子

 近年では野球人口の減少が話題になることが多いが、その影響は西京ビッグスターズにも及んでいる。これまでは1学年20名近くが入部したが、現在は3年生が12名で2年生が10名。そして1年生はわずか6名と少数だ。

 創成期からチームを指導している宮本監督も「10名を切ったのは初めて」と頭を悩ませているが、その背景には強豪チームならではの理由があった。

 「全国で5回優勝しているからなのかもしれないけど、勝手に敷居を高く感じられてしまっているんです。基本的な野球が好きな子であれば、上手だろうが下手だろうがみんな受け入れるんですけど、『行っても相手にされない』と勝手に思っていると聞くんです。全然そうじゃないんですけどね」

 選手たちの体つきを見ても背丈のある選手は数人いるが、恵まれた体格の集団という印象はお世辞にも感じられなかった。入部した時は普通の中学球児でも宮本監督の指導の下で野球の神髄を教わり、毎日のように努力することで全国大会で活躍できるようになっていくのだ。

 「みんな普通の子で普通に下手なんですけど、努力して徐々に上手くなって、3年生になったらそれなりの選手になるんです」

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西京ビッグスターズの練習の様子

 全日本少年軟式野球京都府大会の準決勝で敗れたため、残念ながら春夏連覇は叶わなかったが、彼らの栄光は色あせることはない。彼らは高校で活躍するために気持ちを切り替えて練習に取り組んでいる。

 「挨拶や礼儀など学んだことを高校で活かして、プレーでも人としても成長できるように頑張りたいです。1年生からレギュラーを取って活躍できる選手になりたいです」

 こう話したのは4番打者として打線を牽引してきた小西逸誠(3年)。中学野球は高校野球に向けての通過点にすぎない。全国制覇した時の気持ちを「今までで一番嬉しかったです」と振り返った小西だが、高校ではそれ以上の良い思いができるようにするつもりだ。宮本監督も教え子には高校で野球を楽しんでもらうことを投げって指導している。

 「選手たちにはいつも『高校で楽しめ』と言っているんです。高校に繋がるしっかりした野球を習得して、野球ができることに感謝して、努力して、高校で楽しんでほしいと思います」

 公式戦で結果を残しながらも上のステージで活躍できる選手を次々と送り出している西京ビッグスターズ。全国制覇の偉業を達成した彼らが高校でどんな活躍を見せてくれるのか楽しみだ。

(取材・馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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